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( prof ) ( bkm )
2018.10.18 00:59 Thu
[短編集]
ゆめおね短編1
「ありえません」
「あー個性がんばって磨いたんですよ!」
そうではない、そういうことを言ってるんじゃない。
そう訴えかけてくる瞳に今、私だけが映ってる事実に眩暈がしそうだ。
「貴女死んだはずでしょう」
「いやあ、あの程度じゃ死にません。まぁ誰も拾ってくれなかったら燃やされて死んでたと思いますけど」
おねえさんがこちらを睨みつけながら、その場から逃げようと身を捩っている。
まぁ無駄なんですけどね、彼のおかげで個性伸ばして設定強化したんで。
「…個性が発動しないのは」
「そうなんですー!褒めてくださいおねえさん、とむらくんが手伝ってくれてより細かく設定をいじれるようになったんですよ!」
茨が絡みつくその腰に手を添えて、愛でるように撫でながらおねえさんの言葉に重ねる。
はぁ、溜息が吐かれたその唇に目を奪われていると、彼女は目線を空に預けていた。
「…無理ですよ、干渉できないから」
私の意志じゃないとこの空間は解除されないし、私が本の中にいる間は"追加"することも出来ない。
つまりあの人は絶対にここには来れないんですよねー。
「ねぇおねえさん、何して遊びます?明日には帰って来いって言われてるからそれまでの間遊びましょう!」
茨を解いて真紅のドレスを纏うおねえさんの右手を取る。
怪訝そうな眼差しを向けられて、嬉しさで緩む頬のまま首を傾げてみた。
「何が目的なの?」
そんな、分かりきった答えを求めて言葉を吐く唇は少し乾いているようだ。
そこに指を伸ばしても、遠い遠い空の星よりも遥か彼方にあるようで届かない。
「…淫さんとの時間が目的、ですよ」
呟いた私は、きっと上手く笑えていなかっただろう。
(絶対に手に入らないと分かっているものほど、うつくしい)
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2018年10月
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