スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

沈黙のムスカリ(牙猪)

帰り道。

仲間全員で、ゲラゲラ笑いながら歩いていたら。


歩道も車道もないような道とはいえ、まがりなりにも車道のど真ん中に。

でんと、仁王立ちした男が一人。


見たことない制服だわ。


「いの!」


穏やかならぬ声に、あぁと皆合点がいった。


あのいのを浮気相手なんぞに扱った、身の程知らずな大馬鹿野郎か。


ナルト命名。

いのに隠れてこっそり話をする時、私達はヤツをそう呼んでいた。


当のいのはというと、私達の後方で。

キバと、相変わらず遠慮のない会話を繰り広げていた。


「で、カカシ先生ったらさー、サクラに…って、どーしたのよ?こんなとこに立ち止まったりしてぇ」


キバもきょとんとした顔で、こちらを見ている。


「いの、ごめん!俺、いのがいないと生きてけないんだ。戻ってきてくれ!」


いののお眼鏡に適っただけあって、顔もセンスもイケてるんだけど。


「あんな情けねぇヤツ、いのの相手なんて無理だってばよ…」


ボソリと、呟かれたナルトの一言に。

あのヒナタでさえも、小さく頷いた。


「ちょっと、アンタとはもうサヨナラしたはずでしょー!?別れる時、言ったじゃない。生まれ変わったってアンタとやり直すなんて御免だわって!!」


そこまで言ったのかよと、小さく隣のキバが。


「それくらい見損なったって、言いたかったのよ。なのに、アンタ馬鹿?」
「いの、二人で話がしたいんだ」
「嫌よー。あたしは話なんてないし、聞く耳もない!」


颯爽と歩き出そうとしたいのは、隣のキバに行くわよーといつもの調子で声をかける。


「俺、アイツとは別れたんだ!!」


いのが横を通り過ぎようとする前に、大馬鹿野郎はいのの右腕を掴んだ。


「あ、そ。ご愁傷様〜」


冷たい目で振り払おうとしたいのに、大馬鹿野郎はさらにいのの左腕まで掴んだ。


「今度はいのだけだから。だから、なぁいの…」


誰もが絶句。


月9さながらの恋愛ドラマに、私達は呆然。

キバの顔は私からは見えないけど、ほぼ同じだろう。


一方、いのは…


「…あっきれた。アンタ、本当に馬鹿なのね」


秋の夕暮れは、暖かい橙色を湛えているのに。

どこか冷たい。


その夕焼けが、キバといのと。

大馬鹿野郎に射し込んだ。




――あ、いの綺麗。




「もしあたしが、アンタのこと好きで好きでどうしようもなかったら。奪ってでも、アンタの腕放さなかった」


掴まれたいのの腕は、だらんとぶら下がったままで。


キバが、そんないのの腕に視線をやった。


キバの横顔が見えて。

キバも真面目な顔出来るんじゃないと、ぼんやり思った。


「自分のエゴの為に嘘吐きまっくて、悲しませて泣かせて。彼女泣いてるわよ、アンタが思うよりずっと。あたしだって………そんな人間が、幸せになれるわけないじゃない。それに、あたしは簡単に浮気しちゃうような男、いらない」


馬鹿にしないでよって、いのらしい。


でも、

罵るように言うと思っていたのに、いのは。

諭すように、静かに言った。




いのだって、好きだったんだね。




人間は死ぬ為に生きている、矛盾した生き物。


今日が終われば、明日があるわけだけど。

一歩ずつ、確実に、死に向かっている。


人生とは、とても限られた時間の固有名前なのだ。


だから”付き合う”って、とても特別なことだよね。

今この瞬間も亡くしていくばかりの時間を、特別その人の為に捧げて使うことだもの。


終わりが終わりだっただけに、いのはあんなこと言ってたけど。

でも、いのだもの。


ちゃんと好きだと思ったから。

時間を賭けても惜しくないと思えるほど、想ってたはずだよね。




「誰も傷つけない幸せなんてないけど。でもね、覚えときなさい」


元彼は、夕焼け色に染まったいのの顔をどんな想いで見つめているんだろうか。


そして、キバも…




「大きな嘘を吐いたヤツは償いと同時に、過去全部疑われる。たとえその時は紛れもなく真実だったとしても、信じられなくなる、一つ嘘吐かれただけで。嘘は、未来の信用と過去の信頼を失くすの」




元彼は、ずっと掴んでいたいのの両腕を放して。


小さくごめんと、言った。




そして、


「もう…信じてもらえないけど、でも、俺、好き、だったんだ」


いのも、うんと小さく答えた。


じゃあと、遠ざかる元彼の背中を。

いのは、瞬きもせずに見送っていた。






泣かないように、






キバがそんないのの手を、手繰り寄せてぎゅっと握って。

そっと、私達から隠した。






(黙っていても通じる心)

10000 over !

なんってこった!

こんなその名の通り無法地帯なこの場所に、こんなに多くの方が足を運んでくださったなんて(泣)


なんのお礼も出来ないのが心苦しいですが、せめてもの感謝の意を述べさせて戴きます。


これからもモリモリうざうざ(?)駄文制作に励みます!

拍手も沢山ありがとうございます。

そして、どマイナーであろう幾多のカプにまで目を…!


もう、皆様大好きです!

これからも、よろしくお願いしますーv

蝶舞うスイートピー(牙(猪)+桜)

「浮気なら自分は浮気だって言えってのが、いのの自論」
「そんなの、堂々と言う男いる?」
「不倫ならともかく、普通は言わねぇだろうな」


いのの思考は、たまに理解不能。

でも、キバはクククと笑ったまま。


「キバ?」
「いや、さ。やっぱり、あいつらしいなーと思って」


何それと、日誌に走らせていたシャーペンを止める。


「遊びなら遊びって割り切りたいってのより、覚悟をさせときたいんだろうな」
「覚悟?」


それがあれば、浮気でもいいってこと?

あのいのが?


「浮気は腹を括ってやるもんだって、いのがな」


キバは大人びた顔で、日誌に目を落とした。

前日のページには、いののスマートな文字。


「彼女にも浮気相手にも嘘を吐き続けて、絶対にばれないように最善を尽くす、そしてどんなに罪悪感に駆られようとも口にしない覚悟。そのくらいの甲斐性がないヤツは、浮気するなだと」


左肘をついて、その掌で口元を覆う。

右腕は肘だけ机にかけて、手はぶらんと垂れ下がったまま。


ゴツゴツした大きな手が強烈な存在感を持って、私の視界に。


「いのは、彼女の立場にいる女ことを考えてんだよ…」


馬鹿だよなって、笑うけど。


「自分があんな男の彼女じゃなくてよかった、あたしが彼女でこんな屈辱味わわされたら堪んないなんて言いながら。自分だって傷ついたのに、彼女に同情してるんだぜ」


憎い、はずなのに。

彼女がいるから、自分はこんなに軽く扱われたのに。


それなのに、いのは。


「本当のこと知らされて、一番傷つくのは彼女だって。ペアの指輪も貰ってるのに、浮気の為にあっさりはずされて、躊躇いもなくいないと自分を否定されちゃってたんだからー…ってさ」






キバは、誰よりもちゃんといのを見てるのね。






「いののこと、馬鹿とか言ってっけどさ。でも、俺のほうがもっと馬鹿かも」




──あいつらしいって思ったんだ。




キバはニッと笑って。


この二人の間に、割り込める人間なんているのかしら。


「ハイハイ、そうかもねー。本当キバといのって、そこら辺のカップルよりお互いのこと分かり合ってるわよね」




からかったのに、

キバは、まーなって笑顔だった。






(デリケートな青春の喜び)

マンジュシャゲに想いをはせる(牙(←)猪)

「男ってペアリング贈る彼女がいても、浮気する生き物なのねー」


短いスカートから伸びるスラリとした足を、いつもの様に優雅に組んで。

窓に左肘をついて、頬杖するいの。


「浮気されたの?」


まさか、の比重の方が多い。


「あたしが浮気だったのー…」
「えぇ!?」


いのを、浮気相手にだなんて。

その男はなんて、なんて贅沢な輩なんだろうか。


「嘘でしょう?」
「こんな惨めな嘘、吐くと思う?」


…いいえ。


「…どうして気づいたのよ、ソレ」


本当は訊きづらい、ってか訊きたくないのだけど(なんか酷そうで)

いのも、思いっきり愚痴って忘れたいだろうから。

親友の務めだ、頑張れ私。


「手繋いでたのを見た。あと、一人のとこを見かけた時は、左薬指に指輪してた」


あぁ、やっぱり訊くんじゃなかった。

酷すぎる。


恋愛初心者の私を、男性不信に陥れる気なんだろうか。


「なのに、彼女いるんだったらサヨナラって言ったら、そんなのいないってしらばっくれたのよ!あの男!!」


儚げな空気を漂わせて、いつも以上に近寄りがたかったいのが。

一瞬にして般若よろしく、怒りの形相。


「それなりにショックで、こっちは泣き明かしたっていうのに。あの一言で、一気に冷めたわよ!」
「うん、そうだよね。そいつ、本当に最低だよね」


こういう時は、相槌を打つしかない。


だって、


「あたしをここまでコケにしてくれたんだから、こっちだってコケにしてやるわ!アンタなんかメじゃないのよ〜って、見てなさい!!」


大体いのが愚痴る時は、すでにいのの中では色々終わってて決まってるのよね。


「椅子に片足あげて、何ポーズ決めてんだよ、いの」


そこへ救世主・キバ。


「キバ!」


キバは私の涙を流さんばかりの笑顔に、ちょっと笑った。


「サクラを困らせんなよ。また別れたのか?」


ひょいといのの前の席に座って、いのの机に右腕をついたキバ。


「またって、あたしに失礼だわ」
「本当のことだろ。やっと付き合ったと思ったら、すーぐ別れてんじゃねぇか」


これには、流石のいのも返す言葉がない。


「ふん!あたしが本気になれる男が、そこら辺にいて堪るもんですかっ」


キバと向き合ってたいのは、プイと私の方へ首を振った。


「あー、ハイハイ」


キバはキバでケッと笑って、いのを眇て見る。




いのは、同じ学校の人とは付き合わない。


きっと、それは、たぶん。


隣には、いつもキバがいるから。




──昔、

夏休みの愚行の一つにと決行した未成年飲酒で。

酔ったいのに、それとなく訊いた。






キバを、どう想ってるのか。






端から見て、すごく仲の良い二人だから。


この二人の間にあるのは、

紛うことなき友情なのか、それとも恋なんて軽い言葉じゃ表せない深い愛情の類いの何かなのか。


周りは、気になって仕方ないわけで。


「キバ〜?」


普段のいのなら、おくびにも出さない本音を。

アルコールは偉大なり、いのは機嫌良さそうに。


「好きよ、好き、だーい好き」




でも、どこか苦しそうに口にした。




「いの?」
「ん、本当にキバは好き…」


でも、と。


「キバとは、幸せになれる気がしないから。だから、あたしは他所で恋するの」


酔いで目を閉じたいのは、少し泣いていた。






キバは、モテる。

そういう意味でも、そういう意味じゃなくても。


明るくてノリがよくて、頼れるキバ。

誰にでも優しいキバは、いのの隣では優しさも倍だが遠慮も倍なかった。


それが意味するのは、

気のおけない仲間への絶対の信頼なのか、好意故の甘えなのか。

いのも、測りかねてるんだ。


でも、自分の反対側のキバの隣に立とうとする子に嫉妬するには、あまりにも曖昧で。






「その男あたしと出会す直前に、右手の薬指に指輪つき直してんのよ。急いでつけ変えたの、指輪の引っかかり具合で丸分かりだっつーの!あぁ、思い出すだけでムカついてくるー!!」
「なんで、そんなヤツと付き合ったんだよ」
「強いて言うなら好き、だったから」
「はぁ?句読点の位置、おかしいだろ」
「キバとあの男どっちが好きって訊かれたら、キバって即答出来ちゃう程度ってこと」


おぉ、いの爆弾発言。

キバ、どう出る。




「なら、彼氏とか気軽に作んなよ」




どちらかといえば、軽口染みて放たれたいのの爆弾発言。


キバの声は、あまりにも真剣すぎた。






(想うはあなた一人)

3.恋愛は瞬きのような瞬間だが、あまりにも多くの時間を欲する(鹿←)

「サクラ、アドレス交換しようぜ」


何を今さらって?


でもね、私達はお互い番号しか知らないの。

しかも、それを知ったのもついこの間のことで。

皆で遊園地に遊びに行くからとかいう、微妙な名目。


シカマルと出会って、二年ちょっと。

何かが間違ってるような。




「飲み会の時間、ネジと決めてくれ、ネジのアドレス教えるから」
「あ、うん」


慌てて携帯をエプロンのポケットから取り出して、赤外線を作動させようと試みる。


「俺、送るわ」
「分かった」


携帯を突き合わせて数秒後、受信と奈良シカマルの文字が画面に。


「後で空メしてくれ、ネジのアドレス送るから」


パチンと、薄い二つ折の携帯をポケットにしまったシカマル。


「うん、後でね」


私もスライドを閉じて、携帯をポケットに。

そして、それぞれの仕事に戻った。






「ふぅ、終わった」


明日から三連休。

大学はあるけど、バイトに三日も来ないのは素晴らしい。


バイト上がりの習慣のメールチェック。


あ、そうだ。

シカマルにメールするんだった。


「危ない、危ない」


次の土曜が飲み会なのに。


後一週間あるけど、ギリギリに時間言われても困るものね。


アドレス帳のボタンを押して、奈良シカマルを探す。




番号とアドレスと住所と誕生日。




誕生日は前から知ってたけど。


こういう形に残るモノで「奈良シカマル」を手にしたことで、近くて遠かったシカマルが急にリアルに。


アドレスや携帯を変えて、連絡してもらえなければそこで終わってしまうけど。

そうなってしまう前までは、確実に繋がるわけで。






「ここに来るのに二年、か」






(もしこの先があるとしたら、後何年かかることやら)
prev next