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女社長とボディガード〜紅穏〜

4。〜望美〜

眩暈がした。
そして頭痛の種が確実に生まれたとも感じた。


「ヒノ…?」

眉間に深く皺を刻みつけ、彼の言葉を訝しく復唱すれば当の本人は「そう、ヒノエだよ」などと嬉しそうに頷いて相変わらずの笑みで自分をみつめてくる。

尼御前は何を考え、こんな優男を送りつけてきたのか…
望美はサッパリ分からなくなってきていた。

ーもしや嫌われてしまったのだろうか。
それともー

考えれば考えるほど分からなくなる時子の真意。
不明確さに溜め息を吐きたくなったとき

「貴女は何をしいらっしゃるのやら」

溜め息混じり空間に介入してきた聞き覚えのある声に、望美はハッと振り返った。
と、長い黒髪を揺らしながらツカツカ歩みよってきた彼の人はヒノエとの間に割って入り

「悪いが、話はまず俺が聞く。社長には速やかに片付けてもらわねば困る案件があるからな…」

目配せしてそっと知らせる泰衡の意を汲むと、望美は「では」と会釈をしてエレベーターへと足を運んだ。

ヒノエの横を通りすぎるときに「またあとで…」と聞こえた気がするのだが敢えて振り向かずに。




ーーーーーーー

久々すぎる更新です
ちょっと、予定とは違う話の流れになっていますが…パラレルもたまには進めないと

お待ちになって下さっていた方がいましたら、お待たせいたしました!

【女社長とボディガード 4】〜紅穏〜

3。

望美が自動ドアをくぐったそのとき。まさに、事件は起こっていた。

「退屈な社内よりも、オレにしなよ…?絶対に損はなさせないよ」
「あ…あの…」

見知らぬ男が、自社の受付嬢の手を握り更に身を乗り出して…顔まで近付けている有様が飛び込んできた。
はっきり言って、普通の光景ではない。

言葉よりも先に身体が動き、望美はつかつかと歩み寄ると男の手を掴んだ。

「こんなところで一体何をなさっているのかしら」

相手を鋭く睨みつけてそう言い放った。望美の気迫にも怖けた素振りなど全く見せないその男は、「おっと…これはこれは」などと望美を凝視しては意味深な呟きをもらす。

「見たところ部外者のようね、通報されたくなかったら即刻この場から立ち去りなさい。今ならまだ見逃してあげるわ」

「見逃す」と逃げ場は与えつつも語気は弛めることなく告げる望美を、男はじっと見つめて居た。

が。やがて、その表情が艶を帯びた笑みに変わった。その瞬間、望美はゾクリと得体のしれない感覚を味わった。

「立ち去れ、ね…?そう言われて「はい、わかりました」なんて訳にはいかないんだ…オレは」

「…あなた、何が言いたいの」
動揺する心を抑え、あらん限りの冷静さを集結させて問う望美に、その人物は表情一つ変えずに言葉を続けた。

「なんたって、あの尼御前から貴女に逢うようにと仰せ遣ったのだから。」


尼御前の名を耳にするや、彼女は混乱した。

「まさか、あなたが…ふじ…」


先の艶は見間違いでもあったかのように、今度はニッコリと人懐こい笑みを浮かべて

「ヒノエと呼んでくれないかな?望美ちゃん」

望美の言葉を遮り、
そう、この得体の知れない男は告げた。
初対面かつ、名前にちゃん付けをするという馴々しさで。





初対面の二人。
出会いは最悪…?(爆)

本編てもヒノは一度だけ「望美ちゃん」というんですよね〜それを頂いてきました…(ぇ)

【女社長とボディガード 3】〜紅穏〜


2〜望美〜

昨夜から今朝にかけて、春日望美は多忙を極めていた。
社長という職はいつもそう、あちこちを駆け回る。
特に彼女は自分で何事もやってしまいがちな癖がある為に苦労もしばしば。

移動の車の中でスケジュールを確認する。
これからの予定は、『謎の男との面会』
尼御前こと平時子から
「あなたには今一番助けが必要なのでしょう」と言われたことが発端だったはずだ。

「藤原…ね」

手帳に記名された名を何とはなしに読み上げて、運転席の長い黒髪へとチラリと視線をやり

「泰衡さんと同じ苗字ですね」
血縁だったりして。と揄揶するように付け足せば
ミラーから僅か見える綺麗な男の顔があからさまに歪んだ。
「あなたは本当に戯言をおっしゃるな…」

常日頃から眉間に刻まれた皺が深くなるのを確認すると、望美は小さく笑った。
頭のキレはよい故に神経質で、人からは扱い辛いと言われている彼ー藤原泰衡は望美にとってはとても大きな存在だった。それも仕事の上で…の話だが。
互いに意識しないことはないのだが、男女の間柄になることはなく顔を合わすのも仕事時のみである。今も以前も。

出会った当初はそれはもう犬猿の仲のような…何とも言えないギスギスした感じがあったことを懐かしく望美は思う。
感情的に言い合いー望美が一方的に言葉を投げ付けたに等しいがーをして、互いに相手の思考が理解できたのかもしれない。

「しかし、あの方の思考も私には解り兼ねるな…得体の知れぬ男をあなたに引き合わせるなどと」

「ん…でも、時子さんのことだから何か考えがあるんだと思うけど、あまり気が乗らないのも事実なんです」

だって、少しだけ嫌な感じがするし…
とは敢えて口には出しにしなかったが、女の勘がそうだと告げていた。

「貴女らしくない…気に入らなければ即刻席を外せば良いだけのこと」

「そうだね…。我が身を守るのが最優先だし…」

そう口にしながらも、唇を隠すように手帳を翳して望美は思案を巡らせる。
そうして間もなく、低いブレーキの音と共に車は会社の玄関先に停車した。いつものように、泰衡が先に降りて後方のドアを開ける。
長身のこの男に促されるように、望美は車内から地へと降り立った。
照り返しが彼女菫色の髪と彼の濡れ羽色の髪を明るく映し出し、風が優しく撫で揺らした。

「あなたは思うがままに行動すればいい、万一手を汚す行いがあるならば俺が為すまでだ」

仏頂面な表情とアンバランスな発言を残しながら、泰衡は長い黒髪を揺らして車内へと戻り望美に振り返ることなく車を走らせいってしまった。
声も、返事もさせてくれないのはいつものこと。
望美は車を見送ると、自社へと足を向けた。


まだ見ぬ男に 会うために。





ちょっと望美サイドを書いてみたのでアップ。
次回に巡りあうヒノエと望美。
泰衡さん、スーツに眼鏡とか…どうかなっっ
眼鏡はなくてもいいけど!と勝手な紅穏さんでした

【女社長×ボディガード 2】〜紅穏〜


どうやら、今度の依頼は長引きそうだ。


高層のビルが建ち並ぶ中に、その目的のモノはあった。
さすが、「敏腕」と時子に褒められるだけありそのオフィスも一つのビルを占めている。

「さて…どうしたもんかな」
社長との面会まではしばし時間がある。
尼御前が手筈を整えておくと言っていたし、早めに着くのは悪くないとも言っていた。
ここは、入るしか…ないか。
まだ早ければ、受付嬢を口説けばいいことだし。


「さぁて、行ってみようか」

ひとしきり逡巡した後、ヒノエは着崩れていたスーツをきっちり着込なしネクタイを絞めた。

役職は社長の付き人。
ボディガードは裏の顔。


自動ドアを潜り、社内に入ると明るい照明が吊られていた。薄い桃色のスカーフを撒いた受付嬢が声をかけてくる。なるほど、教育も行き届いているようだ。
ヒノエはニッコリと笑み一つ会釈すると、受付へと足を進めた。

「春日社長とアポの約束している藤原といいます。尼御前から早く着くようにと指示があり、こちらに伺った次第ですが…少し早すぎたでしょうか…?」

少しも何も「早過ぎた」のは分かっている。だが、尼御前の名前を出せばそれなりの対応はなされるであろう。
冷めた思考にヒノエは内心笑った。

「時子様からの…。生憎社長は今、不在でして…少々お待ち頂けますか?」

彼の予想通り、受付嬢は尼御前の名にしばし考え込むと申し訳なさそうにヒノエをみやる。待つように促して、手元の内線へ手を伸ばす彼女であった。が、その手は空でヒノエの両手に包まれた。
「えっ」と小さく声を漏らす相手をよそに、余裕に満ちた笑みを浮かべてヒノエは告げる。
「こうして早く来てしまったのも、時間の悪戯かもしれないね…」

社内恋愛なんて飽きてきているだろう…?
よければ オレと

火遊びしないかい…?







続。

ボディガード=シティ〇ンターなヒノでしょ!!てことてこんな展開です。
次回は一方その頃…春日社長は?
接触まであとわずか?!
お楽しみに(ぇ)

【女社長×ボディガード 1】〜紅穏〜


「守って頂きたい子がいます、あなたの力貸して頂けますか…?」

尼御前と呼ばれる女、平時子はそう綺麗な顔をした青年に告げた。

「…私が断れないと知って、開口一番にそのようなことを仰せになりますか?」

肩を竦めて見せながら、大して困惑した風でもなく青年は瞳を細めて笑ってみせる。

「貴方を陥れようとも私に利益も何もありませんよ…?」
仏に似た穏やかな笑みで返す時子に、青年-ヒノエは両手をあげ「降参だ」と今度こそ肩を竦めてみせた。

「で…天下の尼御前様が守って欲しい子とはどんな子なんだい?子供かい?それとも猫や犬かい?」

先程までの低姿勢はどこへやら、ヒノエは首を回したり伸びをしたりと緊張を解きながら時子に問うた。
少しの反抗も忘れずに。

「子供は子供かもしれませんが、私に力を貸してくれているとても頼り甲斐のある子ですよ」
「…と言うと?」

続きを促すヒノエを手で制すと、膝元に置いていた浅葱色の布の包みから一枚のカードを取り出した。
純白の紙に凹凸で描かれた花模様をあしらったそれは、まるで見合い写真のフレームにも似ている。

「随分と凝ったカードだね…これはイイとこの御嬢様かお坊ちゃんか…はたまたイグアナやカメレオンかな?」


「さぁ…それはご自分で判断なさるところですよ」

つぅ…と細い指先が、ヒノエの前へとカードを押し滑らせた。

「ご覧なさい。そして、あなたのお答えをお聞かせ下さい」

食えない笑みを浮かべる尼御前が少しだけ憎らしくも、ヒノエはゆっくりとカードを手に取った。
そして、

「へぇ…これはこれは」

利き手でカードを開き、中を見た途端に感嘆の声を漏らしていた。思わず弛む口許を悟られぬように、もう一方の手を添えて隠す。

美人というよりは、愛らしい容姿。されど、その瞳は力強い光を放つ翠…長い菫色の髪をもつ女の写真が挟まれていた。

「名前は?」

ちらりと視線を尼御前にやると、彼女は一口茶を啜っており。一息吐くと、淡々と語り始めた

「名前は春日望美。経営のプロ、敏腕の女社長としてその名声は確かなもの」

「貴女との関係は…?」

「ビジネス」

スッパリと断言されては、詮索しようもなく「そうかい」とヒノエは一言だけ返し、カードをジャケットの内ポケットへとしまいこんだ。

「差し上げる…とは、言っていないはずですよ?」

「堅いことはこの際無しですよ、尼御前」

ニッコリと笑むヒノエに一つ息を吐くも、時子は尚も笑っていた。

「では…報酬から差し引かせてもらいましょうか」

菩薩の微笑みよろしく穏やかな微笑と言動にヒノエが眉を寄せたのは言うまでもない。
この女にとって、この写真は本当に大事そうだから。
報酬がそっくりそのままなくなってしまう可能性だって無きにしもあらず…。
やれやれ…と敢えて音にしながら、懐からヒノエはカードを取り出して時子の前へと滑らせた。

「じゃあ…詳しく話を聞こうか」



…続。

書いたら止まらなくなった【女社長×ボディガード】設定。
雑記にてこっそりこそこそ展開致します。
キャラチョイスは紅穏のいんすぴです(笑)尼御前!!!
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