各地にあるお家には各地の物語や童話の本がある。
私は本を読むのが好きだ。
私の知らない感情をつづられていたり。
私の知らない出来事、この世にはない物に浸れる。
「アムール、また本を呼んでるのか?」
「おじさん。本には恋や愛。そんな言葉がつづられてる。意味は理解してるけど、想いを理解できない………。とても不思議な物なのね。」
それは、私は知らない。
知らない感情。
〜彼を思うと、胸が熱くなり。焦がれる〜
有り得ない。
自分がいきるのも精一杯なのに…
「アムール。」
「ん?なぁにお爺さん。お前の母親は、お前に名前を与えた。」
「うん。」
「アムール。この名前……。名前には意味を込めた。」
「意味?どんな意味なの?」
お爺さんは椅子に腰掛け、優しい瞳で私を見た。
私の名前は…どんな意味?
悪い意味じゃないのは確かね…
「愛だよ。お前に愛という意味の名前を授けた。……どんな想いからか知ることは叶わないが。アムールとは愛を示す言葉」
「………」
理解しえない。
恋をしたことがない。
ときめき
それを知らない。
私も人だから、きっと愛を持ってて恋だってするんだと思う。
でも私はその恋も愛も。
未だ知らない。
「アムール?わしは、お前を愛しておるよ。」
「え?なんで?」
「わしがお前を育てるのに、愛をたくさん注いだからじゃな。」
「愛?」
「お前は、周りと接する機会が少ないせいか、少々感情に欠落があるが、いずれ……勇者様との出会いを経て、それらを手に入れるじゃろ」
「…………」
まだわからない未来じゃないか。
とは思ったが。
知らない物を求め旅を続けているんだ。
私が得るのは、生きるということ。
だから…足跡を残してまだ旅は続くんだ。