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ループ・ザ・ループ(第五章)

……………………。
仁「はっ!?」
それは寝醒めの悪い悪夢だった。
詩織「あなた、おはよう。ん、どうしたの?そんな寝汗掻いて…?」
仁「いやぁ、何てことないよ詩織。ちょっと悪夢を見てさ。寝醒めが悪かっただけだよ。」
詩織「どんな悪夢を見たの?」
仁「いや、ほんと、大したこと無いって。ほんと、ガキが見るような夢だぜ?」
詩織「…(じーっ)…何か怪しいなぁ…あなた、普段私の居ないところで疚しいこととかしてないでしょうね?」
仁「そんなことしないよ。するわけないだろ?俺はそんなにモテないよ。詩織と引っ付いたのが奇跡的なくらいさ。」
詩織「…本当に?」
仁「ああ、本当だよ。」
詩織「…う〜ん。…まぁ、いいわ。それよりあなた、朝食が出来たわよ。さ、早く食べてお勤め頑張って来て。」
仁「ああ、ありがとう。早速戴くよ。」
詩織「ああ、それとねあなた。今日は町内会の井戸端会議に出席するから、ひょっとしたら今夜は夕食の準備が遅くなるかも知れないわ。」
仁「わかったよ、今夜は何か食べてから帰るよ。」
詩織「ごめんね、あなた」

普段通り、妻と他愛ない日常会話を交わして、俺は妻が作ってくれた朝食を手早く完食した。
そして普段通り洗面所に向かい、歯磨きと髭剃り、洗顔を済ますとクローゼットに向かいスーツ姿に着替えて妻と軽く「行ってきます」の挨拶を交わしたら急いで車に乗り込み、エンジンを掛けて勤務先に向かった。
だが、勤務先に向かう途中に奇妙な違和感を覚えた。
仁「…ん、んん?」
だが、その奇妙な違和感の正体が何かまでは分からなかった。
何か、そう、何かが心に引っ掛かるような感じだ。
俺は正体不明の違和感を気持ち悪く感じながらも職場に向かった。

しかしその奇妙な違和感の正体は、このあと9時間後に判明するのだった。

そう、本当の悪夢はこれから始まるのだった…

To be a continued…

ループ・ザ・ループ(第四章)

詩織の件で聞きたいことがあった俺は、あの事故の一週間後に神様を呼び出した。
仁「神様、詩織の事であんたに尋ねたい事がある。詩織が交通事故に巻き込まれたんだが、あんたあの事故について何か知らないか?」
神様「何の事じゃ、仁。ワシはお前の嫁が交通事故に遇ったとき、近所の公民館に居たよ。証人だっておるぞ?」
仁「だけど神様、あんたあの時確かに俺に「約束事を破った罰を与える」とか言ってただろ?その事と何か関係があるんじゃないか?」
神様(…全てはお前のせい、お前が全て悪い。)
微かに神様はそう呟いた。
神様「とにかく、あの事故にワシが関わっとるかそうでないかを此処で話し合っても時間の無駄じゃ、おとなしく帰るが良い。」
確かに神様の言う通りだ。この一件と神様が関わっているという証拠は何一つ無い。これ以上の追及は単なる水掛け論となり、無駄に時間を消費するだけだ。仕方ないので俺は神様とそこで別れた。そして神様を呼び出した夜の事だった…
俺は自宅のアパートを目の当たりにして驚愕した。なんと、我が家が猛烈な焔に焼かれていた!
その光景は鮮やかな夕陽にも似た烈火の焔の中に我が家が映し出されたかの如くだった。
俺は慌てて自宅アパートに駆け寄ろうとしたが、現場規制を仕切っていた警察官に強く引き留められた。
警察官「ちょっと、旦那さん危ないですよ!」
俺はこんなところで突っ立ってる訳にはいかない!なぜなら、あのアパートには一人息子が留守番している筈だからだ!
だが、俺の必死の抵抗も虚しく、俺は現場の警察官に力ずくで火災現場から引き剥がされてしまう。

ようやく一人息子の近くにたどり着いたのは、自宅アパートが綺麗に全焼してしまった頃だった。俺はその場に膝から崩れ落ち、虚ろな瞳で焼け野原となった我が家をただ呆然と見つめる他なかった…
その時だ、あの男の声を耳にしたのは…
「ふ、完全に焼失するのに意外と時間がかかったのぉ。やはり築40年の激安ボロアパートは燃えが悪いのぅ。」
その言葉を聞いたとき俺は、無意識にあの男に掴み掛かっていた。
仁「…あんた!やっぱりあんたか!!あんたが俺の妻を!息子を!!」
神様「如何にも。これがワシがお前に与える最初で最後の罰じゃよ。そしてお前はこれから、無限の刻の中で永遠の苦しみを味わう事になる…。」
仁「…それは一体どういう意味だ!?」
神様「なぁに、その意味はその内すぐに解る、その内にな。」
神様のその言葉を聞いた瞬間、俺は刹那に後頭部に強烈な痛みを覚え、地面に突っ伏した。
これから一体、俺にどんな運命が待ち受けるのか…
To be continued…

ループ・ザ・ループ(第三章)

神様なる男から多額の借金をして、この僻地で働く羽目になって早いもので約3年の月日が経とうとしていた。
あの日より絶賛社畜中の俺は勤務先に認められ、主任という重大な役職を与えられ、数人の部下を持つようになった。
その甲斐あってか、詩織のご両親にも僅かながら理解を得ることができた。
そんな矢先のことである。
神様から呼び出しが掛かった。
神様「時に仁よ。お前が此処へ来て早いもので三年という月日が流れたな。今までご苦労だったな…もうよいぞ、元の世界へ帰っても。」
仁「いや、待ってくれよ神様!俺にはまだ、やり残した事が…まだまだやりたいことがあるんだ!」
神様「ほう、この世界にまだ未練があると?」
仁「ああ、詩織と式を挙げたい。それから詩織と息子の為に立派な一軒家も建てたい!だから元の世界へは戻りたくない!」
俺のその返答を聞くと神様の表情が途端に険しくなった。
神様「なるほど、噂には聞いていたがやっぱりか…仁、貴様わしとの約束事を反故にしたな!?条件の一つならまだしも、三つ全て破るとはけしからん!お前には罰として、裏切り者に相応しい結末(エンディング)を用意してやろう。地獄などよりよっぽど過酷な結末(エンディング)をな!」
神様は俺にそう吐き捨てていつの間にか姿を消していった。
そしてその一週間後。
俺が職場で勤務していた最中に緊急連絡が入る。
「大変だ東雲さん、あんたの奥さんが交通事故に巻き込まれて重篤だって!」
それを聞いた俺はいてもたっても居られず詩織が搬送された病院に急いだ。
詩織は集中治療室のベッドに酸素マスクを装着された状態で寝かされており、それを一目見てとんでもない状況であることを認識させられた。
(詩織、何でこんなことに…)
その時、神様に吐き捨てられたあの言葉が頭の中で蘇った。
神様(貴様には裏切り者に相応しい結末を用意してやろう。地獄などよりよっぽど過酷な結末をな!)
(これはまさか、アイツの仕業か?!)
後日、俺は真実を知るために神様を呼び出した。

To be continued…

ループ・ザ・ループ(第二章)

俺が神様に紹介された職場に勤めて早いもので、いよいよニ年と8ヶ月が過ぎようとしていた。
この頃になると神様との約束事などうっすらと忘れていた。そしてこの俺にも彼女?恋人?が何となく出来るようになった。
俺の彼女?詩織だが、この娘は結婚願望が強いらしく最近はやたらと結婚の話を詰めてくる。
俺自身としては仕事人としてまだまだ半人前だし、正直まだ他人を養っていく程の月収も覚悟もない。だから結婚する決断は思いきり渋っていたんだが…
また、詩織は良家のお嬢さんでもある。本人はその事実に対しては一切、気にも留めてないようだが、正直俺の方が気にしてしまう。
ご両親、特に親父さんが娘の結婚相手の素性を気にする性格らしいのだ。それもあって俺から結婚の話を切り出すのはかなり躊躇っていた。
だがある日、詩織から衝撃的な事実を告げられる。
詩織「ねぇ、仁君、私最近ね…生理が来ないの。もう2ヶ月くらいかな。これってもしかして…?」
仁「え、嘘だろ?ちょっと待ってくれよ、まだ覚悟が…」
とにかく、事の真相を知るべく、二人して町の大きな産婦人科に行き、受診した。
結果は大当たりだった…
こうなると俺も男である。腹を決めて詩織の両親の元へ挨拶に伺った。

結果は当然、大反対である。当たり前だ、詩織は良家のお嬢さん、反対に俺は何処の馬の骨とも解らないゲス男。そもそも最初から詩織とは釣り合う筈もない。
しかし、詩織の親父さんはこう言った。
「お前がこれから一年の間にそれなりの役職に就いたら娘との結婚を正式に認めてやる!」
と。
詩織を孕ませた責任もあり、俺は親父さんに「解りましたお義父さん、必ず一年間で役職に就きます!ありがとうございました!」と頭を下げて詩織と共にその場を後にした。
それからというもの、以前にも増して俺は死に物狂いで仕事に熱中するようになった。
愛する家族を養うため、護るために俺は社畜と化していったのだ…

To be continued…

ループ・ザ・ループ(第一章)

二日目。
神様に紹介された職場へ今日から出勤することに。
慣れない土地で初めてやる仕事。そしてこれからの人間関係。
上手くやれるだろうか…不安と期待の双方が入り交じった感情の中職場の人達と顔合わせ、挨拶した。
良かった、好感度は悪くないようだ。
それからは、これから始める仕事の内容についてレクチャーしてもらい、初めての勤務を終えた。
三日目。職場への道のりはまだうろ覚えでしかなかったため、一時間ほど道に迷い、大幅な遅刻をする結果に。
これが職場の人達の心証を悪くしたようだ。一生懸命に謝ったが、職場の人達との誤解が解けず、非常に気まずい雰囲気になった。
どうやら、俺の普段からの素行までも疑われてるようだ。仕方ない、職場での失態は仕事で取り返す!
四日目。
今日は昨日のような失敗は犯さないと心に決め、真剣に仕事のレクチャーを受ける
必ず、1日でも早く仕事が出来るようになって、職場の連中に俺の実力を認めさせてやる。

それから時は流れて三ヶ月目。
ここでの暮らしにもようやく慣れて、仕事も人並みにはこなせる次元にまでやってきた。
人に仕事を教えることは苦手だが、なんとか一人で平常業務は出来るように。
しかし、初任給の時もそうだったが、1ヶ月の給料が安いな…まあ、田舎だから当然っちゃ当然なのだが。
それでも独身暮らしなので何とかこの給料でもやっていけるが、結婚して子どもを設けたりしたら今の給料じゃあとてもやっていけない
どうしたもんか…
とはいえ、神様との契約で異性とそういう仲になっちゃいけないことになっているのでしぶしぶ我慢することに。
あ、そういえばお金も望んじゃいけないんだったか…
実に不便で不満な毎日を過ごしている。

To be continued…
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