2016年5月28日 15時10分 マイナビニュース

話題:V6

V6の森田剛が28日、都内で行われた主演映画『ヒメアノ〜ル』公開初日舞台挨拶に、共演の濱田岳、ムロツヨシ、佐津川愛美、吉田恵輔監督とともに登場した。

同作は、『行け! 稲中卓球部』作者として知られる古谷実の漫画『ヒメアノ〜ル』を映画化した作品。ビル清掃会社のパートタイマー・岡田(濱田)とカフェ店員・ユカ(佐津川)の恋愛物語と並行して、サイコキラー・森田正一(森田)の心の闇を描いていく。

4月25日にイタリア・ウディネファーイースト映画祭でも好評を博した同作だが、新たに上海国際映画祭(6月)、富川国際ファンタスティック映画祭(7月)への出品が発表となった。

初主演映画の海外進出に、森田は「愛着もあるし、埋もれてほしくないなって思いもあるから、こうやって海外に行って見ていただけるのは、嬉しいし……嬉しい。嬉しいです」とはにかんだ笑顔を見せた。共演のムロも「今いい言葉。『嬉しいし、嬉しいです』すごくいい言葉だなと思いました。先生すごい好きです」と教師モードで見守った。

吉田監督は「それ(海外)を夢見て、クレジットを『GO MORITA』」にしてますからね」と意図を説明し、「森田さんの撮影の大変さを聞いていると、本当に森田さんの森田を見てもらえるのは、すごい嬉しいです」(濱田)、「世界に広がっていくのは嬉しいです。行きたいな」(佐津川)と、共演者も次々と喜びを語った。

殺人鬼という難役に、撮影の際に気持ちが沈むことも多かったと話す森田。「今日は1人やっつけて、今日は2人、今日は3人……と増えてくると、だんだん待ち時間に猫背になってきて、重い気持ちになっていくから、その時に現場近くのペットショップに行って、癒やされる」と、気分転換法を明かした。

ムロが「どんな風に癒やされるの?」と聞くと、森田は「こうでしょう?」と背中を丸め、「スッ……」と言いながら背筋を伸ばし、ペットショップに癒やされた後の姿を表現。ムロは「ちょっとお尻出てるんだけど!」と笑いながらも、「そうやって癒やされるんですね」と納得した様子を見せていた。


森田剛、壮絶な狂気まき散らす「ヒメアノ〜ル」で体現した“普通でいること”
2016年5月29日 8時0分 映画.com


 森田剛が吉田恵輔監督作「ヒメアノ〜ル」で映画初主演を飾った。役どころは、普段のイメージとはかけ離れた猟奇殺人犯。自らの存在意義を誇示するかのように凶行を重ね、壮絶な狂気をまき散らしていく役に、どのように向き合ったのかを聞いた。

 「話を頂いた時はちょうど舞台をやっていたころで、その時も人を殺す役だったので、その流れでいけると思いました」。森田は淡々と、オファー当時を振り返った。質問にはシンプルな語り口で答え、朴訥とした雰囲気を漂わせたかと思えば、時折り軽やかな笑みをのぞかせ、周囲を和やかにする。一筋縄ではいかない空気感と人懐っこさが同居するたたずまいは、内面に広がる深淵をうかがわせる。

 原作は、「ヒミズ」の古谷実氏が生み出した“実写化不可能”の問題作。ビルの清掃員として働く岡田(濱田岳)や安藤(ムロツヨシ)、カフェ店員・ユカ(佐津川愛美)のコミカルな恋愛譚が描かれる裏で、ユカを執拗に付け狙う森田正一(森田)の地獄の日々が同時進行で映し出される異色サスペンススリラー。三度の食事をとるかのように、当然のごとく人を殺していくシリアルキラー・森田正一を体現してみせた森田。その不気味さは、“怪演”の言葉がふさわしい。

 鉄パイプでの殴打、放火、強姦、銃撃、包丁でメッタ刺し、ひき逃げ……。原作の森田が持つ“動機”を薄め、代わりに暴力性を際立たせたことで、殺人を肯定することなく突き放し、共感不可能なモンスターを創出した。「(役に対し)共感や理解はできなかったです。映画の中の森田正一は、高校時代のいじめが(殺人衝動の根源として)大きかったと思いますが、だからといって人を殺していいわけではない。いじめは、ほとんどの人が大なり小なり経験したことがあると思う」。それだけに精神的な葛藤はあったようで、「1日で3人を殺さなければいけない(撮影)日は、流石に重い気持ちになりました」と話し、「引きずることはないんですが、ちょっとイラッとしたり、違う自分が出てくることが多かったです」と述懐する。

 そんな難役に挑む森田に、吉田監督は「何もやらないこと、普通でいること」を注文した。森田は「監督の演出が絶対」とポリシーを打ち明け、「監督の言う『普通』が、やっぱり大きかったですね。(役から逸脱し)変わっていくことが怖かった」と語る。殺しが「普通」のこととなった森田正一になりきるうえで、「衣装」が重要なポイントになったそうで、「暗めの衣装に監督はこだわれていて、衣装合わせに時間をかけた分、スッと入っていけました。セリフのニュアンスも、シーン毎に監督に演出してもらっていましたね」と説明した。

 暴力性全開のアクションでも、吉田監督はウェルメイドではない生の迫力にこだわった。「よりリアルに見えるように、ということは監督が特に意識されていたことでした。殴り方や刺し方、体の預け方など、監督から細かく指示があったので、それに応えなければという意識がありました。アクションはもっと動きたくなるんですが、なるべく普通でいるという気持ち悪さにこだわっていました」。演じるうえで過酷だった場面として「警官を殺すひと幕は、体力的に一番しんどかった。あと精神的に疲れたのは(共演の)山田真歩さんを棒で叩くところ」を挙げる。「相手もいるわけだから力芝居で100%は出せないんですが、監督は『100%でやってくれ』と。無茶だと思ったけど、そこも大事だと思ったので、100%でいきました。普段、ポカーンとしているやつから出る必死さを狙っていると思いました」と吉田監督への信頼感をにじませた。

 映画出演は「人間失格」(2010)以来、約6年ぶり。近年は蜷川幸雄さんや宮本亜門らの寵愛を受け、「血は立ったまま眠っている」「金閣寺」など舞台の世界で研鑚を積んだ。宮本が「絶対に世界に通用する才能」と認める表現力が、「ヒメアノ〜ル」での“普通でいること”を実現せしめている。

 「V6」メンバーの反応も気になるところ。「メンバーには見てもらいたいですね。家族に見てもらう感覚に近いです。岡田(准一)に『一緒に見に行こう』と話してしまったんですが、映画館は行きたくない。お客さんが入っていなくてガラガラだったら、気まずいじゃないですか(笑)」と照れ笑いを浮かべた。