※367
※TURN11派生
ケース1:
2人の学園入りをスザクが知らなかった場合
本国への報告と、主とのモニター越しの謁見が終わったのは日付も変わった頃だった。
皇帝との会話は機密とされ、ジノとアーニャは一足先に退室した為、顔を合わせる事なくスザクは朝を迎えた。
アーニャの様子が気になる。
モルドレットの修理と点検の為、しばらく出撃も出来ない。もし出てきていたら、休みを取るよう薦めなくては――そんな事を考えながら、スザクはあてがわれた執務室に足を踏み入れた。
しん、と静まり返った室内に首を傾げる。いつもなら、応接用の椅子に陣取るジノが見えるのだが。
ふと、スザクの胸によぎるのは不安だった。根拠はない、直感だ。
机の上に小さなメモを見つけて、それは確信に変わった。
人間、許容量を越えると感情という波はひいていくものだ。
嵐の前の静けさ、とも言う。
【アッシュフォードへ体験入学してきます 3&6】
「な、に……考えてるんだあの2人はーー!!!!!」
****
制服を纏った2人が政庁へ帰ってきたのは夕暮れだった。
初めての学生服にジノの足取りは軽い。
「スザク驚くだろうなぁ」
「驚く、で済んでるといいけど」
愛機の修理と合わせて休暇を取ったアーニャは、アッシュフォードへ行くことを決めていた。言付けを頼もうとしたジノがついてくるのは彼女も予想外だったらしいが、反対もせず今に至る。
「だ…大丈夫だろ、書き置きしたし手順は踏んだんだし」
自信なさげな声は唐突に途切れた。
道の先、入り口に佇む青が見える。
「スザク……?」
スザクが、声に顔を跳ね上げるのとジノが駆け出すのは同時だった。
「嬉しいな!迎えに出て来てくれたのか「ジノ!アーニャ!」」
ジノは、身体にぶつかってきた衝撃を反射的に抱きしめながらも固まった。
あのスザクが自分から胸に飛び込んで来るなんて!
けれど、素直に喜べないのはアーニャも同じだったようだ。
2人の名を呼ぶ声は悲鳴に似ていた。
「何で急に学園なんか…!何もなかったか?朝から此処までの事、全部話せるか!?ルルーシュとは…―ッ」
「痛い!スザクっ髪引っ張るなって!」
「答えろ…!」
「スザク」
半ば掴み合いの2人に、静かに滑り込んだ繊手が、ふわりと栗色の髪を掠めた。
精一杯背伸びして手を伸ばしたアーニャが、スザクを見つめている。
「心配かけて、ごめんなさい――大丈夫」
「アーニャ……」
静かな瞳に力を奪われたように、スザクの手がゆっくり下ろされていった。同じ速度で膝が崩れ、慌ててジノの腕が支える。
大丈夫、と繰り返し髪を撫でる手を、スザクは強く握り締めた。
深く―深く息を吐き出すと、スザクにようやく笑みが浮かぶ。喜びとはかけ離れたそれに、ジノは息をのんだ。
「ありがとう…アーニャ。制服、似合ってるよ」
「……そう?」
「なぁスザク、俺は?」
「……学園で何を吹き込まれてきたのかじっくり聞かせてもらいたいな」
「勿論。今夜は寝かさない」
「私も混ぜて」
「大胆なお誘いだなぁアーニャ!」
入り口に固まりながら騒ぐ3人を咎める者は誰もいない。何故なら、彼らは最高の騎士だからだ。
優しい手に偽りの影が無いことを信じながら、スザクは笑顔の下でひとつだけ涙を零した。
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ルルーシュの記憶は改竄したんだから、ギアスの心配は無用なはず。けど、ゼロ=ルルーシュ、要は記憶が戻っているのを直感で感じているスザク。彼らの目を見るのも容易い状況です。ユフィの惨劇がフラッシュバックして大混乱。
――説明不足でごめんなさい。
脳内補完もここまでしつこいとうざったい!
でも、書かずにはいられないんですよね……すみません、まだしばらく続きます。