ついにあと少しで終了!なSS第八弾です
今回は前回のお話のシスト視点。
前回同様シリアス&流血描写(ごく軽いものですけど)がありますので、
苦手な方はご注意を。
"だいじょーぶ!"なお方はどうぞ、追記から。
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主に創作について語ります。 バトンをやったり、 親馬鹿トークを繰り広げたりします。 苦手な方は、どうぞ戻ってやってくださいませ! (私のサイト「Pure Rain Drop」) → http://id35.fm-p.jp/198/guardian727/
ついにあと少しで終了!なSS第八弾です
今回は前回のお話のシスト視点。
前回同様シリアス&流血描写(ごく軽いものですけど)がありますので、
苦手な方はご注意を。
"だいじょーぶ!"なお方はどうぞ、追記から。
Side シスト
―― 良かれと思ってしたことが裏目に出た場合って、どうしたらいいんだろ。
俺は、フィアと一緒に任務に向かった。
内容は、火竜の討伐。フィアが唯一苦手とする竜の討伐。
ルカも、止めようとした。俺も止めた。
だけど、フィアは行くと言ってきかなかった。
まあ、あいつのプライドだ。仕方ない。
無茶だけはさせないように気をつけよう、そう思いつつ、竜の住む場所へ行った。
炎を吐き出す竜。
それを見ていることは、あいつにとってどれだけ恐怖だっただろう?
突然、フィアの足が止まった。
怯えたように、竜を見つめている顔は、青白い。
大丈夫そうに、見えない。
その時。
竜が、爪を振り翳して、フィアに襲いかかった。
―― 守らないと。
その決断に至るのに、時間はかからなかった。
もう二度と、目の前で仲間を失いはしない。
大切な、大切なパートナーを、傷つけさせはしない。
名を呼べば、振り返るフィア。
俺は、それを突き飛ばす。
振り向いたフィアの驚きの表情に、かつての自分の姿が重なった。
瞬間、襲いかかってきた鋭い爪。
俺はとっさに、魔術で爪の軌道をずらした。
極力、ダメージを減らさなければ。
さすがに俺だって、死にたくない。
フィアを守って死ねるなら、それは本望だけれど。
―― 俺は、知ってる。
遺された側の人間の気持ちも。
自分を守って死んだパートナーを想う気持ちは、誰より俺がよく知っている。
フィアが、俺のことを相棒と認めてくれていることは、恐らく自惚れではないはず。
だとしたら、きっとフィアも苦しむ。
俺が、死ぬわけにはいかない。
とはいえ、魔獣族最強の威力を誇る竜の爪だ。
軌道をずらして、胸にあたるのは避けたけれど、腹を斬られる。
痛くないと言ったら、それは大嘘だ。
痛いし、ついでに体ごと爪にひっかけられ、思い切り宙に投げられた。
俺の名を呼ぶフィアの声が聞こえた。
痛々しい、叫びで。
嗚呼、あの時俺も、こんな風にエルドの名を呼んだな、なんて。
そんなことを思っていた。
"平気だ"と、ぶん投げられた後すぐに答えようと思ったけれど、
地面に体を叩きつけられて、それができなかった。
すぐに体を起こして、叫ぼうとした時。
何かが、壊れる音が聞こえた。
ぱき、というか……何かが、こわれた音。
それと同時に、ほとばしったのは凄まじい量の魔力。
誰のものかなんて、考えなくてもわかった。
冷たい、冷たい、氷の魔術。
俺が凍り魔術の使い手じゃなかったら、多分即刻凍死していただろう。
だって。
炎を扱う、火竜が氷漬けになっていく。
凍ってもなお、その竜に向ける魔術を弱めようとしないフィア。
どうしたんだ?らしくない。
そう思いつつ、フィアを見て、はっとした。
その瞳に、なにも宿っていない。
綺麗な青い瞳はまるでガラス玉のように、感情のこもらないもので、
その瞳で、竜を見据えていた。
―― 暴走、してる……?
フィアは、天使の魔力を有していると、聞いていた。
万が一、暴走したら止めてやってくれ、とも。
アイツの魔力を知っているのは、俺とアル、そして各部隊長の五人。
俺しか、今この場にいない。
魔力を放ち続けるフィア。その魔力の強さに、俺はしばらく動けずにいた。
でも、次第に体が慣れてくる。
傷の痛みにも慣れてしまった。
俺は立ち上がって、フィアに近づく。
蒼い瞳が、涙でぬれていた。
泣いてんのか、フィア。
近づいて、手をつかむ。
冷たい。凍っていく、自分の手。
でも今はそれよりも、自分のパートナーを。
―― 暴走すんな、てか
大丈夫だから。俺は、此処にいる。
俺なんかのために怒らなくていい。暴走するな。
止まれ。
もういい、やめろ。
そういって、俺がとめれば、俺を見たフィアは、小さく呟くような声で俺の名を呼んだ。
よかった。ちゃんと、意識はあるんだ。
ほっとして笑う。
そして、掴んでいるフィアの手首に、いつものブレスレッドがないことに気付いた。
この膨大な魔力を封じているそれは、アルからのプレゼントだと言っていた。
壊したくなくて、はずしたんだろう。その結果、暴走。
まったく、何をやっているんだ。
そう思いながら、フィアの騎士服のポケットに手を突っ込んで、それを引っ張り出す。
そのまま、フィアの腕にはめた。
人間らしくない体温だった手が、少しずつ温まり始める。
これで、とりあえず安心だろう。
ようやく落ち着いた様子のフィアに声をかける。フィアが頷いてくれたから、ほっとした。
でも、次の瞬間フィアは俺の傷を見てはっとした顔をした。
目に見えて狼狽した様子で、声にならない声で、何かを言おうとする。
謝ってるのかもしれない、心配してくれてるのかもしれない。
でも、言葉として聞き取れない。
苦しそうな呼吸。パニック起こしかけてる。
お前の方が、よっぽど大丈夫かと聞きたい。
案の定、フィアはその場にへたり込んで。
大丈夫だから落ち着け、と声をかければ珍しくフィアが俺の服をつかんだ。
普段なら、こんな甘えるみたいな態度、絶対取らない。
それくらい、驚いたんだろう。俺の行動に。怪我に。
服をつかむその手が、震えている。
挙句、まだまだ冷たい頬には、涙が伝っていた。
生きてるんだから泣くな、といったってフィアは泣き止まない。
あぁ、前にルカやアルが言ってたな。
フィアはめったに泣かないから、泣きだしたときは止めるのに苦労する、って。
それを、身をもって知ることになった。
励まそうが、冗談を言おうが、泣きじゃくるばっかり。
聞いてんのか、お前は。
フィアが笑うまで、俺が笑って、励まして、冷たい手を握った。
ガキっぽい慰め方しか思いつかないけど、
こんなことで泣きじゃくってるフィアだって十分ガキだ。
と、そこでようやく気付いた。
さっきまで自分で傷を押さえていたからだろう、フィアの手に血が付いた。
謝ると、ようやくフィアがいつもの調子で大丈夫、と返した。
自分自身を落ち着かせるためか、深く息を吸ってから立ち上がる。
帰ろう、という声はまだふるえていたけれど、どうやら泣き止んだみたいで、ほっとした。
帰り道、俺が死ぬのがそんなに怖かったか、と尋ねたら、
俺が一番よく知っているはずだと返答され、思わず、苦笑した。
確かに、そうだ。
怖いんだよな。自分が死ぬより目の前で誰かが死ぬ方が。
でも、お前のその次の言葉には頷けない。
お前が痛みに強いのは知ってるよ。
だけど、俺はお前に痛い目に遭ってほしくない。
だから、俺はお前を守るんだ。
俺がしたいからだぜ。
ふと隣に目をやれば、無口なままで歩くパートナー。
蒼い瞳がまだ若干潤んでいる。
こんな風に強がってばっかいるくせに弱虫だし、
一度泣きだしたら止まらないし、無理ばっかりするし。
もう、本当に子供みたいなやつだ。
そう思えば、思わず笑みがこぼれて。
"何を笑っている"と怪訝そうな顔をするフィアに、"何でもないよ"と笑い返しておいた。
― まるで子供のような…… Fin ―
性 別 | 女性 |
年 齢 | 29 |
誕生日 | 7月27日 |
地 域 | 静岡県 |
系 統 | おとなしめ系 |
職 業 | サービス |
血液型 | AB型 |