発端は、いつだって自由人なのだ。
『なぁ、クラウドは文化祭、もちろん行くだろ?』
『いや、予定はないが』
『えっ? うっそだろー!
スコールのクラス、いい出し物やるらしいぜ?』
『……何?』
可愛い年下の恋人に滅相甘い相談員が、その話に飛び付かないわけがなかった。
「くっ……!?」
それは素晴らしい見物だった と後に劇団部員は語る。
あんぐりと口を開けた生徒会長は、現れた相談員を信じられないという目で見ていた。
が、それ以上に、相談員の目は生徒会長に釘付けになっていた。
お堅い生徒会長が身に纏うのは、フリルのたくさん付いたミニスカートのエプロンドレスに、リボンがあしらわれたヘッドセット。
有り体に言えば、メイド服だった。
奇しくも、生徒会長の頭上には看板が掲げられており、こうかかれている。
"男装女装メイド喫茶"
「……っ!」
寸の間で、生徒会長は相談員から脱兎のごとく逃げ出す。
が、すぐに相談員が後を追った。
存外足の早い相談員に今日は厚底のブーツを履いている生徒会長が捕まるのはいつだろうな と劇団部員が思っていると、
隣りにはこの状況を作り出した自由人が並んで言った。
「ジタンも似合ってるぜ」
「……どーも」
「スコール!」
相談員が生徒会長を捕まえたのは、奇しくも人気のない、
彼のテリトリーである相談室の前だった。
さずかに息が切れ、未だ混乱と羞恥の真っ直中にいる生徒会長は、逃走は諦めたものの、
真っ赤になった耳を向けたまま、年上の恋人に振り返ろうとはしない。
その愛しい仕草と、倒錯的な魅力もあいまって、思わず相談員は呟いていた。
「――可愛い」
「……だから言いたくなかったんだ」
こんなみっともない姿、見せたくなかったのに と悄然と肩を落とす生徒会長に、
そうじゃない と慌てて相談員は口を開く。
「違う、どんなスコールだって、俺は――」
言いかけて、寸の間で場所を思い出して相談員は言葉を飲み込む。
今日は人気がないとはいえ、誰が聞いているかもわからない。
「――お前だけじゃ、フェアじゃないからな」
そう言って、無理矢理話を変えて、引き込んだ相談室で、
"女装コンテスト優勝"のたすきをかけた相談員の写真を見て、生徒会長が再び絶句したのは言うまでもない。
atogaki
またスコール、女装(メイド)かと。
……ごめん☆
ネタが降って沸いたのが悪い。
ちなみに、前回は正当派英国風メイドさんのイメージでしたが、今回は萌えメイドイメージです。
……どうでもいいですね。
余談ですが、高校の時、実際に文化祭でやってる男子がいました。
格好はまあまあ可愛かったのですが、やる気ない感じに足を開いて歩いてたのが印象的でした。
だが、そこがまたいいと思う。