最初じゃなく最高でもない
かもしれないけれど
話題:小さな幸せ
昨日はゆうちゃんに会ってきました。
今日はそのこと。
"ゆうちゃんちの近くの神社にいこう!"という目的のもと会うことに。
梅が見頃らしい。
暖かな1日。
川沿いの道を話しながら歩く。
「まきちゃん、お昼どうするー?」
「うーん、スーパー行ってみようか。欲しいものがあったら買おう。欲しいものがなかったら、、、どうしてやろうかねぇ!」
「ひひひ、どうしてやろうかねぇ!」
「商品を全部捨ててやろう!"私のいらないものばっかり売らないでね!!"って叫びながら!そうすればきっとお店の人も反省するだろうからねぇ!」
「ねぇ、まきちゃん!」
いつものようにバカみたいなことを話していたら、突然名前を呼ばれた。
いつのまにかもうスーパーの前。
見上げると彼の晴れやかな顔。
「僕、まきちゃんのことがものすごく好きなんだ。そのことについてはどう思う?」
笑ってそう言うゆうちゃんに何て言えばいいか分からなくて、咄嗟にふざけたテンションのまま、それは愉快愉快って言ったら、ゆうちゃんも愉快愉快って言って笑った。
スーパーには私の買いたいものはなかったけど、商品を捨てたりはしなかった、勿論。
ゆうちゃんはハーゲンダッツの新作のアイスがほしかったみたいだけど、溶けちゃうからスーパーでは買わなかった。
とりあえず神社に行ってみることに。
お祭りをしていてなんとなくいつもより賑わっていた。ちらほら人がいるだけのささやかなお祭り。時々スピーカーから雅楽が聞こえる。
梅が本当にきれい。
写真をとった後、ゆうちゃんとお参りをした。
境内でお汁粉がふるまわれていた。
実はこれを目当てにきた私たち。
すぐにもらいましたよ!
社務所の側でおばあちゃんがお汁粉をいれてくれる。
中が賑わっているな、と社務所の奥を見ると、狭い場所でたくさんのおばさんやおばあちゃんが忙しそうに、それでも楽しそうに賑わいながらお汁粉を作っている。
別の部屋では、神社の関係者の方々がお弁当を食べながら宴会を開いているみたい。
ビールと弁当が並んだ机。
たくさんのおじさんやおじいさん。
「弁当たべていかんのかー」
「いやいや、ワシは家で食べるわー!」
なんだかよくわからないけど、おじさんたちがそんなことを言い合ったりしている。
あぁ、祭だなぁと思ってなんとなく胸が熱くなった。
「私さ、こういうの好きだな。狭い場所でたくさんの人がひとつの目的に向かってなんかしてるの。夏祭りの屋台の裏側とかさ、文化祭の準備とか。あぁ、舞台裏だなぁって嬉しくなるよ」
「うん。うわ、お汁粉あつっ」
ゆうちゃんは聞いているのやら聞いていないのやら。そんなことを話しながらお汁粉をすすった。
確かにお汁粉は熱く、すごく甘い。
だからかな、おばあちゃんは紙パックの"おーいお茶"もくれた。
ゆうちゃんはもらわなかったみたい。
お汁粉を食べて神社を後にした。
ゆうちゃんは自転車を押して、私はなにも押さずに歩き出す。
「そういえばさ、今日国公立の2次試験だよ」
「あ、そうなんだ」
すっかり忘れてた。
ゆうちゃんは高3生も教えてるからなんとなく心配そうな様子。
「どうだろうねぇ、一応さっき神社で合格祈願しておいたけど」
それを聞いて少しだけ悲しくなった。
ゆうちゃんは神社に来るたび、自分のことじゃなく他の誰かのことをお祈りしている。
神社のお祈りくらい、自分のために使ったっていいんだよ。
でもまぁ、ゆうちゃんのことは私がゆうちゃんの分まで熱烈にお祈りしたからいいか。
私は勿論私のことも祈りましたよ。
ファミレスでご飯を食べたあと、コンビニでハーゲンダッツの新作を買って帰った。
ファミレスではゆうちゃんが途中で食べられなくなって、残りを私が食べた。
ハーゲンダッツの味は、ゆうちゃんは確かきな粉黒蜜味、私はみたらし胡桃味。
コンビニの袋をさげて帰り道。
何か考え事をしながら無言で歩いていた。
ふとゆうちゃんを見ると、
ゆうちゃんがすごくにやにやしていた!
今までこんなことあったかな。
私が何か話してその隣でゆうちゃんがにこにこしていることはあったけど、私が無言で、それでただ歩いててゆうちゃんが笑ってることなんて!
「わ、ゆうちゃん笑ってるー」
「うふふ」
「なになにー」
「えー、別になんもないー」
すごいな。
思い出し笑いなのかもしれないけど、思い出し笑いができるってすごい。
家に帰って、ふたりで眠る。
わたしたちはセックスの途中で眠ったり、また起きてセックスをしたりする。
私を抱きしめたゆうちゃんが、
「僕ね、まきちゃんとこうしてるのが大好き」
と少し寝ぼけた声で言った。
セックスの後は彼の腕枕で寝ましたよ。
とてもいい気分。
起きたあと、ゆうちゃんがお腹がすいたと言い、ふたりでハーゲンダッツを食べることにした。
「僕の身体わがままだね」
「え、なんで?」
「これならファミレスでお腹すけばいいのにさー、このタイミングでお腹すくなんてさ」
「そっか、ゆうちゃん、わがままボディーだね、わがままボディー」
なにそれーって言いながらゆうちゃんが生姜湯を淹れてくれて、ふたりでおやつの時間。
ハーゲンダッツめっちゃ美味しかった!
どっちもね、表面にもちがついてるんですよ。
おもしろい。
ふたりでお互いのを交互に食べる。
ゆうちゃんのアイスは表面の餅の上にきな粉がかかっていた。
話しながら食べていると、大変なことに。
「わ、ゆうちゃん、きな粉が!」
私の息が変な風にかかっちゃってきな粉が舞い上がって飛び散ってしまった。全部私の着ているセーターにかかったのでまだましだったけど。
「どうしよ、ゆうちゃん、ゴミ箱ある?」
セーターの端をつまみ上げて言うと、
「玄関に落としなー、後で掃除するからさ」
とゆうちゃんは冷静に靴を片付けてくれた。
きな粉を上から叩いて払おうとすると、
「あ、だめだめ、まきちゃんのセーターにきな粉がはいりこんじゃう、」
と言って服の中に手をいれてそこからはたいてくれる。
「ゆうちゃんごめんね」
と私は言いかけたけど、その前にはたき終わったゆうちゃんが私のお腹をくすぐり出して、笑いすぎて言えない!
私が座り込んで笑うと、ゆうちゃんも座り込む。くすぐるのはやめない。
そのうちなぜかゆうちゃんも笑い出して、きな粉まみれの玄関の前でふたりで座り込んで大笑いしてしまった。
長い間、そうして笑っていた。
『ホワイトロード』