「……」
ボリスは手の上の猫缶を見る。
「…はぁ〜」
そしてでっかい溜め息。
それは今日、残酷無慈悲と歌われる女王様からの謎のプレゼントだった。
どうも彼女は猫が大好きらしい。
「お前にいいものをあげよう。」
そういって女王がバックから取り出したのは猫缶…もといキャットフード。
純粋な気持ちに無邪気な笑み。それに負けボリスは貰って帰ったのだ。
「食う…しかない、よな?」
好意でくれた物だ。捨てる気にもなれず、ボリスは食べた。
もともとボリスも猫だ。食べれないわけじゃない。
そして次の会合でもまた貰った。しかも大量に…。
「何で断れねーの?」
自分で言っておきながら答えは出ていた。
あんなに純粋な好意を拒むことなんかできない。
「…なんとなく嫌いになれないんだよなぁ〜」
帽子屋ファミリーの双子とよくあのババアと言っていたが…女王の好意を知って罪悪感が出てくる。
「ネコ…」
二度ある事は三度ある。
ボリスはまた会合で女王と再開した。
いつもと違うのは女王が悲しそうにしてたとこくらいだ。
「どたの?女王様…。」
「今日はキャットフード持ってないの…。」
「いや、別にいいよ。」
むしろいらないから…。
とボリスは思ってたが言葉にはできなかった。
「でも、せっかく会えたのに…。」
女王はもじもじとしていてなんだか可愛らしい。
「なぁ、女王様…あんた、ネコ好きなの?」
「ああ。」
「…俺じゃなくても?」
「ネコはみんな好きだ。…可愛い…。」
女王はうっとりとしている。
「…女王様に良いこと教えといてやるよ。ネコってな、意外と嫉妬深い生き物なんだぜ?」
「ん?」
ボリスの言いたいことが分からなかったのか女王は小首を傾げる。
「俺さ、あんたのこと気に入っちゃった。だから他のネコじゃなくて俺にだけかまってよ?」
「ネコが妾を……。」
女王はきょとんとしている。
「ああ。」
と、その時だった。
「げ、にゃんこ…。」
ピアスがばったりと出くわした。
「っ〜〜!!」
ビバルディは顔を青ざめさせている。
「女王様?」
「ね…ネズミ…っ」
「うん、そだな。」
追いかけたくてウズウズしているボリス。
「ネズミっ〜〜〜!!!」
ビバルディはすっかり気が動転しているのか、ボリスにしがみつき、痛いほどだきしめてくる。
「ぐぇっ!?ちょっ、女王様、タンマ、タンマ!!く、苦しい…。」
だが女王、ビバルディはネズミに恐怖し、我を忘れている。
「…お前さ、何したの?」
「分かんないよ。でも、いつもあったらこうなんだ。俺、嫌われてるみたいだ。」
「そりゃ…ネズミ好きなやつはあんましいねーだろ…。」
「うぅ…」
「唸った…。」
ピアスの泣きそうな声を唸り声と勘違いしたビバルディは更に恐怖でボリスを締め上げる。(勿論、本人には自覚がない。)
「ぐぇ、ち、ちょっ!出るって!中身出る!!」
勿論、女王は気付いてない。
「ピ、ピアス…。頼む…。頼むから…一旦ここからいなくなれ…。」
「えぇっ!?なんで!?なんで!?」
ボリスの状況を見てもピアスは理解ができないらしい。
「いいからどっか行けよ…。食うぞ……。」
ボリスが低音で言うとピアスは、「ちゅう…。」と困ったように呟き、その場を去っていった。
ボリスはやっとビバルディの締め上げる攻撃から解放された。
「はぁ…はぁっ」
ボリスは顔を青ざめさせる。
「女王って…もしかして…」
「ん?何か言った?ネコ…。」
「いや、別に…(嫌いなネズミを追い払ってくれるから猫が好きなのかも…。)」
「あぁ…やはりネコは良い。可愛らしい。何より汚ならしいネズミのように唸ったりしない。」
「…ネズミと比べられても嬉しくないんだけど…」
「それにネコはネズミを対字してくれるからな♪」
「…やっぱし」
ボリスはがくっと肩を落とした。
―END―
(でも、嫌いにはなれない…。)