お昼寝日和
2014.10.25 Sat 16:48
:本編
迷子の小犬が探すは大きな影〜散葉〜
まだまだ寒さ残る二月の半ばの事…。
桃色の髪の毛を揺らしながら現れたのは小さな小犬。
その小犬は禅來宅裏の御神木の辺りからここまで歩いてきたのだと…。
「もし、ああああなたっ!春夏地染(シュンカチセン)様をご存じではないですかっ?」
乗せてあげたテーブルの端から転がりそうなくらい身を乗り出して声をあげる小犬。
いきなりそんなことを訊かれても…。
そんな名前など聞いたこともなければ先ず目の前のこの子は誰だろうか?
禅來は首を傾げ、かろうじて何か心当たりでもありそうな狐に訊いてみることにしてみた。
「春夏地染?さぁ…、春夏地染とな?」
やはり何か知っているようだ。
しかし。
「おばば様から胡散臭い犬っころと聞かされておる。関わるな。」
「胡散臭い犬っころとは失礼な!春夏地染様は人々の幸せを願う素晴らしい方なんですよ!」
この子が言うにはこういう事らしい。
この子は最初霊魂だけで生まれ、神や聖獣に仕えることが出来る特別な身の上だったのだとか。
仕える相手に選ばれる際この子だけ選ばれる当てがなくとても困っていた。
早く仕える相手を見つけなければ人間界に普通の犬として転生するためで。
転生先は選べぬ身。
霊魂の内に何か成し遂げたくてウロウロしているその時に手を差し伸べてくれたのがその春夏地染なのだと。
しかしその春夏地染は旅好きでちょうど肥後の国に入った後はぐれてしまったようで………。
……つまり、迷子。
「この家は迷子に縁があるのうっ。」
茶を啜りながらけらけらと笑うは狐。
「逞しくあれー。」
のんきに声をあげるは梟。
「ねぇねぇ、保護する?保護してあげよう?」
心配そうに禅來の裾を引っ張るのは最近ちょっとずつ進歩してきた年長さんの兎。
三毛猫はというと…いつもの猫の人形を引っ張りながら眠そうに起きてきた。
こうなってしまうと放っておけなくなるというか…。
こんなに小さな小犬を外に出すわけにはいきません。
というか…葉っぱをつけたこの子を引っ張り上げたのは刻朧。
「…もしかして、放っておけなかったの?」
そう訊いてみると。
「んー?だって、恋兎みたいなんだもん。」
と、この調子。
少し考えてから禅來はその子に近づきます。
「ここで待ってみる?運よく会えるように手伝うことは出来るよ?」
もう涙も零れる寸前。
その子ももう当てが無いようで。
「お…お…お願いしますっ。」
懸命に涙を拭いながら丁寧にお辞儀をするのでした。
霊魂だったものに、春夏地染が妖力を籠めシェットランド・シープドッグ(ゴールデンセーブル)の姿に生成したもの。
迷子の間に妖力が減り小さな身体に擬態するのが精一杯。
何にでも興味がある。何でも頼めば自分なりに頑張る。
しかし少し泣き虫。
刻朧の遊び相手(おもちゃ?)になっている。
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