今にも止まりそうな速度で急角度の坂道を上っていく錆びた自転車は、ペダルに力を込めるために軋むような金属音を響かせる。

闇に侵食され始めた夏の空色、まるで立ちはだかる壁のような雲。

昼間に降り注いだ日光の帯びた熱を未だに含んだ空気が身体にまとわりつく。

三年間、通い続けた道。

消えたのは、一人分の重量。

去年と違うのは、それだけ。

突然聞こえた、乾いた音に驚いて目をやる。

夏の夜空に咲く、花。

咲き、散り、消える。

瞬く間に。

一瞬の死が、無数に積み重なっている。

終わり、終わり、終わる。

死に、死に、死ぬ。

ふと感じたのは、二人分の重み。

そこには誰もいないのに。

いるばすないのに。

後ろを振り向けない。

未だに現実を、受け入れられていない自分に嫌気がさす。

今年もまた、夏が終わる。

何も変えられないまま、何も埋められないまま。

また秋がやってくる、沢山の痛みと一緒に。