光と闇の話。
2010-8-13 23:04
Darkness(14)
「セシル?」
は として顔を上げると、そこには無表情で、けれど訝しげにこちらを見つめている光の戦士がいた。
「疲れたのか」と無感動にけれど優しさを滲ませた口調で彼は問う。
肯定すれば、後は私に任せて休め と言うだろう仲間思いの光の戦士に、そうではないと首を振る。
「ちょっと…… 考え事をしていたんだ」
「差し支えなければ聞いてもいいだろうか?
一人で抱え込むのはよくない」
「……僕は、こちら側にいていいのかな って」
彼に言うのは気後れしたが、口を開けばするりと弱音は零れ落ちていた。
対峙したカオス側の言葉が蘇る。
秩序を守る戦士達の中で、闇の力を使うのはセシルだけだ。
混沌の軍勢は自分が手足になれば、さぞかし都合がいいに違いない。
動揺させるための言葉だとわかっている、けれど。
「闇を抱えていたら…… いつかは染まってしまうのかな。
闇の力を使っていたら、いつか飲み込まれてしまうのかな と……
ちょっと、不安になったんだ」
でも大丈夫、皆と一緒に戦うために、僕にはこの力が必要なんだ という自分の言葉を、
光の戦士は目を閉じて黙って聞いていたけれど、
ふと握り拳を作るとゆっくりと開き、小さく詠唱した。
「闇よ……」
「……!」
掌に、セシルやカオス側の使うものとまったく違わぬ闇が現れる。
吸い込まれそうな、漆黒の影。
「闇を持たない者などいない」
握り潰すようにして、彼はおぞましい黒を消した。
その口調は厳しく、あたたかい。
「人は善を光と呼び、悪を闇と呼ぶのかもしれない。
だが大切なのは光か闇かではなく、正しいことを為すか否かだと私は思う」
再び掌に力が現れる。
今度は眩く輝く、光。
「私は、己を律さねば、光の力を扱えない。
だから、光も闇も力とする君が恥じることは何もない」
よどみなく淡々とした口調と、その裏に隠れるもの。
あぁ、何だ、光と闇も所詮同じようなものなのか とおかしく思った。
「……貴方が闇の力を使ったら、誰も勝てなさそうだ」
「そうか」
微笑って返した言葉に重なる、わずかな笑み。
それでもきっと、この人は僕らを導く光なのだ と思った。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
atogaki
闇を扱うライトさんの話を書きたかった(笑)
「光よ!」って叫ぶライトさんも素敵だけど「闇よ……」って低温ボイスで言ってくれるのも素敵だと思います。
某動画サイトのタグ“ウォーリアオブダークネス”を見て「そんなのあるのか……!」って思ったのが始まり。
実際、戦闘の中でイミテーションパラディンセシルの攻撃を跳ね返すのに使って、仲間を驚かせたらいい(笑)
秩序を守る戦士達の中で、闇の力を使うのはセシルだけと言ってるのは展開の都合上ですが、
バッツのはものまねだし、オニオンナイトの忍者は全部がってわけじゃないので、結局そうなのかしらと思ったり。
セシルのライトに対する口調が不自然だったらすみません……
敬語にするかどうか迷った挙げ句のこれですよ。
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