【左手の薬指に目がいった。】

ヒノエが熊野から現代へと時空を越えることを始めて7度目だったか…ある時から女の左手の薬指に目がいくようになった。
望美から聞いた話によると『婚約指輪』と呼ばれる代物だという。
結婚の約束を示している指輪は、一つの証。

彼の時代では、『熊野別当』という地位があるため彼女を奪われるなどそう心配することはない。
が、現代では熊野別当の地位や水軍頭領などは何の意味もなさず。離れた時空で暮らす愛しい姫君を守ることは至難の業である。
数々の戦を潜り抜けてきた体術や剣術も現代で役に立つことも少ないだろうし、何より望美は口説き文句に滅法弱い。

―どうしたもんかな…オレの姫君を守るには―

他者に効果的かつ、彼女が意識してくれるものが良い。

あの白魚のような指へ、現代風に倣って指輪を贈るか。
それとも口付けか。
それとも、軽い痛みを添えるように甘噛みをしてみるか…。
それとも……。


―ねぇ姫君、お前はどれを好んでくれるかな…?―






つづく…?

突発的に、書きたくなりました。時空を行き来する中で、ヒノがこんなことを思っていてもいいかなと。