苦悩の果てに4

公認の条件だったデートの出来事を全部話すという約束は、なかなか守られませんでした。しかし、桜の花が咲くころだったでしょうか、男と付き合い始めて半年、私に告白して3ヶ月が過ぎたころ、ようやく妻はセックスの中身についてポツリポツリと話すようになりました。
「男の人ってみんな同じようでも、微妙に違うのね」
寝物語に妻は言い始めました。
妻は私と結婚する前に2人の男性と付き合っただけで、そう性体験が多いわけではありません。
「どういう意味?」
「うーん、例えば体位なんか、何十通りもやる人って滅多にいないでしょ、パターンはだいたい同じよね。ただ、同じ体位でも相手によって微妙に違うのよね、当たり前かもしれないけど」
妻がいよいよセックスの中身を言い出したので私はドキドキしました。
「ふーん、でもよく分かんないなぁ」
私はとぼけました。
すると妻は私の横顔をチラッと見て、
「彼の場合はね」
と、私を奈落へ突き落とすような話しを始めたのです。
「彼の場合はね」と口を開き始めた妻の話の内容は、結論を先に言いますと、男(もう「愛人」と言ったほうが適切です)のペニスは私より太くて大きい、ベッドのテクニックも私より上、持続力は私より数段上、というものでした。
敗北感がどっと押し寄せてきました。
私と同じような体位をとっていても角度や強弱のテク、また、太さに差があるので受ける感じが違うと妻は言うのです。
そして次のようなことも言いました。
「彼はいつも灯かりをつけてするのよ。顔がよく見えて反応がよく分かるって。わたしの足の間に体入れて、両手でわたしのももを押さえて、見ながらするのが一番好きみたい。『こうするとよく見える、これが一番興奮する』って」
私はうめきました。男は、自分のペニス
が妻のおまんこにズボズボ出たり入ったりしているところを、じっくり眺め心ゆくまで楽しんでいるのです。
 
私は敗北感に打ちのめされて、この苦しみから逃れるには自殺するか、妻と愛人を殺すか、どちらかしかないとまで思いつめた時期がありました。
結局そうしなかったのは、私が「小心者」であり「いつも体面ばかりを取り繕う」人間だったからです。
妻に「愛人」を持たれた「小心者」が生き延びる術は、「マゾ男」に徹するほかなかったのです。
愛人とデートを重ねる妻が変わったのは、おしゃれよりも何よりもセックスそのものでした。
セックスの中身を告白した妻は、気が軽くなったのか、私とのセックスでも大胆にその変化ぶりをさらけ出すようになりました。
妻の喘ぎ声は、今までは漏れる声をこらえるという感じで、その慎ましやかな乱れ方が私の好みでした。しかし、やがて私たち夫婦の寝室に「ああん、いやいやいや、ゆるしてゆるして」などという喘ぎが響くようになったのです。
愛人が妻のからだを「改造」しているのは間違いありません。
新しい性感帯も確実に開発していました。私とのセックスでは到底考えられない部位で、妻が激しく反応を示すことがたびたびありました。
そりゃそうです。結婚生活を10年もやっていれば「女房の性感帯なんてもう開発し尽くした。なにも残っていない」と考えるのが普通の亭主です。女房の方だってそういうものだと思っています。
ところが男が変われば別のセックスをするから、違う性感帯を発見するものなのです。
妻は背中に回した指の爪をたてたり、足や腿を粘っこく絡めてきたり、陰嚢を舐め上げることまでやるようになりました。絶頂近くになると一段とよがりだし、腰をぐいぐいと押しつけてきます。
愛人は明らかに私の妻を淫乱に仕込んでいるのです。
男の足元にひざまずき男の陰嚢を舐めさせられている妻の姿を想像すると、私のペニスは涎を垂らしてしまうのです。
寝取った男にすれば、他人の妻に亭主の知らない癖をつけ、自分好みのオンナに仕込んでいくなんて、これにまさる男冥利はないというのでしょう。
男はますます大胆になり、キスマークと分かるバラ色の斑点を妻の乳房や太股に刻印して、亭主のもとに返してきました。その斑点に唇をつけると妻は苦しそうにイヤイヤしました。
情けないことに、そうした妻に私は勃起してしまうのです。