ここはやたらと小綺麗な一室。
明らかに二十畳以上はあろうかという広々としたそこは、本日もハイテンションだった。
すぱーんっ。
勢いよく開け放たれた襖。
「グッモーニン、磨呂ども!」
「グッモーニン、ミス・こまち!」
ハーイ、皆、元気?
あたし、ミス・こまち!
うっかりうかうか平安京とかいうふざけたところに来ちゃったみたいだから、うっかり数学者になってみたんだゼ★
ヘイ、YO!
(いろいろ間違い)
そんな訳で、あたしの数学塾、大好評!
バカな磨呂どものおかげでか、がっぽり儲かってたりする。
ほんっと、こいつらってバカでー。
(酷い)
紫の屋敷内に(無理矢理)作らせた小さな(決して小さくはない)塾は、毎日毎日、満員御礼。
ちなみに、着物はどうも暑苦しくて仕方なかったので、呉服屋に鼻フック決めてワンピースを作らせてやった。
それを誰が見てたんだか、今ちょっとしたワンピースブームが、平安京では巻き起こってたりする。
まあ、それはそれ。
流石あたしってことで。
「じゃ、今日はー宇宙について教えてやっから!耳の穴かっぽじって、よーく聞くんだゼ★」
「オーケー、トニー!」
バカみたいに、あたしが教えた通りに返事する磨呂ども。
マジ、バッカでー。
「ハイ、師匠!」
「ハイ、ミッチェル。どうした。」
なんちゃらのなんちゃら磨呂とか、皆、名前が長ったらしいこの世界。
だから、あたしが適当に付けてやった訳で。
もちろん、逆らう奴には鼻フック決めて泣かしてやったけど。
(かなりな暴挙)
弱いな、平安貴族ご子息一行。
手を挙げたミッチェルを指すと、ハイッと元気よく立ち上がる平安貴族ご子息のミッチェル。
「うちゅうがわかりません、師匠!」
そうきたか。
あたしにだってよくわかんないっつの。
「宇宙ってのはー漢字でこう!『宇宙』!この世界は丸いの、丸、円!いーい?世界の果てまで行ったら落ちるとか、バカが言うことよ!」
ちゃちゃっと半紙に書いた地球(只、丸を書いただけ)を皆に見えるように、高々と掲げる。
おおー…と上がった歓声に、思わず笑いそうだけど。
「でー、うちらのいる世界は『地球』っつー星!星=惑星!惑星は『宇宙』にあるんだ!」
半紙に筆で、ざざっと書き足していけば、びちゃびちゃと墨が飛び散った。
あーあー。
ま、いっか。
後で紫に掃除させよう。
(やっぱり酷い)
半紙を回してやれば、興味津々な磨呂どもがそれに群がる。
そして。
「今日の格言!『水金地火木土天海冥』!」
「『すいきんちかもくどってんかいめい』!(磨呂リピート)」
「おっし!今日はおしまい!シーユー磨呂ども!」
「シーユーアゲーン、ミス・こまち!」
すぱーんっと襖を開ければ、そこには、紫が泣き崩れていた。
「何やってんの、紫。」
「…お願いですから、公殿を集めておかしな講習会はおやめください、こまち殿…!」
またも泣き崩れた紫をほったらかしたまま、あたしは鼻歌混じりに、颯爽とその場を後にした。
やべえ、平安京ちょおおもろいじゃん!
「…あ、紫殿。」
「あ、これはこれは坂田殿のご子息殿で…ひいいいいっ!?顔に、顔に墨が!」
「嫌ですよ、僕はミッチェルです、紫殿。」
「ミッチェル!?ミッチェルって何のことでしょうか!?こまち殿、こまち殿ー!?」
紫の叫びは、あたしには届かなかった。
/続く。
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まともなことを教えているようで、
全く
数学者じゃありません。
内容に
収拾がつかない(笑)
紫だけが
いつも悲惨です(・∀・)