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day and night(四六時中)




お題『半同棲』









玄関の鍵が開いている。
一瞬自分の出かけ際の不用心さにヒヤリとしたが、すぐ視界に入った自分のものと違う、けれどもよく見慣れた靴に、泥棒などでは無いことを理解する。


「来てたの」

部屋に入ると、予想通りのそこに居た靴の主。
あぁ、と小さく返事を返されただけで、視線は手元から外れなかった。

「何してるの」
「PSP」


あぁ、あれかな。
ここ最近、ずっとやってる何とかってゲーム。
内容は前に聞いた気もするけど、解んなくて忘れた。

そんな事をぼんやり考えながら自分のコートを脱いで、手に持っていたスーパーの袋の中身を冷蔵庫に放り込んだ。

今日の晩ご飯は2人分になるな。
そんな事を頭の中で考えた。

でも問題は無いだろう。
今日買ってきた材料も、残念ながらちょうど2人分あるのだから。



食材を冷蔵庫に入れ終わると、台所からソファのある場所まで戻る。
ソファを陣取る人物の視線は相変わらずPSPに向けられたままだったから、自分はソファを背にフローリングに腰を下ろし、しばらくその姿を見つめていた。
すると視線に気づいてか気まずくなってか、いつの間にか電源を切ってこちらを見ていた。
相変わらず、愛想の無い顔。



「来週末、行きたいとこあるか」
「来週?」

はて、来週は特に予定も無かったはずだが。
デートの誘いか?
……にしては、何かが違うような。


「2日過ぎるけど、その日以外は当分時間が取れそうにないんだ」


あぁ、誕生日か。
カレンダーにあるベタな赤まるの印を見て、ようやく思い出した。

自分の部屋のカレンダーに自分の誕生日を書き込んでいるのは馬鹿みたいだが、生憎これは自分のした事ではない。
おそらくは、この半同居人状態の人がしたのだろう。

自分がカレンダーの印に違和感を感じなかったのが、なんだかこの人がこの部屋に馴染んできているようで少し気恥ずかしい。


「行きたい場所かぁ」
「その日なら、どこへでも連れてってやる」

朝から迎えにきてやるよ、なんてニヒルな笑みを浮かべて。
似合っていないその表情に笑いそうになったけど、不覚にも嬉しいとか、かっこいいとか。
思ってしまった自分が恥ずかしい。


「じゃあ、当日うちに来てよ」
「……?あぁ、それは」

当然だろう、と言わんばかりの表情。
うちに迎えに来てから、どこへ行きたいか。
それを言え、遠慮するな、とせかしてくる。

「うちに来てくれるだけで良いよ」

そう伝えれば、頭の上に疑問符を並べて、怪訝そうな顔をされた。


「誕生日だからって外に出なくたって、一緒に居れるだけいいから」

会える回数は多くとも、共有する時間はいつもそんなに長くは無い。
だからその日は1日、一緒にゴロゴロしてよう?
その旨が伝わったのか、面食らった顔で頷いてくれた。



「わかった」











好きっていう言葉とか、愛の大きさだとか、そんなものはあまり貰った事がない。
けれど、それが自分たちには一番合っていると思うから。






(私は四六時中、あなたの事を考えてる)


(あなたも、そうかな?)






―――――
突発更新です。
お久しぶりすぎますね。
すみません切腹します(←やりすぎ)

設定は、大人な2人のある日の一コマ。
同棲してないのに相手が部屋に居る事に慣れてしまってる、ってのが書きたかったんです(見事玉砕しましたが)

何だか知らないうちに誕生日とか出しちゃったけど、キャラ設定が弱くて微妙な出来になった…。
もっと精進します…。
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