お昼寝日和

2016.5.10 Tue 23:05 :本編
華やぐ気持ちと花束と〜千歳・千紘〜

ー千歳ー

花束を貰った。
主人である禅來の友からの物である。
千歳は色気や花がよくわからない。
女の子の事なら一日中考えてても飽きない。
でも、花とか花束はさっぱりである。

「えっと…誕生日の?」

たどたどしく訊ねると禅來がそうだと返す。
花束かー、どうしよっかなー。
女の子にあげる以外思い浮かばない頭にどうしようもねえなってひとりゴチて。
指先で花びらの輪郭をそっとなぞる。
飾るのも気が引けると言うか。
まず、あの小僧たちにどうされるか(っていても約半分ご老体)

花は好き。
いろんな色がついていて。
いろんな大きさといろんな形のものがあって。
でも花言葉はあんまり知らない。
時々、女の子口説くために調べてたりする。それだけ。
一つ、花びら摘んで呟く。

「この黄色いのは好きかも。」

何かアイツみたいで。

不意に小突かれて振り向くと同じ血が通った弟が立っていた。

「うわぁ、どうしたんですか?この花束。」

可愛いだとか綺麗だとか言いながら隣にぴったりくっついて微笑んでる。
そう。コイツなら似合うかも。
黄色い花を向こう側に向けて花束を押し付けるみたいにあげたんだ。

「やるよ。誕生日ってので禅來が友から貰ったんだと。」

お前も同じ誕生日だろ?ってちょっとおどけながら渡してやると。
香しく楽しむように顔近づけて喜んだ。
馬鹿みたい。でも、そういうの嫌いじゃない。
女がやるとハマり過ぎるこういうのもコイツがやるのは悪い気がしなくて。
からかうでもなく、素直に喜ぶもんだから。まんざらでもなく嬉しかった。

「この白いの、兄さんにピッタリですね。綺麗。」

え?とかなんとか動揺しながら答えているとフフッて少しだけ笑って離れていった。
花瓶とか用意しに行ったんだろう。

ー千紘ー

大きな花束抱えて考え込んでる仕草が気になった。
僕の考えは杞憂に終わり、禅來さんの御友達がくれたプレゼントなのだとか。
白い花は兄さん色だなとか考えながら花瓶を探す。
不器用なあの人は、ただ女の子を口説いて最終的には傷ついて帰ってくる。

小さな溜息一つ溢して探り当てた花瓶と。主。
多分ここに居れば普通の兄さんでいてくれるんじゃないかなって。
沢山の動物たちに囲まれて悪態つきながらも面倒を見ている兄さんは。
幼い時いっぱい見ていた兄さんのそれだった。

ちょっと離れてる間に見た目も何もかも変わっていてちょっとびっくりしたけれど。
主が教えてくれた兄さんの根っこはちゃんと兄さんが残ってた。

ちょっとの強がりと、虚勢に身を包んでる。ほんとは弱虫な羊の兄さん。

「女の子口説く癖はどうかしてくれないかな?」

僕なりのツンツンした呟きは一言だけ漏れてしまった。
もう少し甘えていたい兄の背中。
それを取られた空白の時間埋め合わせるように。
近づく虫さんは静かにおかえり頂こうと心に決めた。





ドール友に貰った花束で一つ出来たので投下。
千紘は基本、ちーのことを兄さんて呼びます。
昔の面倒見良かった兄さんが好きで好きで。
再会した兄の姿にちょっと寂しい気持ちを抱えてます。
だから、千歳がお手付きしそうになった女の子は自分に振り向かせてちょっと離れたとこに置いときます。
誰も傷つけないけど、でも兄さん取られるのはちょっと嫌。そんな子。


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