「言葉だけじゃ足りないのは、人間だからだよね」
夏休み最終日。
近くの川で線香花火をした。
「…」
僕は黙って彼女の言葉に耳を傾ける。
線香花火に照らされた彼女、皐月の顔がひどく悲しそうに見えた。
「ねえ」
皐月は立ち上がる。
朝顔柄の紺色の浴衣、帯は赤。
「あなたのことが好きでした」

(そして彼女はビンタを残して去った)