スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

思いつきSS




主にR-18、鬱展開























(だるい…)

真っ白なベルベットのカーペットが敷かれ
広すぎる部屋に置かれた
少女趣味、あるいはお姫様仕様の
スイートサイズの天蓋付きベッドに
少女は横たわっていた。

高すぎる天井には
きらびやかなシャンデリア、
部屋の広さに見合った
大きな窓と淡いステンドグラス。

白いレースのカーテンも
白木の調度品も
すべてが少女に似つかわしく
同時に
全てが空虚で退廃的な印象を与えた。

少女は長い金の髪を
手ぐしで適当に梳かし、
けだるそうに座りこむと
深い青のジョーゼットでできた
ショールを手繰り寄せ
手に力をこめて
しかし何もせずにベッドの下に落とした。

日はもう高く、
傾き始めているようにも見えた。

少女は不機嫌そうに顔を歪め
部屋の隅に置かれた
巨大な鏡を見てため息をついた。

鏡には
全身に痣をつくった
一糸纏わぬ姿の
長い髪の美しい少女が映っていた。

表情こそ
毒づくように曇っていたが
まるで作り物のように綺麗だった。

大きな瞳は
真っ赤に光る鉱物のようで
白い肌を彩る痣は
アクセサリーにも見えた。

左の乳首にはピアスが穿たれ、
金色の鎖と青い石で飾られている。

鎖は
首に巻かれた金の首輪と
左手首に嵌めた
複数のブレスレットに連結していて
少女は飼育されているとでも
誇張しそうな雰囲気を醸し出す。

右の二の腕にも
赤い石で飾られた輪が装着され
脚にもミサンガのように
石によって彩られた金の輪が
いくつも巻き付いていた。

少女は
撓わに実った二つの乳房に残る痣を
手入れされた指先でなぞった。

こぽり、と
粘度の高い液体がこぼれる音がして
少女の秘唇から
白い液体がどろりと溢れ、
真っ白なシーツを濡らした。

少女は枕の下から
黒い毛の束を取り出して
額に押し当てて泣いた。

引き裂かれた恋人の髪。

ここへ連れて来られるときに
頼んで切り落としてもらった形見だった。

たった一束の髪でしか
離れた恋人を想うことができない。

「………っ!」

名前を呼んで
枕に顔を突っ伏しても
過去のように
愛しい人の香りなど、残っていない。

少女の頭から生えた
渦巻く二つの角に埋め込まれた石が
悲しく鈍い光を放つ。

白と黒で並んで
真逆でそっくりだった愛しい人。

堕ちたのは
汚れた毛色の貴女じゃなくて
愚者を象徴する私。
続きを読む

電車擬人化SS




踏切の警報機の音が耳に響く。


あの独特の音色が耳に残る。


頭の中で反響する。



(わたしは、)


ときは思考のぼやける頭で考えた。


雨でもないのに視界が歪む。


ただ転んだだけのはずなのに

体が妙に重たくて

起き上がることもできない。


硬い地面に倒れ込んだ体が痛み、

苦痛に顔が歪む。



(まだ、終点に着いてないのに)


走らなければ。


だけど、体が動かない。


レールの上を

いつもみたいに駆け抜けたいのに。



(ダイヤが…)


冬が近いとはいえ、

雪も降っていないし

風もそれほど強くない。


ダイヤを乱したら

乗客たちはもちろん、

他の電車たちにも

迷惑をかけることになる。



(走らなきゃ)


「とき、起きるな」


ときが立ち上がろうとすると

運転士に止められた。


「脱線したんだ」


電線も切れてる、と伝えられ、

ああだから動けないのか、と

ときは冷静に判断した。


「………なぜ」


「…地震で、脱線したらしい」


ときが倒れた儘問うと、

運転士はぽつりと呟いた。


今までは大丈夫だったのに。


ときは目を伏せた。


案外、わたしも

老朽化が進んでいたんだろうか。


「お客様は、」


「あぁ…全員無事だ」


よくやった、と

運転士はときを抱きしめた。


ときは

運転士が震えていることに気づき、

落ち着け、と囁いた。



(わたしはもう、走れない)


きっと近いうちに

スクラップにされて

違う電車のパーツになるか

鉄製品に生まれ変わるのだろう。


わたしが走ることは

もうないのだと思うと

意味のわからない涙が溢れてきた。


運転士の背に

やっと腕を回して

ときは呟いた。


「わたしは…わたしの儘……
もっと、走りたい…」



これが、

わたしの前世の記憶。





わたしはMaxとき。


今のわたしは

前世よりもずっとたくさんの乗客を

背負って走ることができる。


わたしはMaxとき。


上越新幹線の車両。
続きを読む

しらさぎ13号




高鳴る胸

煩悩に満ち溢れた頭

疼く花びらには

気付かないふりで


一年間

あなたを愛し続けた


これからも、愛せるかな?


あなただけと言えるなら


温泉を抜けて

あなたの街へ

しらさぎに乗って

あなたに会いに


しらさぎの羽が

愛しさのあまり

薄桃色の

朱鷺色になるまで


愛して欲しいの。

黄道十三宮



蛇使いは

いつの間にか

宮に昇格していたけど

気付いた頃には

また星座に戻ってた。


冥王のように堕とされた。



「えー、何でー?」


黒い艶やかな長髪を

腰までゆるりと流し、

切れ長の瞳に

すっとした鼻と顎、

薄くも淫靡な唇の

妙齢の女が

手にした煙管から

紫煙を燻らせながら言った。


「あたしィ、まだ堕ちたくないよぉ」


すらりと長い脚を

ソファーの上で組み直し、

美しい指で

煙管をくるりと回して、

嫋やかな腕を伸ばす。


「ねぇ、どうして?」


妖艶な笑みを美貌に浮かべ

誘うように訊ねる。

デウスちゃん
「至 高 神 様、答えて」


至高神と呼ばれた

黒いショールを纏い

白い髪に青い目の

若く美しい青年は、

女に甘く笑いかけた。


「んー、諸事情?」


女はソファーから立ち上がり

豊満な胸や細い腰、

弾力のありそうな臀部を

強調しながら
青年の方へ歩み寄る。


「そんな答えじゃダメよ…?」


至高神の腰掛ける玉座の

右側に着き、

淫らな声で女は言った。


至高神は

面倒臭そうな顔をして

女の方を向く。
アスクレピオス
「蛇使い座、君はね」


女は至高神の言葉を遮った。


「ねぇ、至高神様…

言っておくけど

あたしの歳じゃもう

宮から堕ちたら

お客なんて

ほとんどつかなくなっちゃうのよ」


至高神はその言葉に苦笑した。


「十分まだ若いし、綺麗だよ」


「そういう問題じゃないわ」


至高神は

興奮気味の蛇使いを

玉座の前に跪かせ、

素足を彼女に差し出した。


「まぁ、いつも通りやってみてよ」


蛇使いは

少しむくれてから

至高神の足に

迷いもなく舌を這わせた。


「蛇使い座、

その儘続けながら聞いてね…

君の昇格はね、

そもそもお客様からの

ご要望だったんだよ」


蛇使いは

顔を上げそうになるが、

足の指の間に意識を戻した。


至高神が笑いかける。


「君がとても美しいから

是非、宮に入れて欲しい…って

彼は僕のところに

何回も頼みに来たよ」


蛇使いは
親指を口に含みながら、

誰?と短く訊いた。


「君のお客様じゃないかな?

僕にしてみれば

自分の顧客じゃないから

誰がどの宮のお客様か

全然区別がつかないんだ」
蛇使いは

チラチラと至高神を見るが

彼は微笑むばかりで

まだ続けることをご所望のようだ。


「それに…堕落宮は

二つもいらないだろう、

という話が持ち上がってね」


蛇使いは目を見開いた。


「根強いファンの多い磨羯宮…

大衆ウケの良い蛇使宮…

どちらの利益が大きいか

…考えなくても

なんとなくわかるだろう?」


蛇使いは至高神を睨んだ。


「最近は、

売り上げも落ち込んでたし…

少し休憩してから

また宮に上がりにおいで」


蛇使いは絶望の表情で

足先に舌を這わせ続けた。

読むだけで格段に点数が上がる舞姫




俺の意訳と補った部分が

盛りだくさんだけど

ちょっと調子乗った!(笑)



船に石炭は積み終えた。

二等室のテーブルの周りは大変静かで、
白熱灯の明るさも虚しい。

今夜は
毎晩この部屋に集まってくる
トランプ仲間も街のホテルに泊まり、
船に残っているのは
私だけだからだ。


五年前のことだったが、
日頃の望みが叶って
洋行の官命を受け
このサイゴンの港に来た時は、
見たもの聞いたものに
一つとして新鮮でないものはなく、
筆に任せて書いた紀行文は
毎日何千字になっただろうか。

当時の新聞に掲載されて
世間でもてはやされたけど、
今思えば
幼稚な思想、身の程知らずの放言、
ありきたりな動植物や鉱物、
あるいは風俗までも
珍しげに書いたものを、
良識ある人は
どんな風に見ていたのだろうか。

今回帰途に着いた時
日記を書こうと思って買ったノートが
まだ真っ白なのは、
ドイツ留学中に
一種の無感動の気性を
身に付けたからだろうか、
いや、そうではない。

これには他に理由がある。


日本に帰る今の私は
欧州に向かった時の昔の私ではない。

学問こそ
未だに満足できないところが
多いのだけど、
世の中の辛さを知り、
人の心が
信頼できないということはもちろん、
自分と自分の心までもが
変わりやすいということに気付いた。

昨日まで正しいと思っていたことが
今日は間違っているという
私のその時々の感じを文章にして
他人に見せたって何にもならない。

これも日記が書けない理由ではない。

これには別の理由がある。


あぁ
ブリンジーシィの港を出てから
もう二十日以上経った。

普通なら、初対面の客とだって
付き合いができて
旅行の辛さを慰め合うのが
船旅だというのに、
ちょっと体調が悪いなどと言って
部屋の中に閉じ籠って
仲間たちにさえ
あまり話しかけもしないのは、
人知れぬ恨みに
頭を悩ませていたからだ。

この恨みは
初めは雲のように私の心を掠め、
アルプスを見たいという気を起こさず
イタリアの名所も心に残さず、
しばらくしてこの世が嫌になり
自分を信用できず、
腸が日に何度も回りくねるような
激しい苦しみを私に与え、
今はそれも心の奥に固まって
一点の影のようになったが、
文章を読む度、ものを見る度、
鏡に写る姿か木霊のように、
限りなく昔を懐かしむ気持ちを
思い出させて
幾度となく私を苦しめる。

どうやってこの恨みを鎮めようか。

もしもこれが他の恨みだったら、
漢詩にしたり短歌に詠めば
きっと気分もさっぱりするだろう。

しかし、この恨みだけは
あまりに深く
私の心に彫りつけられたので
そうはいかないと思うけど、
今夜は周りに人もいない。

ルームボーイが消灯に来るには
まだ時間もあるので、
さぁ
その恨みのあらすじを書いて見よう。



…ごめんここで力尽きたwww

おやすみなさい(笑)
前の記事へ 次の記事へ