亮さん、貴女は私にとってあらゆるものの象徴であった。多感な十代の時を私は貴女に捧げ尽くした。悔いなど欠片もない。あの頃の私にとって、いろんな不条理や決して満たされない自己愛を、抑制する枷として貴女は現れ、私は貴女に夢中になったのだ。
しかし、同時に貴女にとっての私自身の存在が小さいものではなかったと確信もしている。片田舎の世間を知らない小娘に入れ込むしかなかった貴女の精神をそこまで追い詰めていたものは何であったろう。圧迫が強ければ強い程、ままごとのようなお遊びに狂ったように私たちは興じ、後に私はそれを恋愛ごっこと称する。
貴女の“愛している”は果たして真実であっただろうか。私はただ、他の誰にも与えられたことのない賞賛の言葉の数々を、あの芋くさいセーラー服に包まれて一身に受けていた。私は自分を貴女の“お姫様”であると信じて疑わなかったし、貴女もまた、私をそのように扱ったのだった。貴女が私にイカレていることが、涙が出る程に嬉しかったし、私が貴女にイカレているということも、まだ男を知らない純潔の身に震える程の恍惚を齎すのだった。

時は流れて、初めて出会ったあの夜からもう6年が経ちました。私は未だにあの日を忘れてはいない。きっと貴女もそうでしょう。貴女にもらった美しいネイルは私に感情の爆発を起こさせる。貴女が私を想って描いた赤いネイル。

亮さん、亮さん、あたし、もう24歳になるよ。すっかり制服も似合わなくなっちゃった。



亮さん、私は貴女に人生を狂わせてほしかった。