現在連載中の「君に届け」で少女漫画最高のヒットを飛ばし続けている椎名さんの前作です。

実はこれ、私が最初に出会った椎名作品でもあります。
……懐かしい懐かしい学生時代(たぶん中学とかそんくらい)、本屋厨だった私はいつものように少女漫画コーナーをガン見しておりまして、そのとき平積みでもなんでもなかった今作のタイトルに惹かれて「ん?」と手に取ったのがキッカケ。
どうしてこのタイトルに惹かれたのかというと、当時の少女漫画には珍しかった「全部英語タイトル」だったからです。
英語は覚えられないから少女漫画のタイトルではご法度、とどこかで漫画家さんがおっしゃっていたのを私は覚えていまして、そのときの記憶が「そのご法度を打ち破っての英語タイトル作品か…」と私の手を延ばさせたというわけです。
で、手にとって見たら表紙もとても綺麗で うわぁ、これは面白い漫画なんじゃなかろうか!と思い、速攻レジに向かったのを今でも覚えています。

そんなある意味懐かしい今作を久しぶりに読み返すと、確かに今の作品の雰囲気とは違うお話なので印象は少々異なるのですが、見せ方のうまさだったり モノローグの強さだったりは当時から今まで変わっていなくて、椎名さんはほんとうに「少女漫画のツボ」を心得ているなぁ と感心しました。

思い出話が長くなりましたがあらすじですっ


■あらすじ■

女子高育ちの天然おとぼけキャラの幸は初めて参加した合コンでユキちゃんという男の子に出会う。
ユキちゃんは幸に出会って第一声「かわいい」と言ってくれるし 話すのも上手で…なにより優しくて 幸はあっという間にユキちゃんに心を奪われてしまう。
17年生きてきて、こんなに嬉しくて楽しいの 初めて。
初めての恋に心踊らせる幸だったが、合コンの男子集めに協力してくれた幸の親友で彼氏持ちの朱美に「ユキだけはやめたほうがいい。泣かされるよ」と言われ…?



このあらすじだとものすごく朱美悪者みたいなんですが、そんなことはなくて。
主要な登場人物は5人いるんですが、5人それぞれの想いが椎名さん得意のモノローグと魅せる表情により 痛いほど伝わってきて非常にドラマチック。
子供だから、いつもまちがってしまって でも大人になりたいから考える。
迷って、悩んで、まちがって、それでも進もうとする中で なにが正しいとかまちがってるとかじゃなく 自分なりの「答え」を見つけようともがく そんな青春ストーリーになっています。

ところで、椎名さんの漫画で私が個人的にいちばんすごいなぁ って思うのは「キャラの表情」で、特にうつむき加減の表情はほんっとうにせつなげでお上手だなぁ と思っています。
「心を揺らす瞬間」というのをほんとうによく切り取ってらっしゃるなぁ と毎回 心臓をわしづかみにされるような思いです。擬音にするとギュンギュンって感じでしょうか笑←わけわからんたとえしかできなくなってる

主役の二人のキャラクターが少女漫画的な王道 とは言いがたいので賛否両論あるようですが、個人的にはこんなにハラハラしながら、行く末が気になった少女漫画はないので とても好きなお話です。
なにより私、赤星くんも好きだけど(ちなみに赤星くんとは 主役5人のひとりで、椎名さんによると作品で最も人気を集めたキャラかつ「君に届け」の主役爽子ちゃんのいとこです)ユキちゃんもすごぉぉく好きなのです。(……付き合いたくはないけどねッ!)
ユキちゃんは みんなには「明るい」「楽しい」「いいやつ」と思われてるけれど ほんとうは傷ついていて、だから人を傷つけてしまって 心のなかに痛む傷をたくさん抱えている……そんな子で、私の中の「傷ついた過去から逃げて明るくふるまってるけど、結局は癒えない傷に振り回されて ほんとうに大事な人を傷つける道にいってしまう不憫な子」だいすきセンサーが常にギュンギュンでした(長い名前のセンサーだな)

そんなユキちゃんと幸が幸せなラストを迎えられるのか…是非、読んで確かめてみてください。オススメです*