ひとりになったと実感するのは、別れた直後ではなく、その後の食事のときだった。

あのふたりを見送った寂しさは、じわじわとやってきて胸をつくが、毎日のように送られてくるメールとSkype、Facebookでそれは癒されつつある。

あの日、私はふたりを見送った。
娘と、血の繋がってない弟。

きっと、娘は泣いただろう。
弟はさっさと大学職を辞め、活動拠点をパリに移す。娘に内緒で、こっそりとだ。
驚かせて、泣かせたい魂胆がみえみえだった。

今、あのふたりはパリにいる。
恋人たちの都、芸術の母のもとに。

ひとりきりで生きてきたあの子たちは、ようやくふたりきりになれたのだ。
孤独にひしゃげて、ねじまがって、諦めて恨んで生きていたあの子たちが。
まさに、最高のハッピーエンド!だと、思いたい。