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読まれることのない手紙

どうか君よ、後悔してください。
わたしと付き合っていたこと。
もっとああすればよかったと、もっとこうすればよかったと。

後悔してください。
わたしを多少なりとも好きになったこと。
こんなはずではなかったと、こんなに思っていたはずではないと。

後悔してください。
わたしと言う存在を側に置いていたこと。
ひどい女であったと、なにがよかったのだろうと。

最低な女だと罵ってくれてもいい。
弄ばれたと嘆いてくれてもいい。

ただ、好きではあったのだと。
好意がなかったわけではないのだと。
それだけは認めてください。

そして、忘れないでほしい。
憎んでもいい。恨んでもいい。
ただ、忘れることだけはしないでください。

無駄であったと、間違いであったと思ってくれていい。
ただ、それでも良かったと、まったく幸せでなかったわけではないと少しでも考えてくれるのならばそれでいいのです。

いつか、あの時はと笑って話せるようになりたいと思います。
お互い幼すぎたと、素直に認められるようになればと思います。

誰のせいにすることもなく、いろいろの事象をそのままに受け入れられるように。
理由付けも必要のない、ありのままの姿を認めることができるように。

そうすればきっと、わたしたちは好きあっていられるでしょう。


ただわたしは、それでもやはり最低な人間であります。
どんなに弁明したところで、その事実にかわりはありません。

わたしがどれほどの裏切りをしたのか、君は気付いてすらいないでしょう。
それすらもわたしの罪であります。

そして罰は今です。
なんて緩やかに過ぎる罰であるか。
それは君の優しさであり甘さであり愚かさであり、つまりは君の罪であります。
そして罰は過去です。


わたしは既に、次の罪を犯そうとしています。
わたしはなにせ、懲りない奴なのですから。
許してくれるな、このわたしを。
忘れてくれるな、あの日あの時を。
そんなことをした日には、きっとわたしは君を軽蔑する。


わたしはただ、いつだって思われていたいのです。
だからこそ、許さないでください。忘れないでください。


それがわたしの最大のわがままであります。


こんなくだらない文章を書きながらも、わたしはしかし、好調であるよ。
どうか君も、お大事に。

わたしという存在を証明するひとりである君に感謝と愛情を表して候。

四月十五日



やさしさや快感を与えてくれる相手に
愛を感じ心をひらくとするなら
人から愛されるのはたやすいんじゃないか
と ひとりの僕は考えた

銀色夏生『君はおりこう みんな知らないけど』
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