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てん

drrr
静雄×臨也 ラブレスエセパロ




 

苛々するのはこっちだと、何度言ってやろうと思ったか。
けれど言ったところで意味は通じないのだろうことは、容易に分かっていた。
気だるい身体に慣れきっている自分が疎ましい。本来なら知らないはずの痛みと苦しみを享受して納得するほど、自分は人がよくない。
雑踏を歩き回り、人の生活を眺めるのが好きだ。
一人ひとりけして交わらない交差点で、一日だけでも何千人を優に越える人間が生きている。誰一人違うことを考え、望み、あきらめ、どこかに向かうその心が好ましかった。
鎖の痕を隠すために包帯を巻いているが、これではまるで自殺志望者のようだとふと思い至った。けれどさらしたままいても、高校時代補導されたことがあるので鬱陶しい。
あいつも鬱陶しい視線を向けるので、嫌だ。
俺のことなんてなんとも思っていないくせに、自己救済の糧にしようとするところとか。
どこまでも言語戦闘に向いていない弱い精神と不安定な情緒とか。
求めるばかりでけして与えようとしない癖、妙に勘が鋭いところとか。
「結局全部だよね」
自分の考えの総括に、低く笑う。おもしろくともなんともないが、笑顔を作るのは息をするのと同じくらい簡単で、無意識だ。
刻まれた「本当の名前」が熱を持った気がして、肩甲骨をストレッチするように動かす。背中の中央に刻まれたそれは手が届きにくくて、それもまた苛立ちを誘う。
「全部、気に入らない」
それは向こうも同じことだろうけど。
「……早く」
はやく、別れる日が来ればいいのに。
そうすることがきっと、ふたりにとっての最善だろう。
交差点がある大通りから立ち去り、ふらふらと路地を歩き回る。時間帯のせいで死んだように静まった住宅街に出て、あてども無くさまよう。
行き先も帰る場所も、自分には存在しない。けれど自分と静雄の違うところは、希望を捜しているか、捜そうとしていないかだろう。
いまだにしつこくしつこく希望を求めては中途半端にあがいて、絶望を繰り返すその人間らしさに反吐が出る。
「戦闘機のくせに」
人間じゃないくせに、人間みたいな顔をして。
「戦闘機のくせに、戦闘機のくせに、戦闘機のくせに」
一人恨めしそうにつぶやく姿を見る人が居れば、さぞ不気味がったことだろう。
ただ一人池袋という街を歩き回る幽鬼のような足取りを、それでも阻まれるのは不愉快だった。
「折原臨也だな」
飽きもせず自分に襲い掛かるどこぞの機関の下っ端。
問いかける意味など無いくせに、定型でもあるのかと口をゆがめる。
「そうだけど」
「我々と来てもらおう。抵抗するなら、容赦はしない」
容赦。その言葉を、自分はあとどれだけあざ笑えば終わるのだろう。
展開される戦闘領域。戦闘機がいない時を狙うなぞ、なんともこっけいで卑怯で、弱弱しい。それをなんとも思わないように教育されているのか、それとももう忘れてしまったのか。
きれいごとは幸福な人間しか吐けないし、実践しない。
それが当然のように、相手の過去も傷も知らずに押し付けてくる不愉快さは、自分の戦闘機で嫌というほど知っている。
幸福な家庭。優しい家族。良き友。理解ある上司。
持つ者のくせに持たざる者のような顔をする、その貪欲さがおぞましい。
「嫌だよ」
高ぶる相手の空気を見つめながら、笑う。
笑う、笑う、笑う。
戦闘機とは、サクリファイスに使役されて、したがって、それを至高とする存在。本来そのように教育されなければならないし、それに非を唱えるべきものじゃない。
人はそれをなんと呼ぶのか。
主従と呼ぶものも居れば、信頼と呼ぶものも居る。友と呼ぶものも居れば、愛と呼ぶものも居る。
自分にはまだ、分からない。
それを理解しようとしないから、自分たちはいつまで経ってもうまくいくことはない。
「君は、弱そうだ」
この言葉をぶつけたい相手は、他に居るのに。

 

 

知らず

drrr
静雄×臨也
ラブレスエセパロ




目を覚ました臨也が一番に行ったのは、静雄に濡れタオルを投げつけることだった。
静雄ほどの身体能力ならよけることも受け止めることも可能だっただろうに、それは静雄の肩に当たって床に落ちる。もちろんその攻撃は静雄に何のダメージも与えては居ない。
「何でやめた」
臨也はかすれた声の中に憎悪と敵意を含ませていた。主治医としてはとめに入るべきだろうが、ここでとめていったい何になるというのだろう。
すれ違ったままの二人に出来ることなど、当事者である自分にあるはずもなかった。
「何で、俺の言うことを聞かずに戦闘を終了、した」
「……馬鹿か。どう見たって手前はもう動けないま――」
「俺はやれと言った! あそこからでも挽回する術なんていくらでもある! なのにどうして君は、俺の言うことを聞かないんだよ!?」
「ッ、俺は手前の奴隷じゃねぇっ!」
気遣っていたのだ。不器用でも、分かりづらくても。
静雄は例え嫌っているサクリファイスであろうと、臨也が苦しむ姿に耐えられなかった。
もしセルティが拘束されるようなことがあれば、自分だってそうしたかもしれない。苦しい思いをさせるくらいなら、勝利の価値など無い。勝敗の数にやっきになるのは、言語戦闘にのめりこみすぎた子供だけだ。
「人間」として正しいことを、静雄はした。けれど。
「奴隷だよ!」
臨也の叫びに、静雄は息を呑んだ。
驚愕の中には、浮かべてはいけない色が含まれている。
「戦闘機は! サクリファイスの! 奴隷なんだよっ! 支配されるべき存在だ! 君は学校で教科書からいったい何を習ってきたんだよ! 俺がやれと言ったらやればいいだけの、簡単な話だろうっ」
「――手前っ!」
「静雄! だめだ、臨也はまだ回復してないよ」
臨也の言葉に激昂した静雄は、ソファから上半身を起こしただけの臨也の胸倉を思い切り掴みあげる。
伸びきった服から病的に白い腹が覗き、身体に刻まれた拘束の痕を如実に語る。体中を蛇が這い回るようにどこもかしこもあざだらけのその身体は、常人ならば息を呑むように痛々しい。
普段は二人の関係に介入しないとは言え、患者の傷を広げられてもいいなどと医者は思わない。非力な僕には何も出来ないが、せめて怒りをなだめるように必死で言い募る。
「どっちも悪くないんだよ、静雄。君は「人間」として正しいことを、……臨也は「戦闘機」として正しいことを言っている。これは変わらない事実だ。ただ、方向が違うだけ」
「やめてよ新羅。そんなこと、どうせこいつはわかりっこない」
上に持ち上げられて苦しいだろうに、臨也は眉ひとつゆがめず、忌々しそうな顔を浮かべている。どうしてこうも二人とも意地っ張りなのか。
「シズちゃんは結局自分を救いたいだけさ。無力さの証である拘束された俺の姿を見たくない。痛みから救えない自分を考えたくは無い。それを態の良い言い訳で隠してるだけ。痛そう、可哀相だからこれ以上苦しませたくないってね」
「臨也、手前はっ」
「そうやって生きてたって、君は守りたいもの一つ守れないよ。絶対にね」
「静雄!」
臨也の言葉が計れた瞬間、静雄の拳が臨也の頬を殴り飛ばした。
掴まれていた服は破れ、フローリングに放り出される。戦闘の代償として疲弊した身体で受身など取れるはずも無く、骨と床が当たるような硬い音をさせて臨也は転がった。
「静雄、落ち着いてくれよ!」
「……かえるわ」
止めるまもなく静雄はきびすを返す。前髪で隠された目がどんな色を宿しているのか分からないが、声は低く、空ろだ。
「……ほら。君は、いつだってそうして……逃げるだけのくせに」
「臨也!」
はき捨てるようにつぶやかれた言葉に、静雄は振り返らなかった。やがて玄関の扉が開き、しまる音がする。
「……臨也、君、ずっとああして挑発してるのかい?」
「本当のことだよ。全部、本当のことだ」
ごろん、とむくれるように横になった臨也に苦笑しながら、すぐそばまで歩いていって頭をなでてやる。臨也は拒絶しなかった。
「……ごめんね、臨也」
「謝られる理由は無いよ」
顔は見せてくれなかった。それでも怒らない分だけ、信用されている気がした。
「うん、それでもごめんね」
君の運命を捻じ曲げてしまった一因は、僕にだってあるのだから。

名前を

drrr
静雄×臨也
友人との会話で妄想爆発した漫画「LOVELESS」のエセパロ

注意
パロと銘打ってはいますが、設定は一部を拝借し、本家作品様の設定とは異なる設定も多く存在します。(ネコミミなども特にありません)
拝借した設定は
・戦闘機、サクリファイスという一対の存在が言語戦闘を行う(戦闘方法、勝敗条件、戦闘機とサクリファイスの関係性も本家様から拝借しています)
もうひとつお借りした設定がありますが、ネタバレになってしまうので表記は控えさせていただきます。

矛盾や作者の誤解認識など含まれるかと思いますが、以上のことに問題ない、寛大な心と好奇心をお持ちの方はどうぞ。




「俺たちって立場逆にしたほうが絶対いいよねぇ」
臨也はいつも通りフェンスの上に座って足を揺らす、ガキみたいなしぐさをして嘆いている。季節関係なく着込んでいるファーコートから覗く手首に浮かぶ拘束の痕が目に付いて、舌打ちをするわけにもいかず拳を握りこんだ。
「単細胞で筋力馬鹿で語彙の無い戦闘機と、肉体労働不得手で頭脳明晰なサクリファイスって。馬鹿みたい」
臨也はよく嫌な顔で笑う。
いっそ笑わなければいいのにと思うほど、不愉快な笑顔を常に浮かべている。気色悪いという第一印象は、今なお変わらない。それどころか「胸糞悪い最低野郎」という付加がついたぐらいだ。
「うるせぇ」
「ほら、君はいつもそれだ、それだけしか知らないみたいに、その言葉だけを口にする。対話も対立も関係も望んでいないのは、いつだって君のほうだ。そうやって閉じこもってばかりで、他人を踏み入らせないくせに自分は孤独だって顔をする。自分を理解してくれる人はいないって傷ついてる」
「――聞こえなかったのか。うるせぇよ」
掴んだフェンスがぐにゃぐにゃとゆがんでいく。このまま引っこ抜いて、振り回して、屋上から投げ落としてやったっていい。
どうせこいつは命乞いも後悔もしない。俺がそんなこと出来ないと、俺以上に知っている。
「……そういうの、すげぇ気色悪いよ。シズちゃん」
酷薄な瞳は透き通ってなどいない。
きらきら輝く赤い目はレッセイイデンとかいうやつで、陽光に弱いらしい。うすい遮光用のコンタクトレンズをしていると、昔馴染みで臨也の主治医でもある新羅は言っていた。
片手で折れそうな首に巻きついた拘束の証。俺が、弱い証。
先ほどまで行われていた戦闘による後遺症を、こいつはいつだって隠さないし、そのくせ詰らない。
「俺を殴る前にひとつでも語彙を増やしてよ。そうしたら、その被害意識にまみれた罪悪感も少しは減るかもね」
まるで猫のようにフェンスからこちら側で飛び降りた臨也は、いやみったらしい真実をオブラートに包むことなく吐きつけて屋上から消えていった。静かな空間に、鉄扉の向こうで階段を下りる小さな足音が聞こえ、やがて消える。
一人になれば浮かんでくるのは、やはり不快な怒りと真実でしかない罪悪感だった。
なぜこうもうまくいかないのだろうと、いったい何度考えた。
「本当の名前」を知ってから俺にも愛し守る相手がいるのだと希望持っていた。けれど同時に大きな不安があった。
言語を操るなど、どう考えたって得意ではない。何度俺がサクリファイスであればいいかと悔やんだことか。
それでも守るべき唯一絶対の相手がいることに安堵し、相手を待ちわびた。異常な筋力のせいで孤立し、傷つく世界のたった一筋の光だった。
だというのに高校にあがってようやく新羅に紹介されたのが、折原臨也との最悪な出会いだった。
顔を合わせた瞬間、生理的な嫌悪感が湧き上がった。わざとらしい笑みを浮かべ、手を差し出す臨也を振り払ったのは俺のほうだ。
驚いたように俺を見上げる臨也にお前は何だと問いかけた。
馬が合わないとか、犬猿の仲だとかそういう問題を超えていた。出会った瞬間から相容れない存在で、それは俺が待ち望んでいた希望とは正反対に位置するものだ。
驚いた顔は数秒だけで、臨也は繕うことの無い口角だけをあげる嫌な笑みを浮かべる。
『君の、サクリファイス、だよ』
絶望をたたきつけたその日から、俺と臨也は組まされた。




煙草は精神安定剤としての割合が大きい。吸うというよりふかしているといったほうが正しいが、こういう時間が精神を安定させるのに重要なのだ。特に俺のように感情の起伏が激しいやつは。
あのころの俺は若かった。
言語戦闘など学生の訓練カリキュラム内だけで、どうせ関係機関に就職でもしなければ使う意味が無いものだと思い込んでいた。
当然平穏を選ぶ俺は全く関係の無い一般企業に勤めているし、臨也は……よくわからない。それでも時間を問わず戦闘が始まればそこに来るのだから、どこぞに就職しているとは思えなかった。
俺の怪力にか、臨也にか、それとも俺たち両方にか。
矢霧とか言う言語戦闘関係機関の一社が、どうしても俺たちを手に入れたいらしい。最初は穏便に、そして現在は強引に。
向こうに所属している相手との戦闘もそろそろ数え切れない数になってきたし、おそらく本拠地をたたかなければまだ続くのだろう。ずるがしこい臨也ならすぐに提案しそうなものだったが、意外にも新羅がとめてくるのだ。実際臨也をかくまっているのも新羅らしいし、あの二人の関係性は今もよくわからない。
「めんどくせぇなぁ……」
俺の希望はもはやない。たった一人守りたいと思っていた相手は、会ってみればそんな妄想を打ち砕くほどに最低な男だった。
新羅とセルティがうらやましい。人としても名前で繋がれた関係としても、相思相愛思い思われ信頼しあう姿がまぶしくて、うらやましくて。
髪をかき混ぜる。頭皮を引っかいたところで、痛みひとつ感じない。
「……寂しいなぁ」
得られるはずだった唯一は、もうどこにも無い。


 

上手に焼けません+拍手レス

こんばんは、誤字とやるやる詐欺に定評のある管理人です。
誤字は見つけたときに直さないと放置してしまってだめですね……世に居るサイト管理人さんたちを身習いたいです。
しかし最近の冷え込みは急激ですね。外に出られず布団にこもって一人狩りにいく寂しい年末を過ごしております(*´∀`*)
私はゲーム好きなんですが操作が下手という悲しい不器用野郎なので、私が購入する前にクリアしてしまった兄がうらやましいです。でも年があけたら友人と狩りに行く約束をしたので、今から楽しみですよ!
みなさんはゲームとかしますか? オススメがあったらぜひ教えてください!




以下拍手レスです。遅れて申し訳ありませんでした。

more...!

安眠対策

drrr
来神時代の門田×臨也
修学旅行




修学旅行の夜である。
「ドタチン、一緒に寝て」
案の定というか、学年の問題児コンビとそのお目付け役というメンバーで押し込められた旅館の一室で、臨也は己の魅力を最大限に利用した甘えを発揮していた。
「……」
男子高校生同士である。
同衾の誘いなど死んでも遠慮したくなるのが普通ではあるが、もはや同級生というより父親の域に達した門田にとって、その誘いは無碍に断るほどのものではない。かといって必要以上に肩入れするわけでもなく、いささかボディランゲージの激しい臨也のわがままを、一体どうやっていなそうかと思案するように眉をしかめた。
旅館の露天風呂で温まった身体を涼ませながら、臨也は布団の上でくつろぐ門田に背中から引っ付く。休日の父親にかまってもらいたい幼児そのままだ。
「……急にどうした」
売店の自販機で購入した柑橘系の飲料水に口をつけながら、生乾きで放置してある髪を摺り寄せる臨也に溜息を吐く。
「俺ね、他人と一緒の布団に入って寝たこと無いんだ。親はいつもいないし、妹とかうるさいからごめんだし。でもドタチンとか新羅の体温って嫌いじゃないんだよね。くっついて寝たら気持ちよさそうだし」
元々人肌を恋しがる傾向にあるのか、それだけ周囲に親しい人間がいなかったからか。
真相はどうであれ、無邪気な願いを断るほどの理由も無い。
「別にいいけどな」
「ドタチン!」
感極まったように甲高い声を上げながら押し倒される。かろうじてこぼれるのを阻止したジュースを置いて、身体の上を陣取る臨也の好きにさせた。
胸板に懐くようにして甘える飼い猫のような状態の臨也は、酷く機嫌がいい。修学旅行という独特の空気の高揚感もあるだろうが、なんというかやけに無邪気だ。
静雄と喧嘩しないように日中は気を張っていたが、意外にも臨也は純粋に旅行を楽しんでい節がある。基本的に臨也さえちょっかいをかけなければ静雄が切れることは無いので、できるなら普段からそうして欲しいと心底思う。
「中学の時はね、あまりいい思い出がないんだ」
至近距離にある臨也の身体からは、風呂に備え付けられていた石鹸の香りがする。この地方の名産だかの花が入った石鹸は男が使うには不釣合いな代物だったが、当然のように臨也には似合っていた。
「丁度担任……いや、副担だったかな? のおっさんがきもくてさ。元々女子にセクハラしてるとかいい噂聞かなかったんだけど。消灯後に飲み物買いに廊下歩いてたら急に壁に押し付けられて首舐められてさぁ。きもすぎて金蹴りした。ま、学校から追い出してやったけど」
「新羅にも告げ口したら、協力してくれたんだけど! 新羅、ラブ!」なんて嬉しそうに話す。これでもものすごく傷付いて、精一杯平気な振りしてふるまっているのだろう。
どこまでも不器用なんだよなぁ、と思いながら抱き寄せるように腰に手を回してやると、リラックスするように身体の力を抜いた。くてりと体重が圧し掛かるが、そのままにさせておく。どけるには惜しい体温だった。
「怖かったな」
「んー……きもかったけど……別に怖くは無かったかなぁ」
どんどん高くなる体温に、眠りに落ちそうなのだと気がついた。歯磨きは食事後に済ませているから寝ても問題ないが、このままだと電気を消せない。
もうすぐ売店から帰ってくるだろう二人にこの姿を見られるのも、なんとなく気はずはしかった。
「臨也」
起き上がってくれ、という色を含ませた問いかけのはずが、自分で聞いてもとろけたように甘い声だった。
出会った当初から、臨也はやけに懐く男だった。
利用する価値もないと思われているのかもしれなが、きっと理由は臨也にしか分からないだろう。気に入られているのは、果たしていいことなのか悪いことなのか。
ほだされている自覚はある。それでも許したくなる魔性のような色香を纏った臨也を、どうしようもなく懐に収めておきたくなる。
「臨也、静雄が帰ってくるぞ」
「……じゃあ、ドタチンが守ってよー……」
確信犯か、天然か。
いちいちこちらのツボをついてくる男だ。
「俺が静雄に勝てるわけ無いだろ。ほら、電気を消すだけだから、横になっとけ」
「はーい」
甘ったるい言葉に無意識のうちに口角を緩ませながら、ゆっくりと立ち上がった。
とりあえずもうすぐ帰ってくるだろう二人への対応を考えながらも、もうしばらくこのポジションを楽しもうと思った。

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