そんなことはどうでも良かった。どうでも良くなっていた。
彼女と真夜中のタリーズでコーヒーを飲むことは出来なくなったのだ。それだけが頭のなかにあった。この世の中から忘れ去られようとしている寂れた街ではなく、息が詰まりそうなビルの群れのなかで、私は彼女とたくさんの真夜中を過ごすつもりだったのに。
他愛のない話をしよう。気がついたら朝日が昇る瞬間で、寝不足でフラフラになりながら、またね、と言って手を振って。
見えるはずもないネオンの煌めきが、瞼の裏でちらついた。


忙しなく行き過ぎる人混みのなかで、彼女の手を引くのは私であって欲しかった。





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