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欲音ルコ×鏡音レン

先日いただいたルコレンイラストに触発されて…

しかし描きあげてからいろいろおかしいところを見つけてへこみます…どうしてこうなってんだ?って疑問に思う部分が多々あるorz


ルコの描き方が定まりませんーいつものことだけど。


連載はいそいそ執筆しております
がーんばるぞーい

グミ 4


グミさんのマスターが帰ってくる時間に間に合うように、と彼女の家の近くまで送ると申し出たボクたちのマスターが車を準備している合間に、ボクとグミさんは門のところでぼんやり突っ立っていた。
この家はほんとに昔っからあるみたいで、玄関の近くに駐車場なんてなく庭の一部を改造したような場所にあるからちょっと遠い。

陽が沈むのはまだまだ先の青空を眺めていたら、隣から「ルコさんだっけ」と名前を確認された。
合っていることを伝えると、彼女は安心したような顔を見せて。

「なんか、よく分かんないけどさ。ルコさんはルコさんでしょ。ウチと違うもん。歌わせないっていうマスターに従ってるのはウチのルールだから、ルコさんがそん時合ってるって思った行動しとけば間違いないと思うんだよ。分かんないけどね?違ってたらごめんよ」

さっきまでのテンションはどこへやら。落ち着いたことばを紡ぐ彼女は穏やかだった。

並んでみると案外背が低くて、それでもしゃんと立つその姿に、かっこいい人だったんだと気付く。

「今週でここから居なくなっちゃうけど、ルコさんとはもっと早く会いたかったよ。いろんな意味でね」

聞き慣れた音が近づいてきて、車が目の前で停まる。
窓が開くとマスターが「お待たせ」と言った。

「じゃあまたねっ!会えてよかったよ!ありがとねルコさん!」

元気よく右手を挙げて車に乗り込むグミさんをぼんやりと眺めて、見えなくなるまで見送っていた。




…後悔はしていない。前の家を出たことも、今の家に居ることも。
だけど、もっとできることがあったんじゃないかなって思い出すとキリがなくて。

要らないと言われながらも、ボクは自分にできることを探さなかった。
必要とされてないなら立ち入る隙などありゃしないのだと、思い込んでいて。

グミさんは決して要らないと言われたわけじゃないけれど、求められたことを常に返しているけど。
笑顔が見たいという理由で歌いたい気持ちを殺すくらいには、大人だ。

どうして、できなかったんだろう。

消えたくない、と言うことはしなかった。わがままは言わなかった。これは一緒。
だけど、…寂しさを和らげること、どうしてできなかったの。

「なんて弱いんだ、ボクは…」

じわじわと鳴く蝉の声が止んで、それでもずっと玄関の前に立っていたら。

「なにしてンだよ」

会いたくて仕方なかった人の声が後ろから聞こえた。





もう一度、会うときが来たら。

ごめんなさいって言って。

あの人が幸せになるように願いを込めて、歌おう。


そう心に決めて、すぐ。
ボクはあの人に会うことになる。



ついにテト編!と思って書いてはいたのですが、ふと自分の中でグミの口調が決まったので急遽グミ編を挟んでみました。
正直、ルカ編でフラグ立てて終わってたので迷ってたんですけど。
あの時はレン視点、今回はルコ視点でフラグ立てておきました笑。
グミを出したい、出したい!と考えていたものの、ルカの家の子にすると某さん宅の設定とかぶってしまうなと悩み笑。けれど新しくマスターを出す必要性も感じられなかったんで困っていたんですが。
こういうかたちで、そしてルコと同じような境遇で違う存在として出せてよかったかなと思います。
ルカ編→短編→テト編にいくとルコの感情が整理できてないかなと思っていたのでこれはこれでよかった気がする。
ルカ編のときに「事件はすぐ起きる」と言って終わり、「次はテト編」と言っていて。今回「ボクはあの人に会うことになる」と言って終わっているということは、テト編でどんな流れになるか分かると思います。
今のマスターと前のマスターの関係も書けるといいな。
なんか壮大な連載になりすぎて連載苦手のわたしにはきついですが頑張りますっていうかあとがき長!

グミ 3


そんなことを考えていて、ふと引っかかりを感じた。

「家を…出てはいけないの?」

くちからぽつんと漏れた言葉に気づいたときは手遅れで、元気よくお喋りしていた矛先がボクに向く。失敗した!と思った瞬間には彼女のくちが開いていた。

「そうだよ!だって知らないうちに壊れたら困るじゃないか!だからずっとマスターの家から出なかったんだ!」
「大切に…されてるんですね?」
「!…そうだねー」

なんだろう。引っかかる。

「…グミちゃんはどんな歌を歌うの?聞かせてほしいな」

マスターが再び助け舟を出してくれる。そのことに感謝しながら彼女を見た。

「歌?歌わないよ!マスターってば中の人が好きみたいでね!デモ曲ばっかり再生して満足してるみたい!まっ、それもいいんだけど!」
「え、歌えないって…ボーカルアンドロイドなのに…?」
「歌うのが本業だけどね!マスターがそういう考えなら致し方ないでしょ!ってか、キミ、初めて見るね!ボーカルアンドロイド?黒髪ツインテって居たっけ?あ、カスタマイズなのかなっ?」

せっかくの助け舟だったというのにまたもや矛先がこちらを向いてしまったうえに、疑問まで抱かせてしまったみたいで困った。
彼女はUTAUを知らないのかな。いや、知らないから疑問を投げられたわけだけだけど。ううん、困った。ボクの存在は説明しにくいんだよね。

とりあえずざっと説明をしたけれど、彼女のテンションの中でボクの説明が通じたのかは分からない。
「そかそか!なるほどね!」なんて言ってるけど…どうなんだろう。

「でもさでもさ!さっき兄上に聞いたんだ!ボーカルアンドロイドは他に居る?って!そしたら6体居るって言ってたんだよ!どうしてキミだけボーカルアンドロイドじゃないんだいっ?」

からからと回る扇風機が沈黙の中で響く。風を生み出す機械はもっぱらマスターのほうを向いていて、前髪がそよそよと動いていた。

「いろいろ、あって…」

そう、呟くのが精一杯だった。

今のボクは、目の前に居るマスターの元で歌うUTAUだ。欲音ルコだ。
けれど、どうしてボクだけUTAUなのかなんて聞かれたら、それはあの過去を思い出さざるを得ないわけで。

与えられた期間だとか、消えていった体とか、無くなった意識とか、目が覚めたときに聞いた歌とか。そんなことすべてが一瞬にして脳を駆け巡るくらいには、まだボクの中で息づいている記憶で。

「グミさんは…歌いたいって、言わないんですか…」

過去の記憶と闘っていたら、ふとひとつの疑問が頭によぎった。

もし、逆の立場だったらどうだったのだろう。

彼女は今でこそ、家から飛び出した家出少女だけれども。それまでは静かに再生するだけのボーカルアンドロイドだったはず。
「歌わせない」というマスターの考えに従って、ただひたすらCDみたいな役目をしているボーカルアンドロイド。

ボクは、目が覚めた瞬間「要らない」と言われた。
その瞬間、消えるのなら時間をくださいとわがままを言い、そして会いに走ったのだ。この人に会うためにボクが生まれたのだと勝手に理由付けをして、レンきゅんの元へ向かった。

マスターの言葉に耳を傾けず、この世に目覚めたならば理由が欲しいと思った。

「歌いたい?そうだね!…歌いたいのかもしれないね。だけど!マスターが選んでくれて、歌うだけで笑ってくれるからさ!いいんだよっ!それだけで満足!」

目が覚めて、「要らない」と言われて。
消えるまでの毎日を共にする間、心のうちを知っていって。
「寂しさを紛らわせてあげたかった」と思う程度には、前のマスターに感謝をしていた。

なのにボクは、なにもしてあげなかった。

偉そうなことを思いながらも消える瞬間をただただ待つだけ。ゆっくりお話することも、目を合わせることもなかった。

目の前の彼女は、自分の欲求を殺してまでマスターに尽くしているのに。

どうしてボクは、なにもしてあげなかったんだろう。

「グミさんは…マスターがだいすきなんですね」

どうしてボクは、呼んでくれたのに応えなかったんだろう。

「うん!だいすきだよ!」

あっけらかんと言い放つ彼女に、なんだか胸が痛くなって。

「ボクはそうやって、マスターを想えなかった…」

くちを突いて出たことばは目の前に居るマスターと、ずっと我関せずを決め込んでいたがくぽの耳にも届いたようで。
なにかを言いたそうにくちを開いたのが見えた瞬間。

「今のマスターを大事にね!」

全てを見透かしたようなグミさんのことばが降ってきた。



グミ 2


「いっやー、いきなりお邪魔してごめんなさい!」

居間に通した客人はまるで自分の家かのような振る舞いで、出されたお茶を飲み干してからからからと笑った。

見慣れぬ客人…そう言ったけれど、それは嘘で。
知っていると言えば知っている。ボクだけじゃなく、この家に住むみんなだって。ボーカルアンドロイドを所有していれば知識だけはあるはず、そんな客人。

「それにしてもひっろいおうち!ウチとは大違いだね!」

髪の毛をぶんぶんと振りながら家の中を眺める不躾な彼女を眺め、脳内の引き出しを探ることなく彼女の名前を思い描く。

…Megpoid、名称は…。

「あっと!ごめんっ!名前!言ってなかった!グミだよ、GUMI!じーゆーえむあい!グミね!」

どのような字を当てるのか知っているのに、ご丁寧に宙に大きく…鏡文字だったけど…書いてくださった彼女はにっかりと笑って「よろしく!」と言った。
そのテンションに付いていけず、ボクはぽかんと口を開けて黙ってしまったのだけど、マスターはにこりと笑って「よろしく、グミちゃん」と言う。
やさしいひと。改めてそう思った。

「え、えと…グミさんはどうしてここに…?」

空になったグラスを引き寄せて茶を注ぎながらボクが問う。ちらり、と目線を向けたのは彼女と一緒に門をくぐってきた人だ。彼は目を伏せて我関せずな素振りを見せている。連れてきてしまったことを後悔しているような…そんな感じだった。

「そうそう!兄上に会ったのだよ!散歩してたらたンまたま行き着いた河原でね!びっくりしちゃった!がくっぽいどさんですか?って聞いちゃったよ
!だって今まで会ったことなかったんだもん!こりゃテンション上がるしかないでしょ!」

はやくちで捲くし立てられてまたもや開いた口がふさがらない。
マスターはにこにこ笑ってるけど、ボクはもう、なにがなんだか分からなくてどうしようかと行き場を探す。こんなときに限ってレンきゅんは一人で買い物に行ってしまうし、相変わらずメイ姉もカイ兄も居なくて、リンちゃんは「うるさいのが来たみたいだから」と逃げてしまって、ミクちゃんはデートに出かけてて。
まあ要するに、ここにはボクとマスターと彼女を連れてきたがくぽしか居ないわけで。

「グミちゃんはどこに住んでるの?」

ボクの心境を知ってか知らずか、マスターが質問をした。
そしてそれにグミさんが相変わらずのはやくちで答える。どうやら隣の駅の近くに住んでいるらしい。ここは最寄り駅から遠いからとても長い距離を散歩していたんだなと思った。

「いままで家から出たことなくてだね!でも今週で引っ越すことが決まってるんだよ!結構遠いところみたい!家から出るのはダメって言われてるんだけど、最後だしいいよねってことでこっそり散歩してたのさ!」

マスターが仕事へ行ったあとを見計らって家を出たそうだ。
どうしても外を見ておきたかったらしい。

あそこへ行っただの、あれをしてみただの。
元気いっぱいに話す姿を見て、なんだか小学生が母親に話を聞いてもらいたがってるような雰囲気を感じて変な気持ちになった。と言っても、ボクにはテレビで見た一般家庭の知識しか持ち合わせてはないのだけど。

グミ 1

ルカさんが帰ってひと段落した頃。
マスターが珍しく居間で寝ていて、「あついあつい」と茹だっていた昼間。

「こーんにちわー!」

聞いたことのない声が家の中を駆け抜けた。

え、と玄関のほうに振り返る。居間から玄関なんて到底見えやしないけれど、反射的にそうしてしまった。

昔ながらの日本家屋といえどもチャイムは付いている。そのチャイムから玄関までだいぶ距離がある。なのに、家の中から声がする。
ということは、客人は玄関で声を張り上げている?

何事?と顔を上げたマスターと目があって、ボクは急いで玄関へ駆けていく。

「どちらさま…あ、あれ?」

慌てて走り抜けた先。だだっ広い玄関に居たのは、見慣れぬ客人と。

「…ただいま」

見慣れた家族の姿だった。



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