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可愛いよ

一門は、少し落ち着いた。
筆頭が去り、人も二名ほど減ったから、今後どうするか(存続か脱退か解散か)
残った十名弱に順に聞くと、おおよそ「存続」との答えだった。
だからこの一門に残った人は、大なり小なり、この一門を好きな人。
好きだって分かった。
分かったから、嬉しかった。

好きなら好き、嫌なら嫌と、分かれるのは安心すること。


「一門に関して、集まって話しましょう」と提案され、徒党組んで話すのかなと思ったら武家屋敷に呼ばれた。
「居間で待ってます」と言われて、もうその時点で吹き出しながら「居間」を探すのだけど、迷路屋敷なの。居間行けないの。
行き止まりのへんな小部屋、壁じゅうにオカメ面が貼ってある。

たどり着いた「居間」は、中央の机に食べ物やお花がたくさん置いてあって、そのまわりをぐるっと囲む座布団の上に、その人はわざわざ所作「座る」をして待っていた。

「ことりさん、2位。食べ物たべると何か起こるよ」

ねぇ可愛すぎなの。


大体、武家屋敷に集まるとか、久々だよね。
彼にそう言うと、

「新鮮だったしょ?」

顔の知らないその人の、得意げに少し笑う顔が、見えた気がした。

流れ星

一門はすこし人が減った。
なにやら揉めて減った。

人それぞれ、個性、特性があるけれど
なにかが物凄く綺麗にパズルみたいに合致して、揉め事になった気がした。
パワーバランスとか、影響の仕方とか
なにか、一片も不要なものがないくらいに。

すごいなと思いながら、最終的には五人で25時から28時過ぎ(そんな言い方があるのかどうか)まで"話し合い"をした。

知り合って1ヶ月そこらの、いい大人、社会人とは思えないような熱量で。
ほとんど喧嘩腰、一触即発、泥仕合、水掛け論。
深夜特有の、頭は冴えるのに、時間と空間がいつものところから隔離されて、ゆるく固まる感じ。
話し続けてもろくな結論が導けそうにない、というあきらめと決めつけが、五人全員の中にあった。
徒労感で満たされたゼリーみたいな空間。

なにがしたい、なにを知りたい、なにを決めたい、っていうのが終始見えなかった。
もうこの人と話すことは何もない、とお互いが思いながら、それなのにすごい熱量で三時間喋ったの。

すごい。信じられない。普通はこんなこと起きない。
めちゃ胃が痛かった。

そのあとは
彼らは抜けて行って別一門を作り、でもその中でまた揉めて、一瞬で一門は解体された。
それが数時間のあいだに起きた。
流れ星のような出来事。


でも、これでよかった気がする。
終わってほっとしてる。何週間も揉めていたもの。
なに考えてるか分からない人たち。

ほんとう、びっくりするくらい、みんなそれぞれ大事にしているものが違ったの。価値観が。
胃は痛かったけど、惹かれた。

胃が痛くなるくらいの、ひりひりはらはらするものが、わたしは好き。

覚醒皆伝

「喋りたいがためにインしています」だったけど、ゲーム自体もだいぶ楽しくなってきました。

馴染んできた。
操作とか言葉とか思い出してきた。
週の始まりは、月曜じゃなく水曜だとか。

インして放置じゃなくて、覚醒消費とか…倉庫整理とか、お供の餌やりとか。
すこし。

それで、それでね
昨日知人に技能覚醒の話したら「勇士の目録より前のやつは埋まってるでしょ?」と言われ
「え?埋まってんの?え?覚醒だよ?…覚醒だよ?」

なんかイベントとか帰参キャンペーンとかで、覚醒がぜんぶ皆伝するアイテムもらったとか

うわー、うわー。
うわーうわーだよ。

埋まっちゃうんだ覚醒。わたし覚醒は結構好きだったのに、埋まっちゃうんだ。

ふた月前に帰参して、勇士の書でレベルが70から75まで一気に上がったときも寂しかったけど、覚醒もなんだ。
覚醒のことはわたし今まで信じてたのに。

覚醒ないんだー
ptしないでイベント待ちしたらいいんだー

なにもーー


九十九や魔導結晶は楽しいけど、知人が作ってくれたやつが結構強くて超えられないし
1000万貫は嬉しいけど、今まで知人たちが寄贈してくれた貫、貯め続けた300万が小さく思えて、金銭感覚狂いそう。
ぱーと使った方がいいっちゃろーけど、使うのが怖い。

覚醒だけは
RMTして廃装備になったとしても、覚醒だけは、リアル充実してない人間のつぎ込んだ時間、年月を裏切らないと思っていたのに。

駅はさんで南北

来月、男友達がわたしの家の近くに越してくる。

彼と知り合ったのは四、五年前で、かつては1km以内の近さに住んでいた。
だからよく食事をしたり、家に行ったり(来ることはなかった)、出掛けたりした。
それから、距離は7kmとなり、会うこともないなと思ったが、不思議と電車に乗って会いに行ったりした。


知り合って間も無い頃、彼はわたしに髪の毛を切らせたがっていた。

わたしの髪を触りながら「ことりちゃん、髪短くしたらいいのに」と言う。
その言い方が独特で、あたかもいいこと思いついたというふうでもあり、さとすようでもあり、毎回同じ口調で随分熱を込めて言うのだけど

「絶対似合う」、まじまじ見ながら、微笑んで。
鬱陶しかった。

苦笑して受け流すけど、2度目に言われたときには「わたしは髪を切るだろうな」と思っていた。
そうしたい、というより、そうなると思った。

べつに喜ばせたかったわけじゃない。
とにかくあの口調。


彼がわたしを、どう思っているのか
考えても分からない。
憎まれているような気も、可愛がられているような気もするし、蔑視されているようにも、何か特別に思われているようにも感じる。

「こんな女だから、付き合わなくてよかったと思っているでしょ」と、からかう調子で言ったとき、思案していたが、返事はなかった。
今はもうお互い結婚している。

カルマ

インしたら、知人から対話

「安土・斬で、帰参者に貫を配ってるよ」

え、誰が?
なんで?
どゆこと?
立て続けに質問すると、カルマみたいな名前の人が、その人の装備をチェックして、帰参者かどうか判断して、何か支援物資をくれる
と教えてくれた。
そしてその人は、箒に跨っているのだと。

箒。そんなグラ、見たことない。
イベントのNなの?
それなら、と思って安土に行くと、そこにいたのはNじゃなくてプレイヤーで、箒に跨ってもいなくて、名前はカルマじゃなくてイデアで
でも私の装備を見て(恐らく)、「それはメインキャラですか?」と訊いたあとに、「ビッグなプレゼント」と言いながら、換金手形を100個くれた。
1000万貫。

なんで?悪い人なの?どうしてお金配っているの?バグなの?消えるの?どうしてなの?

有難う、と言う間もなく、その人はまた次の人にお金を配り、周りの人はそれを欲しがった。
熱気が怖かった。

「どうして、お金配っているの」
と訊くと、「んーぱーっとたまには還元しようかと」と答えてくれた。
還元。
もらったものを、元のところに戻すこと。わたしはその輪のなかに、居ないと思うのだけど。



依然「どうして」と言い続けるわたしに、知人は
「ことりちゃんて、ふわふわしてて簡単に騙されたりしそうなのに、意外とそういうとこしっかりしてるんだね」
と言った。

そうかも知れない。
ディズニーのアリスが冒頭、穴に落ちながらダイナに「大丈夫、心配要らないわ!」と言い放ったような
なんていうの、郷に入っては郷に従え感?
ないよね。
でも、わたしも必ず落ちに行くと思うけれど。


その人のツイッターを見ると、娘が可愛いんだ。
かっわいいんだ、娘。

一門の人に話したら「いいなー」と言い、夫に話したら「1000万貫って、現実のお金でいくらなの?」と言われた。
なんでなんで?
なんでって思わないの?

でも一日経って、わたしも信オンってゲームの中のプレイヤーで、その大きな輪の中での「還元」だったのかなって。
だから、貯めておかずに使うのが正しいのかなと思った。
ツイッター見て、その人は、たぶんいい人だったんだなって思った。
うん。

まだすっきりせんちゃけど。
いつかその人と徒党一緒して、喋れたらいいな。
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ことり
コメント
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そんなキャラいたのー
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キムチうどんの屋敷だ
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