注:露天風呂での入浴シーンがちらっと登場しますが全然エロくはありません。苦手な方はご注意ください。
三杉クリニックと若堂流薬局の一行は温泉から上がって少し休憩してから全員で夕食を食べに行った。
食事は全てこのホテルの名物である日替わりメニューのバイキング形式でそれぞれ食べたい物を好きなだけ食べ、飲めない体質の日向を除く男性陣はお酒も楽しみ、女性陣は種類豊富なデザートに舌鼓を打ち…
「おいしかったー!淳、この旅館にして大正解だったね!」
「料理も美味しかったし、お酒もつい飲み過ぎてしまったよ。」
弥生と三杉はこの旅館を選んで本当に良かったと思っていた。
飲み過ぎ、食べ過ぎで少し休むという若い女性陣と院長・師長夫妻は眠くなったらすぐ寝られるように布団に入る、と部屋に篭る。若い男性陣はまだ部屋の中で過ごすことはせずにどこかへ行くようだ。
「お土産の下見に行かないか?」
「いいね(いいな)、賛成!」
若島津の提案に三杉と日向は賛成した。
「俺らこの中の居酒屋で飲んで来ます。」
「あんまり飲み過ぎるんじゃねーぞ。」
佐野と新田はもう少し飲みたいと言い、旅館の中にある居酒屋へ行くようだ。
―ところ変わってゴッツァの店、イタリア料理店の『ユリアーノ』―
いい感じにできあがった岬・松山・翼が飲み会真っ只中である。
現在、葵が本日何回目か分からない飲み物の注文を取った時に三杉クリニックと若堂流薬局の慰安旅行の話を翼から聞かされたところだ。
「そうですかー、日向さんたち今温泉に泊まりに行ってるんですねー。」
「らしいよー。温泉いいなーボクも行きたいー。」
「よーし!なんかお土産買って来てもらおうぜ!」
「いいねー松山くんったら冴えてるぅ!」
松山が日向の携帯に電話をかける。何度か呼び出しすと彼が出た。
「もしもし日向〜?温泉はどうだ〜?」
「ああ、なかなかいいぜ!そんで、電話かけて来て何か用か?」
「オレ、まんじゅう食いたい!」
「俺も〜!」
「チョコっぽいお菓子がいいオレー。」
「ボクはお煎餅系がいいなvv」
松山からの電話のはずなのに何故か翼や葵、岬の声が聞こえる。日向は一瞬混乱したがみんなすぐにゴッツァの店にいるのだ、と察した。
「お前ら、もしかして酔ってるな!つーか葵は仕事中だろ!」
日向のツッコミなんぞなんのその。電話口からは松山たちの笑い声が聞こえる。少し遅れて「ヒューガをあまり困らせるな」とゴッツァの声も聞こえてきて日向はちょっと安心したし嬉しかった。
ひと通りお土産の下見を済ませて三杉、若島津は部屋でくつろぎ日向は一度部屋に戻ってから温泉に、女性部屋では美子と町子、直子が寝てしまい真紀が温泉につかりに行き不在で弥生が一人だったのでトランプでもしないか?と三杉が誘い、彼女はそれに応じた。
「たまにババ抜きも楽しいね。」
「うん、悪くないと思う。」
ババ抜きを楽しんでいる弥生に涼しい顔をしている三杉だがたった今、若島津からババを引いてしまったところだ。
「真紀ちゃん、露天行ったのかなー?」
「そういえば日向さんも露天行くかもって言ってた。あ、俺一抜け!」
若島津がにこりと笑って両手を広げた。
「ちょっと、マズくない?混浴でしょ露天。日向と赤嶺さんが鉢合わせとか…」
三杉はやや険しい表情をして日向と真紀の状況を危惧した。そして依然ババは彼の手にある。
「大丈夫じゃない?さすがに女の子一人で露天には行かないでしょ。」
楽観的な言葉を発する弥生。しかし、三杉にはどうも嫌な予感がしていた。
沸き立つ湯気、上には満天の星空―
日向は念のために前をタオルで隠して露天風呂へ入ろうと足を進めた。
あれ、露天風呂に誰かがいる…誰もいないと思ったのに…日向がそう思っていると…
「きゃっ!」
「おわっ!」
真紀が誰かの気配を感じて露天風呂に入ったままくるっと後ろを振り返ると、前は隠しているが裸の日向が立っていて…
「わ私、ちょうど上がるところだったので…」
「ま前隠してるし、目ぇつぶってるから、早く出ろ!」
「は、はい!」
日向は露天風呂につかりながら顔を赤くしていた。お湯が熱さだけが原因ではないだろう…
日向が露天風呂から出て浴衣を身につけ、部屋に戻ろうと歩いていると途中で真紀と一緒になった。
「あ、あの…」
「悪かったな、さっきは。」
「いえ、こちらこそ…」
「…行くぞ。」
日向は早足で歩き、真紀も後ろを負けじと続く。
もう少しで部屋だ、というところで二人の視界に入ったのは…
「お客様、このような場所で寝られるのは…お部屋までお連れしますか?」
「いいんだよー。オレここで寝るー。」
「水、水飲みたい…」
旅館内の居酒屋に飲みに行っていた新田と佐野が廊下で寝転がったり、座ったりして仲居を困らせている。
「おい!お前ら!」
「すみません、すぐに連れて行きますので。ご迷惑をおかけしました!」
部屋に新田と佐野を連れ帰った日向と真紀。
日向が彼らに一発説教を、と思ったらそれ以上に三杉が怒って説教を始め、若島津もひたすら謝っている、という事態になっている。
「今回のことは院長や師長には報告しないで僕のところで止めておくけど今後はこういうことがないように!分かった?」
「すみません…」
三杉は怒ると恐い。特に目が…力がハンパない。
水を一杯飲んで正気になった佐野とあまりの三杉の恐さにすっかり酔いが醒めた新田…
羽目を外すことはやめようと二人は心に誓った。
明日、明後日はどうなることやら…
慰安旅行一日目の夜は更けていった。
つづきます…