今日、ゴマはある試みを決意しました。
それは……
『自分の家から学校まで自転車で行っちゃうぞ★』
………………。
さて、普段、ゴマはどうやって通学しているのか説明致しましょう。
7時40分に家を出て、電車に乗り込み、8時20分頃に学校へ着きます。友人と一緒に行ってるので一人で行けば30分以内で着くでしょう。
学校まで乗り換えを含め、10駅あります。ゴマはハンドルを強く握り締め、ペダルを思いっきり蹴飛ばすと全速力で学校まで向いました。
己の勘と路線を沿ってぐんぐん先へ進んでいきます。
そして、40分後。
「着いたぁぁぁぁあ!!」
ゴマの歓喜が夜の学校前に響きます。そうです、ゴマは誰に頼る事無く学校まで辿り着くことが出来たのでした。
なぜか学校前の広場ではスケボーの練習をしている男性が一人。そして、学校周辺を自転車でコキコキと乗り回す不審者が一人(ゴマ)。
ゴマはこの感動を誰かに伝えるため、友人に電話を掛けます。この時、時刻は夜の8時半でした。
友「どうしたの?」
ゴ「ね、聞いて!うち、今、学校にいるっ!」
友「何で?」
当然のごとく不思議そうに尋ねてくる友人。
ゴ「自転車で来たのっ!」
友「はぁ?」
おや、意味が分かってないようですね。
ゴ「だから、家から学校まで自転車で行ったのっ!」
どうだ、すごいだろっ!
ゴマは自慢気に言い放ちます。すると、友人は何を思ったのかこんなことを言いました。
友「え、電車の中に自転車持ってたの?」
全然、違う。てか、ハズいわ、それ。
その後、友人も分かってくれたようでゴマは延々とこの感動を語り出しました。最後の方は友人もうんざりしたのか適当な返事してきやがります。適当な別れをし、ゴマは自分の家に帰ります。勿論、自転車で帰ります。
ですがこの時、ゴマは重大なことを思い出しました。
帰り道、覚えてない!
ただ今の時刻、8時45分。ゴマは家に10時ごろには帰らなければいけません。行きに40分掛かったので時間は大丈夫だと思ったゴマは己の勘で帰路を進みます。
すると、見知らぬ場所へ到着しました。首を傾げるゴマ。
何処だ、ここ。
不安が募ります。一先ず、近くに歩いている女性の方に聞いてみましょう。
「A駅に向かいたいんですがこのまま行けば行けますかね?」
A駅とは学校の最寄りの駅の隣の駅のことです。すると。
おばさん「え、逆だよ」
いやはや、一瞬時が止まりましたね。しかし、こちらのおばさん、ご親切に途中まで付き合ってくれました。
おばさん「このまま真っすぐ行って左に行けばA駅に着くよ。左に曲がんないとB駅に着くからね」
おばさんはある程度ゴマに付き合ってくれるとその後の道筋を説明し、どこかへ去っていきました。
散歩の最中、どうもありがとうございました。
ゴマはおばさんに感謝しながらペダルをこぎます。さて、目的地のA駅には着くのでしょうか。
10分後。
「ここB駅だー!!」
思いっきり間違えていました。いや、左に曲がったはずなんですが何故でしょう。
B駅とはゴマが乗り換えの駅の線路沿いにある駅です。仕方がないのでB駅の路線に沿って自分の駅に向かいましょう。
まずはB駅の隣のC駅に行きます。すると数分後、どっかの線路がゴマの目に留まりました。たまたま、電車がゴマの前を横切ったので何処行きか見てみましょう。もし、ゴマの最終目的地、O駅が表示されていたらビンゴです。
「ち、違う…」
ゴマは弱々しい声を漏らします。ゴマが辿り着いた線路は探し求めていたのと全く別の線路でした。ここは近くに歩いているお姉さんに道を聞いてみることにしましょう。
ゴ「あの、すみません。ここって真っすぐ行けばC駅に着きますか」
行けないと分かっていても敢えてこの問いをお姉さんにします。すると、お姉さんはビクッと肩を揺らしてゴマを見据えます。人通りが少なく、時間帯も遅いのできっと不審者だと思ったんでしょう。
しかし、振り向いたら汗だくの女が自転車に跨がっていたわけです。
お姉さん「え、C駅ですか。C駅はえっと……」
お姉さんは行き方が分からないようで言葉を濁しています。
お姉さん「まず、この線路はC駅に行かないんですよ…」
お姉さんは困ったようにそう言います。すると、何を思ったのかゴマは
ゴ「ですよねー」
と笑顔で同意を示したのでした。初対面の人に何故か親しげなゴマ。
結局、お姉さんは道を知らないようなので別の人に聞いてみましょう。今度はカップルとそのお母さんみたいな組み合わせの3人組です。
ゴ「あの、C駅ってどうやって行けばいいんですか」
ゴマの問いに彼氏さんが口を開きます。
彼氏「どうやって行くんだ?」
彼女さんらしき人に尋ねています。彼女さんは道を知っているらしくゴマに丁寧に教えてくれました。
教えてる最中、一台のバイクが猛スピードでゴマ達の近くを横切りました。すると、
「ほぉぉぉおっっっ!!」
バイクに向かって何故か叫ぶ彼氏さん。どうされたのでしょう。
彼女さんの分かりやすい説明も終わりC駅に向かおうとするとお母さんらしき方が声を掛けてきました。
お母さんらしき方(以下、母)「どこに行きたいの」
ゴ「O駅です」
母「え?O駅?」
彼氏「どうやって来たの?」
彼氏さんの問いにゴマは苦笑を漏らしながら答えます。
ゴ「電車(の路線に沿って)来ました」
彼氏「電車に乗って来たのっ!?」
しまった。言葉が足りなかった。
瞬時にそれを察知したゴマは訂正の言葉を言い放ちます。
ゴ「すみません!冗談です!」
彼氏「え、冗談?」
何故、冗談なんだ。
どうみたって冗談を言う状況じゃないだろ。
当然、尋ねてきた彼氏さんは眉をひそめます。この場に居づらくなったゴマは逃げるようにして3人組に別れを告げました。
その後もカップルや親子、学生に道を尋ね、目的地O駅に着いたのは10時過ぎでした。行きの約2倍の時間を帰りに所要したのです。久々に自分の神経を疑った一日でした。
もう二度とこんな馬鹿なことやんないぞー★
そして、ご親切に道を教えてくれた方々、ありがとうございましたっ!