メンドラ…莉紅さんの小説のドラジェ視点再掲

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今日はメンデルの誕生日。当日会うのは難しいだろうと思っていた。声をかけてくれるのはいつだって彼だ。

何でもかんでも委ねるのはどうかと思っている。けれど、お互いの仕事もだし──私から誘って困らせたらどうしよう、と毎回躊躇ってしまう。

変装しつつ素敵なデートコーデをしたいと、教えてもらったり検索したりするけれど、変じゃないかとか、そもそも彼の好みかどうか頭の中はぐるぐる。変な応答してないかしら?

それでもこうして彼との時間を過ごせている事が嬉しくて、さっきからタイミングを逃し続けてる私。そうこうしてる間に、時間の終わりをスマホのバイブに告げられて。

時間設定間違えたかなというくらいあっという間に過ぎてしまった……次の現場までだけでも、一緒にいて欲しい。なんて言える筈もなく。

だから彼の方からエスコートしてもいいか聞かれた時、私はスマホを落としかけた。嬉しいけどそれはもし、誰かに見られたら……迷惑がかかってしまわない?

でも彼は、優しい笑顔で手を差し出してくれた。甘えてしまう自分をどうか許して欲しい。

少しだけ延長された、彼と過ごす特別な時間。

「──誕生日おめでとう、メンデル」

腕時計が入ったプレゼントボックス、やっと渡せた。

次は、次こそは、私から誘うと決めた。彼の喜ぶ顔を、もっと見たいから。