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これの夢主
※不動寄りの輝夢
※フィフスセクターに捕まっていた(前提)夢主を救出した後の話
やっと捕まえた。
やっと見付けてくれた。
そう言い合って彼らは、再会を心から喜び合い、抱き締め合った。
僕はそれを遠目に観ながら、あの人達が今まで背負っていた過去や人物像を鬼道監督が語るのを聞いていた。
゙彼らは昔、互いの想いとすれ違い、互いに違う方法で互いを守り合っていだ
゙一人は自らを犠牲にしその身体を闇に染め悪行を働いだ
゙一人は守られてばかりの自分に劣等感を感じ、自ら進んで闇に染まっだ
゙全ては互いを守りたいが為に゙
「…いいなぁ」
それはまるで―…いや、共依存そのものだ。
互いを守りたいが為に泥沼に沈んでいく二人の哀(あい)。
そしてその中心に居たのは他でもない僕の叔父だと言うのだから、
僕はこの上無く、彼らに運命性を感じてやまなかった。
****コンコン
「失礼します、」
「あきっ!ぉ、じゃないな…ハハ」
練習が早めに終わったある日の事、僕はとある病室の扉を開けた。
広い広い病室に片割れ…又瀬さんは寝そべっていた。
来客は特定の人物に限られていたんだろう。
思い人では無いと気付くと、又瀬さんは恥ずかしそうに苦笑し「入って来いよ」と僕を手招きした。
「アンタが影山さんの甥っ子?」
ベッドの脇にある病人用の小さな冷蔵庫から缶ジュースを取り出し僕に渡すと、又瀬さんもプルタブを開け飲み始める。
ジュースを飲む音と小さな虫の声が静寂を保っていた数秒後、又瀬さんはゆっくり口を開いた。
「は、はい。影山輝です」
「輝かぁ…。ハハ、影山さんと全然似てない」
きっとアンタは母親に似たんだなと笑う又瀬さんは、確かに笑っていたけど悲しそうでもあった。
それから僕は又瀬さんに叔父の話をいくつかして貰った。
悪い事も良い事も含め沢山沢山教えてくれた。
次第に表情が明るくなり、彼は本当に叔父が大好きだった事を知った。
(もちろん、LoveではなくLikeの意味で)
「―…それで影山さん、逮捕直前までずっとベンチでチーム見据えてたんだよ。あの時は凄かった」
「…………」
「逮捕される前に頭撫でて貰ってさ、帰って来たらちゃんとした影山さんのサッカー、教えてくれって約束したんだけどなぁ…」
結局、破られちまったよ
「…そうだったんですか」
フと落とされた小さな影に、僕はなんと言えば良いか分からず只々頷く事しか出来なかった。
あぁ、僕の叔父はなんて罪の多い人物であったんだろう。
自分が歩む道に立つ心優しき人々の人生を変え、悲しみや憎しみを与え続けた。
それが例え自らが望まないものだったとしても、彼はそうでなくてはならなかった。
それしか出来なかった。
沢山の人を傷付けた代償に、彼は命を落としたのだろうけど、
彼は目の前にいるこの人や他にも色んな人に、もう治す事の出来ない傷を残して去ってしまった。
何処まで逝っても、彼は…
「なぁ…」
「?」
「お願いがあるんだ」
数秒の間を空けて、又瀬さんが僕に向けてそう言った。
酷く優しい顔で。
その笑みに見とれて「なんですか?」と僕が言う前に又瀬さんは僕を引き寄せた。
身体が余り動けない筈の彼の力は強く、僕は戸惑いながらも顔を埋める状態でジッと硬直した。
「しばらく、このままにさして」
頭上から聞こえて来た、少し弱々しい声色に、僕は黙って頷いた。
吐息の含んだ「ごめんなさい」という小さな小さな声に、僕は又瀬さんが叔父に向けて懺悔をしているというのが分かった。
何を謝っているのだろうか。
そう思ったのと同時に僕は心の中で小さな哀しみと叔父に対しての小さな小さな怒りが生まれた事に、気付かないようソッと目を閉じた。
僕を見て
(叔父が居なかったら僕を好きになってくれてたのかな)
(…無理だよなぁ)
(あー、やんなっちゃう)
****
輝君が病んでると良いな。
影山さんばっかりの話して影山さんの影を輝君に追う又瀬さん。
それにイラッ★とした輝君が又瀬さんに言い寄る感じ。
でも又瀬さん本命は不動さんだから結局叶わない恋。