「阿伏兎、お客様がいらっしゃるから飲み物の用意してよ」
「客ですか?今日は面会のアポイントはなかったはずですがね」
「いいから、あと#102の案件の書類も用意して」

突拍子もないのはいつものこと。
だが今日は様子が違う。
#102と書かれたファイルを棚から取り出し社長に渡すとパソコンにも#102と書かれたディスクを挿入し立ち上げる。

来客用のカップと菓子を用意したところで部屋をノックする音が聞こえた。


ガチャリと扉が開き受付の者が連れてきた来客を見て俺は持っていたカップを落としそうになった。


「Welcome to Japan.」


社長はデスクに頬杖をつきにこやかに言った。

浅黒い肌に白装束。
アラブ特有の衣装に身を纏ったその人物は、


「社長、あんたやってくれましたね」


今の俺はきっと苦虫を噛み潰したような表情をしているに違いない。
俺の言葉に社長は口角を吊り上げ笑う。


「さぁMr.土方、さっそくだけど、仕事の話をしようか?」