雨の日の話。
2010-8-14 23:11
Rainy day(7810)
ざぁっ と。
一面が黒に染まっていく。
自然が作り出す闇。
もっともここにそんなものが存在するのならという話だが。
「ひっどい雨ッスねー」
ひょい と隣りから窓をのぞきこんでティーダが言った。
窓を叩く雨粒は、先程降り出したものだ。
「しばらくは止まないだろうな」
反対側の窓枠に腰掛けたスコールは、苛立ちも諦めもない口調で淡々と言った。
その肩には、湿気を含んだ布がかけられている。
適当な振り分けで決まった今日のパーティを襲ったのは、
イミテーションでもカオス陣営でもなく、突然の雨だった。
何とか廃墟を見つけてもぐりこんだはいいが、その僅かな間でも水浸しになるには十分過ぎた。
現にクラウドは上を脱いでしまっているし、スコールはいつも羽織っている厚手のコートを、
ティーダは水に強い素材なのか服は着たままだったが細々とした装備は外してしまっている。
無論、その点は二人も同じだ。
普段は空気にさらされない指で、窓にそっと触れる。
ひやり とした直接的な冷たさが皮膚から伝わってきた。
「何見てるんスか?」
今度は顔をのぞきこんできたティーダを見て、いや と目を伏せる。
何をしているのか と聞かないところが、ティーダがティーダらしい所以だろう。
「……苦手なのか?」
「そうじゃない」
スコールの問いには、はっきりと首を振ることができた。
そうではない。……ただ。
「雨は……嫌いなんだ」
単純な答え。
常ならばここで「あー わかるッスよ!」だって何とかがどうとかで、
と乗ってくるティーダが口を閉ざしたままなのを怪訝に思い視線を戻すと、
何故だかティーダは気まずそうな顔をしてスコールを見ていた。
そういえば"スコール"という名前は、あるところの言葉で"雨"という意味なのだと言っていた。
同じようにクラウドは"雲"、ティーダは"太陽"という名で、旅人と盗賊のお騒がせコンビがお天気トリオなどと言っていたか。
黙ったままのスコールは普段通りに見えたが、
年下二人相手に大人気ないことを言ったな と自覚し、沈黙に滑り込むように口を開く。
「……雨の日は、外に出られなくて困る」
ティーダがぎょ として、こちらに振り向いた。
スコールの鋭いまなざしもこちらを見ている。
「バイクに乗れないから配達の仕事もできないし、家にこもって体が動かせないのは辛い」
かわいそうに、ティーダはおろおろとし始めたらしかった。
スコールの眼光もより強くなっているのがわかる。
けれど。
「……でも、全てを洗い流してくれるのは、嫌いじゃない」
獅子らしくなく、スコールがきょと としたのがわかった。
同じくほうけていたティーダは一足早く我に返り「お、俺もっ!」と付け加える。
そんな様に、クラウドは少し微笑った。
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