【JOB】
「団長さん団長さん!また新しい依頼来てるよ!!」
エントランスに足を踏み入れた途端に響きわたるモアナの声。
ばさばさと紙の束を振っているが、恐らくそれが新しい依頼の束なのだろう。
「おう、どれどれ…?お、ヤディマじーさんからまた畑の依頼だ」
「あの人結構依頼するよねぇ…まぁ採れたての野菜くれるのは有難いけど」
「うーん、しっかし今度は誰に行ってもらおうか…」
「あれ、クロデキルドさんとかダイアルフさんに何時も頼んでなかったっけ?」
誰を派遣しようかと悩む相手に、モアナは不思議そうに首を傾げる。
云った二人の名前は、この度々依頼される仕事で固定になりつつある者だったからだ。
つい先週も依頼の紙に二人の名前が記入されていたのを覚えていた。
「あー、それなんだけどよ…」
ポリポリと頬を掻く少年。
団長という肩書きを背負う彼の表情は曇りがちだ。
「アスアドやロベルトに姫さんに何させまくってんだって怒られるわオータから王様を休ませてあげてって泣かれるわ…周りがうるせぇんだもん」
「あぁ…ナルホド。そういやヤディマさんがこの依頼をしに来た時、フレデグントさんがじーって見てたんだよねぇ…」
今思えば目が怖かったなぁ、と呑気に云うモアナ。
大好きな姉との時間を畑に取られたのが原因だろうか、最近やたらと彼女の機嫌が良くなかった。
「本人達は平気だって云ってんだけどなー…まぁ仲間の意見は大事にしなきゃだし、たまには別の奴をだな…んーと…」
ペラペラと他に派遣してる仲間の状況をメモした紙を捲りながら適切な人材を探す。
「おい団長!俺にさせてくれ!!」
「ん?ヨベル」
「頼む!体力作りにもなるし、アンタみたいに強くなりたいんだ!そして何より姉ちゃんの傍から離れたい!!!」
「うわ、明らかに最後のが一番の理由って感じ」
モアナがはっきりと突っ込む。
「そっかーヨベルねぇ…まぁ良いんじゃねぇ?早寝早起きの長時間作業だけど頑張れよ」
「おう!」
名前の記入を済ませると手を振って去っていくヨベルを見送った。
「後は誰連れてく?」
「そうだなぁ…ジェイルとマリカに頼んでみ」
頼んでみようか、と云い切る前にその声を遮る甲高い声がエントランスに響いた。
「アナタの為ならどんな小娘よりも尽してみせるわ!!私を連れてってよ!!」
「うっわメイベル!?」
ずい、と突然現れた相手に驚く団長。
今にも別の意味で襲いかねない勢いのメイベルはモアナからパシン、と依頼書を奪い取った。
「ちょ、ちょっと!」
「マリカですって…!?ふん、あんなミニスカ田舎娘、独りで穴でも掘ってれば良いのよ!」
「そういうアンタはキテレツ娘…って!何勝手に書いてんの!!!」
奪い取った依頼書にヨベルの名前の下に無理矢理自分の名前を書き足すメイベル。
モアナの台詞を無視して唖然としたままの団長にニッコリと微笑んだ。
「待っててねダーリン、美味しい野菜で美味しいご飯作ってア・ゲ・ル!」
行くわよー!と云い捨てるなりダッシュで外へと向かって行った。
「ご飯って…畑耕す仕事って分かってんのか…?」
「っていうか今行くんじゃなくて明朝からなんだけど…」
跡形もなく去ったメイベルに、団長とモアナは深く溜め息を吐いた。
「ヤディマじーさん悪ィ…」
「畑無事だと良いねー…」
結局残りのメンバーを決めて、クエスト派遣は終わった。
後日。
「団長さん団長さん!こないだの畑仕事のだけど」
「お?…ああそうか、もう終わったんだ?」
「うん、でね?ヤディマさんからの伝言なんだけど…」
「手紙か?何…『もさもさに荒らされた方がマシじゃったわい!あの小娘は二度と寄越さんでくれ、頼む!!』って…」
「あちゃー…やっぱ荒れたかー」
「ヨベルに関しては感謝してたみたいだな。…メイベルは全くもう…」
「ダーリン!!只今貴方の元に帰ってきたわー!!寂しかった!?逢いたかった!?」
「いや別に」
「んもー、ダーリンったら照れちゃって!あのねっ、お野菜沢山採って来たから今からご飯作ってあげるわね!!」
「採って来たんじゃなくて盗って来たんじゃないの?」
「失礼ねモアナさん!ヤディマさんが『好きなだけ持っていけ、もう来なくて良いから』って云ったんだもの!」
「ヤディマじーさん…!」
この時団長は次は必ずクロデキルドら騎士団とダイアルフらヒューリーロアに頼もうと決めた。
「さぁて遊んでる暇は無いわ!早速厨房貸してもらわなくっちゃ!」
云うなり走り去るメイベルに唖然としつつ、次なる被害者はワスタムか、と痛くなる頭を二人で抱えた。
余談だが姉・モーリンから離れて清々しく自由に汗を流せたヨベルは、畑仕事に目覚め始め、以後も積極的に畑に参加しようとしたらしい。
◆◇◆◇◆
無理矢理終われ!!(笑)
書き途中で放置しまくってたので、久々読み直して続きをどう書きたかったのか忘れてたとか内緒内緒!←
団長名はデフォがあれば良かったんですが…当方命名は趣味に走り過ぎるので自重ww