徹夜続きで眠さが限界で、30分だけ寝かせてくれと、近くに居たタマキとヒカルに声をかけた所までは覚えている。
それから直ぐ、ミーティングルームのソファーに横になって俺は重たい瞼を閉じた。
だから俺は今眠っている。その筈なんだけど……。

今俺の目の前には、あり得ない光景が広がっている。
何故だか裸のタマキがうっとりとした表情を浮かべて、ベッドに横たわってこっちを見ているのだ。
これは完全に夢だな。
俺の願望ってやつ?
それはまるで、欲求不満を絵に描いたような風景だった。

「ん〜カゲミツ? 何ボーっとしてるんだ? 」
夢だと分かりつつも混乱している俺を、寝そべっているタマキが不思議そうに尋ねた。
というか、裸体のタマキは眩しい! 眩し過ぎて直視できない!
そしてふと、タマキの裸を薄目で見ながらある疑問が浮かんだ。
「……タマキはなんで裸なのかな? 」
俺の愚問にタマキが「何言ってんだ? 」と目を見開いた。
「??…今お前とセックスしてるんだから当たり前だろ? お前も裸だぜ? 」
「へ? ……ってマジだ! 」
自分の体を確認すると、タマキが言うように俺も全裸だった。

てか、セ、セックスって…俺達が?!
めっちゃくちゃいい夢じゃないかぁぁあ!!

思わず狂喜乱舞している俺を、「大丈夫かぁ?」と怪訝な顔をしてタマキは見ていた。

「ちょっ! タマキ!聞いていい? セッ…って俺達その…付き合ってる設定?…なのか?」
俺の問いに、タマキは不機嫌そうに眉間に皺を寄せた。
「…はあ? 設定って何? …てゆーかあのさ、付き合ってなかったら俺お前とこんな事しないし」
タマキはプイッとそっぽを向いてから言葉を続けた。
「カゲミツ、俺の事好きって言ったじゃん」

あーヤバイ。
……ちょっとこれ、俺の夢 最高じゃね?!

タマキのあまりに可愛い過ぎる言動に、俺の心臓がバクバクと激しく鳴った。

「そ、そうだよな。付き合ってなきゃしないよな」
俺がうんうんと頷いてそう言うと「そうだよ〜」とタマキは口を尖らせた。
そして「なあカゲミツ…続き…」と上目遣いで強請られる。
「えーと……」
続きと言われても、俺にそんな大役を果たす事が出来るかどうか疑問だが、目の前にこんなエロい…じゃない、愛くるしいタマキが居て、何もしないなんて男じゃないだろ?!
やってやろうじゃないか…。
所詮夢だしなんとかなる!
そう意気込んで俺はタマキの肩に手を置いた。
「タマキ…」
「カゲミツ…」
瞳を閉じたキス待ちのタマキは、この世のものとは思えないくらい愛おしい。
「……好きだよ」
そう想いを伝えて唇に口付ける。
タマキの唇はとても柔らかくとにかく興奮した。
「…カゲミツ…もっと…」
そうお願いされて、これで合っているのかと疑問符を浮かべながらぎこちなく何回か啄むようなキスをした。
そして、タマキをベッドに横たえようとした時それは起こった。思いっきり体を揺さぶられるような変な感覚。
「え? なんだ?」
タマキは「どうした? 大丈夫か?」と心配そうな顔をしている。

なんだ? なんだこれ?
体がグラグラする……ってか今いい所なのに…。
そう思いながら目をギュッと瞑った後、意を決して思い切り瞼を開けた。すると俺の視界いっぱいにタマキの顔が広がった。

「おい、カゲミツ大丈夫か? 」
激しい揺れは収まり、俺はホッとしながらも心配顔のタマキの首に腕を回した。
「大丈夫 大丈夫……タマキ〜大好きだ〜」
俺はそのままさっきの続きとばかりにタマキの唇にキスをした。
「ん?!?……」
その途端、何故かタマキは真っ赤になって自身の唇を片手で覆ってしまった。
「ちょっ!…カゲミツ?! 」
あれ? タマキの反応がさっきと違う。
俺はハッとして辺りを見回した。

場所はミーティングルームだ。
タマキも俺も裸じゃない……。

状況が理解できずにキョロキョロしていると、笑いを堪え切れていないヒカルと目が合った。
「タマキ タマキって名前呼びながらうなされてると思ったら…ぷふっ…面白いもん見れたぜ〜」
え?! ちょっと待て! ……てゆーか薄々感じてるけど……信じたくないが、恐らくこれは現実だ。
おずおずと隣にいるタマキを見ると、案の定複雑な表情で俺を見ていた。
びっくりしているような怒っているような…。
「あー… えっと」
やっちまった…これは嫌われるやつだ…ああ、泣きそう。
「タマキ…あの、ごめん」
「別に……」
「寝ぼけてたとはいえ俺が悪かった…と思う」
「大丈夫だから」
「え、でも… 」
俺が言い訳出来るような言葉を探していると、タマキは上目遣いで予想外の言葉を発した。
「別に嫌じゃなかったし」
「………ん? 」
「だから……気にしなくていいよ」
タマキの頬はほんのり赤くてとても可愛いらしかった。
「ああ…そう?なの?」
「…うん」
赤くなっているタマキを見つめながら、願望丸出しのエロいタマキもいいけど、やっぱり現実の可愛いらしいタマキの方がいいなぁと、思考力低下中の俺は思った。
そんな風に思っている俺の顔がにやけていたみたいで、ヒカルに「キッモ!! 」と罵倒されたけど気にしない気にしない。
だってタマキのこの顔を見て、この先期待してもいいんじゃないかって、そう思ったから。

夢の中のタマキに会える日も近いかもしれない。





おわり





*これ昨日書いたんですけど、今読み返してみて「なにキレイに締めてんの?! カゲミツこのやろ! 」って思ったのですが書いたの私だ…。