【興味スイーツ】
世の中本当に便利になったわ。
亜莉子は炊飯器のデジタル表示に映し出されている数字が段々一分ずつ減っていくのをぼんやり眺めながら思っていた。
3…2…1、と残り1分になってから、亜莉子は椅子から立ち上がるといそいそと食器棚からやや大きめの皿を取り出した。
「アリス、もういいかい?」
「ダーメ。大人しく待ってなさい」
キッチン傍のカウンターに、目隠しをされたままゴロリと転がっているチェシャ猫を見向きもせず、亜莉子はキッチン内をパタパタ動く。
やがて、ピーピーと炊飯器から音が鳴り響き、工程終了を知らせる。
「よしっ、綺麗に出来てるかな〜?」
カパッと蓋を開けて炊飯釜を取り出した亜莉子は、そのまま出した皿に軽くトン、と中身を引き出した。
途端、フワッとした匂いと淡い熱がそこに広がり、次いでそれに歓喜の声を上げる亜莉子。
「やったぁ!やっぱ綺麗に出来るんだねー!凄いわ!」
「アリス、もういいかい?」
二度目のチェシャ猫の台詞にチラッと視線を寄越しただけで、直ぐに皿の上のモノに視線を戻した亜莉子は、「もう少し待ってて」と云うと再びキッチン内で作業を始める。
作っておいたフワフワの生クリームを出来たてのそれに塗り、続いて数種類のフルーツを綺麗に盛り付けた。
「これで…完成っと!」
「アリス、」
「はいはい、終わったわよチェシャ猫」
ゴロゴロとカウンターを転がっていたチェシャ猫をよいしょ、と抱き抱え、キッチンへ連れていく。
目隠しを外して、亜莉子はニコニコと笑顔でチェシャ猫に目の前の完成品を見せた。
「…ケーキかい?」
「そうだよ、炊飯器でスポンジ作ってみたの、凄いでしょ?」
そう、亜莉子とチェシャ猫の眼前にはそこそこ出来映えの良いケーキ。
数日前に観たテレビで知ったのだろう、炊飯器でスポンジを作った亜莉子は満足気な顔でチェシャ猫に尋ねた。
チェシャ猫は相変わらずのにんまり顔で、暫く黙ってそのケーキを眺めてい(るように見え)たが、
「アリス、これは誰に作ったんだい?」
「誰に…っていうか興味本位で作ってみただけよ。面白そうだったから」
「ふぅん」
そう返事をしたチェシャ猫に、亜莉子はチェシャ猫の首を自分の方に向けた。
「折角作ったんだから、一緒に食べよう、チェシャ猫?」
私の常識では猫はケーキなんて食べないけれど、この猫はきっと食べれるんじゃなかろうか。
そして云うだろう。
「僕らのアリス、君が望むなら」
【おまけ】
「でもどうして目隠しなんてしたんだい?」
「あら、だってあなた、フルーツとか見付けたら食べちゃいそうじゃない?置いてる材料を視界に入れないように目隠ししてたの」
モグモグとケーキを頬張る亜莉子は、そう答えるとクスリと笑った。しかし、
「フルーツは食べてないよ、待ってる間虫は食べたけど」
「………む、し?」
「ゴキブ「云わなくてよろしい!」
目隠しして何故捕食出来たのか。またまた何故種類が分かったのか。
亜莉子は気が付けば引き笑いを浮かべ、ほんの少し、チェシャ猫から離れた。
★★★★★
何が書きたかったんだっていう。(^O^)
炊飯器でスポンジを、ってのはまさにこの間テレビでやってて、チョコレートケーキが美味しそうだったのでネタにしてみました。実際に作りたいけど爆発したら怖いと妹に云われた姉、きいし←
今日は当方バースデーでもあるのです(どうでもいいね!