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SS-センカ×瑠璃

彼の、石ではない方の腕の掴んだ手に少しだけ力を込める。ぎり、と食い込んだ爪の先では、圧迫された肌が白んでいた。左右の腕で正反対の感触に、なんだか面白くなってその行為を続けた。
面白くないのはそれをされている本人だろう。元来長くない気の彼は、大した痛みではないものの地味に蓄積されるダメージと不定期に繰り返される圧迫感にとうとう声を荒らげた。

「いい加減にしろ。一体何がしたい」
「瑠璃はいつだって答えを性急に求めるよね」
「質問に答えろ。言い訳は聞かん」
「俺の気まぐれ」

ハア、と大きく吐いた息が意味するところは諦め。彼との諍いはよくある事だけど、大抵数度会話を交わすとそれは収まる。主に、瑠璃が折れる形で。
けど、だからといって延々とこの戯れをループさせていい訳じゃない。彼の諦念は、俺の妥協をも意味する。
薄っすらと爪跡の残った肌を撫でながら、ごめんね痛かった? と問う。いや、と返す答えは嘘では無いだろう。だけど俺が付けたこのキズアトは、なんとも生々しい。魔物に噛み付かれるよりも、魔法の渦に飲まれるよりも、ニンゲンが付けたキズってのはこんなにも醜いんだ。

「ごめん、瑠璃」
「だから、別に痛みは」
「君の血が見たかったんだ」
「は?」

俺の発言に目を瞠る彼の腕を何度も何度も撫でながら、俺はそこから目が離せない。白い肌、僅かに鬱血した跡。
この薄皮一枚の下には、俺と同じように血が流れているんだ。それは、生きているという証。

「でも、きっと瑠璃の血はキレイだよね。それこそ宝石みたいに、キラキラ光り輝いてるんだ」
「……戦闘中に何度も見ただろう。俺の血は赤い」
「じゃあ、ルビーみたいなやつだ。それか、確かブラッドストーンって宝石、あったよね?」
「……ルーベンスに怒られるぞ」

クスクス、笑って俺は彼の二度目の溜息を受け止めた。
冗談というか、喩えというか。単なる戯れだったんだよ。そう嘯きながら、俺は笑って言う。目を細めたのは、それ以外に眩しさからだ。

「なんにも穢れていない、まっさらなキミだってことさ」

生まれ落ちたばかりの無垢な魂。稚児のように世間知らずの君。珠魅としても若く、心としても幼い。
そんな君を汚したのは、俺だ。

「………」

この、キスの意味を。この先に待つ行為を。それらが持つ、情愛を。

大人しく俺の唇を受け止めた体が、殆ど無意識に力を抜いた。パタリと床に落ちた腕を拾い上げ、俺は彼に呼びかける。

「ベッドの方、行く? それとも、此処でする?」

絡み付いた腕が、体を引き寄せる。耳元で囁いた言葉は――。



☆―――――
長い…(´・ω・`)
血の話、をしたかっただけ。

センカが瑠璃の血が綺麗っていうのは、アイドルはう○こしないって信じるファンと同じ感覚っていうのを言いたかっただけ。

SS-風璃と詩音

ラルクと少し遠出をすることになって、帰路に着く頃にはすっかり日も暮れてしまっていた。コロナたちには夕飯までには帰ると言ってしまったけど、心優しい彼女らのことだから、もしかしたら僕の帰りを待っていてくれてるかもしれない。少し申し訳なさを感じながら、足を早める。
けれど此処は灯りの無い街道で、少なからず魔物もいる。唯一の光源は空に浮かぶまん丸の月だけだ。今日は随分月明かりが眩しいお陰で、足元には僕の影をくっきり落として一寸先程度なら見通せた。それでも夜の魔物の世界では心許無いから、僕は急ぎつつも警戒を怠ることはできない。

「夕飯、何かなぁ。ちょっと涼しくなってきたから、夜はあったかいものがいいなぁ。あと、デザートがあればいいなぁ」

わざと声に出したのは、闇に飲まれてしまいそうな不安を掻き消すためだ。真っ暗闇の中では人間はとてもちっぽけで無力だから、誰しも孤独に押し潰されてしまいそうになる。
特にあの子は夜が嫌いだったな、と心に過った優しい新緑に心を少し和ませたところで、僕はぎくりと足を止めた。道の向こうから、ぼんやり浮かぶ灯りが近づいてくる。商人なら荷を引く馬車の音がしただろう。魔物なら夜目が効くから灯りなんて必要ない。とすれば、一番警戒すべき旅の者か。
旅人は必ずしも常に此方の味方ではない。時には魔物よりも残忍に裏切り、牙を向く。この世で一番怖いのは魔物でも幽霊でもなく、ヒトなんじゃないかと、奈落で様々な魂を見続けてきた僕は思う。

「え……あれっ」

しかし、近付いてきた相手の姿が月灯りの下に晒され、僕は拍子抜けしてしまった。今にも駆け出そうと腰を低くした姿勢のまま、相手を凝視する。
だって、それはついさっき脳裏に思い浮かべた人物で、こんな夜の世界は苦手としていた、僕の中ではいつまでも小さな少女。

「……お帰り、風璃」
「た、ただいま、詩音」

自らが掲げるランプの暖色の中で、彼女は少し首を傾げて無表情で言った。
僕は面食らって二の句が継げない。そんな僕に不思議そうにしながら、詩音は隣に並ぶ。行こう、と言うように僕の袖を引いて、二人並んで再び岐路へとついた。
少し歩いて、ようやく僕は我に返って詩音に問うた。

「えっと、どうしてこんなトコにいるの? バドたちと留守番してたんじゃなかった? あ、夕飯が待てなかった? 先に食べておいてくれて良かったのになぁ。ちなみに食後のデザートはあるかな? もちろん甘味だよね?」

けれど、どうしても落ち着ききれずに矢継ぎ早に問い質すようになってしまった。沈黙が落ちると、なんて顔をすればいいか分からない。暗がりで視界不明瞭だけど、隣を行く者の姿くらいは分かるだろう。
僕は空に瞬く星を見上げながら、詩音は行く先を気を付けるよう地面へと視線を落として。

「バドとコロナには、先に食べておくように言ってきた。バドが空腹で死んじゃうって、サボテンをかじり出しそうだったから」
「……それ、バドの口の中の方が危なそうだね」
「ちなみに今日の夕飯はクラムチャウダー。私が、ポルポタまで少し出掛ける用事があったから、市場で。デザートはスズブドウのムース。コロナが風璃用に砂糖多めのホイップクリームを作ってた」

詩音は淡々と、僕の問い一つ一つに丁寧に答えたくれた。その内容は碌に頭に入ってこなかったけれど、僕は生返事をして頷いた。
やがて街道の向こうに人里の灯りが見え始めた。ドミナの町まで来れば、マイホームは近い。この夜行が終わってしまう。気まずい沈黙よりも寂しさの方が勝って、僕はさっき言葉にできなかった問いを口にすることにした。

「……ねえ、どうして一人で、こんな所まで来てくれたの?」
「……?」
「だって君は、暗がりが怖いのに。こんな夜の、灯りのない街道までよく」

子供扱いしないでと、怒られるかもしれない。彼女はもう独り立ちの出来る年頃なのに、僕はどうしても子供扱いしてしまう。それだけ、大切なんだ。
けれど詩音は怒ることも呆れることもなく、それどころか少し笑んで、答えた。

「だって、今日は月がまぶしいから」
「………」
「太陽よりも優しく、儚い明かりだけど。今夜みたいな夜は、私だって行けそうだって、思ったの」

それと、と彼女は少し迷って。

「――貴方が居るから。ひとりじゃないって、思えたの」

照れ隠しのように、詩音はそれきり再び足先を見て黙りこくってしまった。ランプの灯りじゃ、彼女の顔の赤さは知れない。常の僕なら、歓喜に打ち震えて叫ぶか、だらしのない顔をして詩音に叱責されるだろう。けれど、月灯りは僕の心をひどく落ち着かせてくれて。だから僕は静かに、そっと、彼女の手を取って。
詩音もその手を振り払うこと無く、少し間を置いた後に握り返してくれた。俯き気味の彼女の顔は相変わらずよく見えないけれど、少し微笑んでいるように見えて、僕も嬉しくなって笑んでしまう。
それきり家に着くまで会話は無く、けれどだからといって二人の間に変な沈黙が落ちるでもなく、僕らは静かに、一つに繋がった影を落として歩き続けたのだった。

「ただいま!」
「――ただいま」

そのまま玄関を開けて、バドとコロナの驚いた顔を見ることになったけれど。



☆―――――
最後力尽きた感。
詩音がランプ持って月が眩しい日に風璃を迎えに行く話。一言で言うとこんな簡潔に終わるのに、なんでこんな冗長になっちゃうんだろうか。

【連載】双子の魔法使い・その後【閃くん交換日記】


ごめん! ぼくったら、すっかりわすれ…てたわけじゃないけど、うん、えーと、ごめん、わすれてました。
というか君のことは、いっしょにくらしてるっていうより、ぼくのココロの中にいるひと、みたいな感じだったから。

訂正します。ぼくと、双子と、きみ、四人ぐらしが始まります。

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【連載】双子の魔法使い【閃くん交換日記】


・主人公は閃くん♂
・無謀にもストーリーを追う。
・「続きを読む」で交換日記


☆―――――――

双子のカボチャが町はずれでケケケ!

さいしょ、何のことだかわからなかった。ぼくだってそうだ。
きのうリュオン街道からかえってきて、つかれたからゆっくり休もうとフトンにもぐっていたら、いきなりげんかんのドアをドンドンドン! ってたたかれた。
びっくりしたよ。トウゾクかと思った。
でも、そっと見てみると、ちがった。鳥のユウビンヤさんがいたんだ。
おどかさないでよーって思ったら、ユウビンヤさんはもっとおどろくことを言った。
「ドミナの西の方に、ヘンなカボチャが大発生したの! きっと悪ぅーい魔法使いが、カボチャの大軍で私達をミナゴロシにする気よ!」
タイヘンだ! ユウビンヤさんはお仕事ができないことをシンパイしてたけど、わるいマホウツカイがカボチャでセカイセイフクなんて、もっとタイヘンだ!
つかれてるのもわすれて、ぼくはドミナの町へいそいだ。こうしてるあいだにも、カボチャがセカイをおおっちゃうんだ!

ぼくが来たからにはごあんしんを!
ドミナの町について、不安そうな人たちにそう言おうとしたんだけど、あれれ、なんだか町はいつもどおり。
ブキヤの奥さんもあいかわらず娘さんとダンナさんのことをグチってるし、ダイドウゲイニンはダレも見てないのにゲイをしている。
あれあれっ、悪ぅーいマホウツカイは? セカイのキキは?
とりあえず、ユウビンヤさんの言ってたばしょへ向かう。えーと、ドミナの西の方?

「ケケケケケ!」
ドミナの西の方、についたしゅんかん、そんな声がきこえた。ぼくの目に飛びこんだのは、一面の人面カボチャ! それから、そのまんなかでフライパンやホウキを振りまわしている、耳のとがった子ども!
お、お前が悪いマホウツカイだな!
「ちっがーう! このオレは大魔法使い…になる予定、の、バド様だ!」
さてはこのカボチャでセカイを滅ぼすつもりだな!
「そーだ! このカボチャで世界を支配してやる!」
な、なんてことを…!
「お前もカボチャにしてやろうか!」
世界がカボチャに…ドミナがカボチャに…ニキータたちがカボチャに…。
「……あのー、そのへんでいいですよ。バドの茶番に付き合ってやるの」
いつの間にか、ホウキをもった女の子が冷たい目でぼくらを見ていた。って、え? チャバン?
「あらら。真性さんでしたか」
?? 女の子の言ってることはよくわからないけど、このままだまってカボチャに支配されるつもりはない!
「あー、ダメだこりゃ」
頭をかかえながらホウキをかまえる女の子と、ノリノリでフライパンをつきつけてくる男の子。二人の子どもと、いざ、世界の命運をかけた一大決戦!



マホウツカイっていうのは、その名のとおりマホウを使って攻撃してくる。マホウっていうのの原理はぼくはまだよく分からないけど、マホウガッキっていうものを使って、セイレイに力を貸してもらう、っていうことらしい。
ニキータやダナエ、これまで戦った魔物はマホウなんて使ってこなかったから、初めての戦いは少し苦戦した。けれど、さいごはマホウを使おうとするタイミングを見たり、それをさえぎったりっていうテクニックを使って、なんとか勝つことができた!
これで、世界の平和は守られた…。
「すげぇ! オレを弟子にして下せぇ!」
倒れていた男の子がガバッと身を起こして、そんなことを言ってきた。
デシ? デシって、なんだろう。ぼんやりしていたら、女の子の方がまた呆れたようにこっちをみていて。
「どうもすみませーん。私たち、双子の魔法使いなんです。アッチがバド。私がコロナ。バド、バカなこと言ってんじゃないの」
「バカとはなんだ! オレは本気だぞ!」
「だってアンタ、よりにもよってあんな人…もとい、ハンマー振り回す人の弟子になって、なにを学ぶっていうの?」
どうやら弟子というのは、なにかを教えてもらう立場のヒトということらしい。子どもたちはまだ二人でやいのやいのもめてたけど、ぼくは男の子…バドに向かっていいよと答えた。バドは、にっこり笑ってとびはねる。女の子、コロナの方はなぜだか再び頭をかかえてしまったけど。
「あわわわわ。なんて心の広いと言うか、なんというか…」


それからぼくたちは、三人仲良く手をつないで家に戻った。弟子っていうのは、師匠(この場合ぼくのこと)のもとにイソーローするのがフツーなんだって(そうバドに言われ、コロナはなんとも言えない顔をしていた)。
今日から、家のなかに人がふえます。ぼくと、双子と、三人ぐらしです。なんだか、楽しそうなよかん!


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【連載】ガイアの知恵【閃くん交換日記】

・主人公は閃くん♂
・無謀にもストーリーを追う。
・「続きを読む」で交換日記


☆―――――――


そういえばニキータといっしょにリュオン街道をあるいてると、またあたらしいヒトにであった。
ニキータみたいなケモノの耳と、シッポの、おんなのひと。あとで知ったけど、ダナエっていうらしい。
ニキータはダナエにもなにか売ろうとするのかとおもったけど、なぜかカオをまっかにしてモジモジして、かと思ったら、いきなりたくさんしゃべる!
けどダナエは、ぜんぜんあいてにしてなくて、ずっとケンジンがどうとか言っていた。

ケンジンっていうのは、本によると、この世のコトワリを知るモノ。よくわからないけど、なんでも知ってるすこいヒトなんだろう。

そして今日、ドミナの町でぼくはダナエとまた会った!
「死んだら、タマシイはなくなると思う?」ダナエはそんなことをきいてきた。タマシイって、ヒトのココロ? 死んじゃっても、ココロまでなくなったりなんかしないんじゃないかな。
このあいだニキータとでっかい魔物と戦ったとき、死にそうって思ったけど、それでぼくのココロまで消えちゃいそうって思わなかった。たとえ死んじゃっても、ぼくは負けるもんかってココロで戦いつづけようと思った。
そう言ったら、ダナエはちょっと安心したみたいに、「そうでしょう? いままでどんなケガをしても、タマシイまでは傷つかなかったもの」そう、ぼくとおなじようなコタエを出した。
「私、ガイアに会おうと思うの」ガイアは、ケンジンのひとり。リュオン街道にいるらしい。だからダナエはあの時、リュオン街道にいたのか。でも、ひとりで行くゆうきがなくて、まよってたんだって。
ぼくもいっしょに行くよっていったら、ダナエはありがとうって言ってくれた。うれしいコトバだね、ありがとうって。


ガイアのいるのは、ニキータと向かった道のとちゅうにある、わかれ道をはんたいに行った先。
ダナエも、ニキータと同じようにいろんな話をしてくれた。ダナエはギョウショウニンじゃないから、もちろん、モノを売ることはなかった。
ダナエはガトっていう町のソーへーをしているらしい。ガトはジインっていう大きなイエのあるところで、シサイってヒトが町の人たちを守ってるんだって。シサイって、すごく強い人なんだろうな! って言ったら、ダナエは違うって言った。
「マチルダは、ココロは強いけれど、ほんとうはか弱い少女のような子なのよ。小鳥のようにさえずって、花のように咲きほこって、野原をかけ回るのがとっても似合うの。……そんなこと、もうできやしないけど」シサイってヒトは、ダナエの大切なトモダチなんだって。そしてダナエは、シサイが大好きなんだ。けど、かなしいんだ。
好きっていうことも、かなしいっていうことも、ぼくにはまだわからないけど、ダナエがとっても苦しそうだから、たすけてあげたいって思った。
元気だしなよ! ってハンマーで背中を思いきりたたいてあげたら、ダナエはふっとんでいった。そして、おこられた。
元気がないときにキアイを入れるほうほう、タマネギにきいたんだけど、なにかまちがってたんだろうか。
ダナエには、ゴメンってあやまっておいた。まだおこってたから今日のオヤツあげるからって言ったら、なぜかわらわれた。
? よくわかんないけど、わらってくれたからいいや。

でっかい! ガイアを見たかんそう、そのひとこと!
ぼくのイエより、ニキータと戦った魔物より、ずっとずっと大きい! 岩のカベに、目と口があって、ぼくらをのせた手(これも岩)がゴゴゴってもちあがって、びっくり!
もっとおどろいたのは、そのジンメン岩がしゃべったってこと!
『こんにちは、子どもたち。私でわかることなら、何でも答えよう』
声っていうか、あたまにちょくせつきこえるような、ひびき。
どうやったらそんなにおっきくなれるの、とか、おなかはすかないの、とか、あめのひはさむいですか、とか、ぼくがいっぱいきくと、ガイアはひとつひとつに答えてくれた。やさしいヒトだ。
でも、ぼくもガイアみたいにおっきくなれるの、とか、つよくなれるの、とかきくと、ガイアは『それはあなたが決めることです。あなたの道をあるいてください』っていって、答えてはくれなかった。
ケンジンも、ぜんぶ知ってるわけじゃないんだなぁ。

『さあ、あなたも』そういえば、ガイアに会いたいって言ったのはダナエなのに、ダナエはまだなにもきいてない。するとダナエは、またかなしそうなカオをして。
「私の友達が悪魔の呪いを受けて命を落としかけています」「助けてあげたい…私はどうすればいい?」
さっきのシサイの子だ。ダナエが大好きな、大切なヒト。
『その友達が望むことをしてあげればいい』「いいえ、彼女は私に何か求めたりしないの。彼女はそれを運命として受け入れる気なの」『ならばそれを受け入れなさい。あなたはその人の言葉を理解しましたか?』「理解なんてできない! あきらめるなんて、弱い心から生まれてくるものだわ! 彼女は私よりずっと強い心を持っていたのよ! …なのに、変わってしまった。今の彼女は、もう今までの彼女とは違うの…」
しょうじき、ダナエたちの話はサッパリだった。でも、ダナエがまたすごくくるしそうなのはわかった。
ダナエをくるしめないで、そう言ったら、ガイアは目をほそくして、ぼくを見て、ダナエを見て、『人は自分を自分で決める力を持っている。その人の話に、耳を傾けてみなさい』そう、やさしく言った。
「もうすこし、冷静になってみます」ダナエはガイアと、ぼくに「ありがとう」とうれしいことばをくれた。
こんなことばをくれるダナエなんだから、きっとシサイの子をたすけられるよ。そう言ったら、ダナエはわらった。うん、そのカオが、いいよ。

シサイの子、げんきになったらいいね。さよならするときにそう言ったら、ダナエはなぜだか少しおどろいて、「そうね…。いつかアナタに会わせてあげたいわ」たのしみだな。うん、たのしみにしておくよ。

そしてぼくらは、えがおでわかれた。


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