ナチュラルに遊星とクロウが同棲してます。
ちなみに、タイトルに深い意味は全くと言っていいほど、ない。
家の電話が鳴った。クロウが出ると、受話器の向こうから男の苦しそうな息づかいが聞こえてきた。突然の事で声を出せずに固まっていると、息絶え絶えに遊星にかわってほしいと男は告げる。蒼白な顔で固まるクロウを心配し、近づいてきた遊星に電話を無言で手渡した。受話器を受け取った遊星の表情も一気に悪くなる。
苦しそうに遊星の名を呼んだ男の声に聞き覚えがあった。二人の幼馴染みであり、今は一人別れて暮らしている男…ジャックのモノ。どうしたのか。なにがあったのか。会話に合わせて頷く遊星の顔を見つめながら頭の中を巡るのは嫌な予感ばかり。
話は終わったのか、電話を切った遊星がゆっくりクロウに合わせて顔を上げる。真剣な眼差し。
「ジャックは…」
「ジャックは…?」
「腹を空かせて倒れてるらしい」
「………はぁ?」
遊星はいつもの真剣な表情のままクロウの視線から外れ、台所へ行って冷蔵庫の中を物色しはじめた。置いてかれたクロウが我に返るのにたっぷり数十秒。慌てて遊星の後を追って台所へ来たときには、彼は野菜室を開けて中を物色している最中だった。
「おい、どういう事だよ」
「何か恵んでくれ、とのことだ」
「……また?」
「今回は食料だけでなく金もキツイらしい」
「はぁ?」
ジャックはマンションで独り暮らしをしている。親代わりのマーサからの少しばかりの仕送りとアルバイト代だけで彼は生活をしているのだ。
しかし彼は酷い浪費家であった。一杯3000円のコーヒーを愛飲し、ファッション関連も惜しみなく投資する。そんな理由で常にカツカツな生活を送る彼はたまに財産し、こうして幼馴染みの元へ助けの電話を入れることがあった。
ちなみに今日が初めてではない、プライドの高い彼は本当に本当に死にそうな状況にならないと電話をしない。前回の時もこうしてミイラのような声で電話をしてきて二人を驚かせた。
「なぁ、集られてるんじゃねぇのか」
「分かっている」
「はぁ?本当に分かっているのか……」
「大丈夫だ、クロウ」
「何が「大丈夫」だ。遊星の言う「大丈夫」ほど不安なモノはない」
「これで最後だ、と厳しく叩きつけてくるから安心しろ」
「そうか……頼んだぜ…」
ジャックが遊星にかわれと言ったのは最後の一握り残ったプライド。幼馴染みと言えど、ジャックと遊星の関係はクロウと二人の関係より僅かに上回る。
紙袋にジャックの好きなカップ麺や栄養を考えて野菜や果物を詰め、遊星はバイクの鍵を確認し、立ち上がった。
「行ってくる」
「そのカップ麺、投げつける勢いで厳しく言いつけてこい」
「まかせろ」
「ぉー」
・――――
落ちなかった……
とりあえず遊星に林檎を投げつけられてるジャックを想像して楽しみましょう(笑)生卵でも可(笑)
働き手×2の遊クロ家はそこそこ良い暮らしを送れてそうです。それでも貯金は忘れないよ!!(笑)
2010-6-24 11:37