日野神紅煉(ひのかみ こうれん)
パッと見それなりに調った顔立ちに
それに釣り合う身長と体格
所謂『イケメン』と言われる部類に入る方だ
物腰は柔らかく性格も紳士的であり
まるで漫画やアニメに出て来そうな『いかにも』といわざるおえないほどのいい男である
そんな彼にも弱点はあった

女性恐怖症で腐男子という普通の人間には言えない弱点が

仔鞠と出会ったのは5年程前で男友達からの紹介だった
第一印象は普通の子
いや、出会いの場所がコスプレ会場の時点で既に普通ではないのだが
大人しくて控えめで、珍しいと感じたのを覚えている
この空間に入ると女子はいかに目立つか、いかに人に良く見られるかと必死になるものだとばかり思っていた
美人や綺麗処、カッコイイと思われる者の周りには自然と人が集まってくる
紅煉もその例に漏れず気がつけば壁際に追い詰められ
見知らぬ女子達からの黄色い悲鳴が聞こえてくる
連絡先を一方的に押し付けられ媚びより擦り寄ってくる
いい加減ウンザリだと何度思ったか
ただ自分はただコスプレをしたいだけなのに
好きでもない所在の知れない女子とくっついたり
所謂BL絡みの写真を撮られなければならないのかと
こんな事を同性に言ったら嫉妬の言葉が返ってくるのは火を見るより明らかで
いっそ辞めてしまおうかと思った程である
仔鞠もそんな感じで自分に擦り寄ってくるだろうと思っていた

だが反応は予想外の事だった
彼女はイベントが終わるまで始終仲間と一緒には居たが自分のピン写や
作品のイメージにあった写真しか撮らなかった
その上こちらから連絡先を渡さなければ連絡先を教えてくれなかったのだ
後から仲間から聞いた話で若干の男性恐怖症であって
二次元と三次元をきっぱりと別けて考えているという事を知った

何度か交流を交えて二人だけで遊びに行ったりもした
その時も仔鞠は大人しくて今までの女の子とは違っていた
今までの子は嫌と言うほどアピールをしてきた
(勿論全部お断りしたが)
思い切ってある日仔鞠に聞いた
仔鞠にとって自分はどういう存在なのかと
告白?と返されたのであたふたとなりながら事の経緯を話して
仔鞠はふむとミルクティーのカップを置くと一言

ただのイケメンには興味ないんだよ

ある種強烈な言葉であった
辛辣な言葉にとられそうだが
それは彼女いわく人は見た目で判断しないという意味もあった
そこから急速に関係は進み、彼氏彼女…ではなく
性別を越えた親友という男女間に友情は存在するのかなどと論議はまるで意味を持たない程に仲良くなった
まぁ街中歩いてるとカップルに間違われたりするが
互いに説明がめんどくさいという事でそんな風に認識されている
(後で私の彼氏は立貴君だとぼそりと呟いているが)
それが仇となったのは暫く経ってから
ネットの利便性は良いものだが良くない一面もある
仔鞠が運営していた個人サイトが酷い荒らしにあった
言われのない誹謗中傷に彼女のなりすまし等吐き気がするほど気持ちが悪かった
そしてサイト閉鎖と仔鞠の精神を破壊する程に酷くなった
犯人はおおよそわかっていた
自分のファンだと追いかけ回してくる胸糞悪い女子連中だと
人を見た目だけで判断し、自己願望を人に押し付け、
気に入らない他人を簡単に蹴落とし踏みにじる最低な奴ら

大丈夫
仔鞠が小さく呟いた
慣れてるから、平気 だと
光を失った精気の無い虚ろな目で仔鞠自身の痕跡をネット上から淡々と消していった
紅煉君は、何も悪いことしてないから、
気にしなくていいから
全部あたしが悪いから
うわごとの用に繰り返し言う仔鞠に何も言えなかった
それから仔鞠のコスプレはぱたりと見なくなった
イベント会場にも来ることが無くなった
なんだかぽっかりと穴が空いた気分だった
男女としての付き合いはまったくなかった
一緒にご飯食べに行ったりゲームしたりしただけなのに
暫く経って仔鞠を叩いたのに我関せずと擦り寄ってきた女達に
大勢の人間の前でマジ切れして泣かせたのは別の話
別になんと言われようとよかった
大事な親友を傷つけられたのはどうしても我慢ならなかったから
その後女達の悪事がバレて逆に叩かれるハメになっていたが
それは俺の知った事ではない、因果応報だ

同人活動を再開した仔鞠の新しいサイトは驚くほど何もなかった
サイト説明にオフライン情報、素材サイトへのリンク
そしてイラストが一枚だけ
本当に情報だけといった感じで
掲示板も、日記も、プロフィールも、連絡先も
仔鞠だとわかるものは何もなかった

SNSだけが仔鞠とコンタクトを撮れる場所になっていた



ここまで書いて疲れた←
というか私の文章の最後、『た』が多過ぎる…
ちょっと本読んで勉強せななー…
あ、サイト炎上とか叩きはフィクションですよ
紅煉(こうれん)にモデルは居ません
紅華(べにか)、深紅(みく)と紅が名前に入ってるキャラで三紅にしたかったので作りました←