「オイ。」



その黒髪の男は気が付くと俺の前にたっていた。
サラサラの黒髪が風に吹かれ逆の方向へと流れる。
目元にきた髪を片手でかきわけると、ギッと俺を睨みつけ続けて口を開いた。
嗚呼、瞳孔がガンガン開いている…



「此処ってエリザベスホテルであってるよな。」



その男はクイッと親指でホテルを指すと問いかけてきた。
こんなところに用があるっつー事はどっかの財閥の御曹司ってところか、はたまた俺と同類か。



「そうだけど。」


「どうも」



その男は礼を言うとホテルの中には入らず、俺と同様に人の波に目を向けた。どうやら、さっきの問の答えは後者の方が正しかったようだ。



「誰か待ってんの?」



どっかの財閥の御曹司かと思ったよと言い、話をふっかけた。ぶっちゃけ、あのゴリラを何もせずに待っているのが飽きただけだけど。男は横目で此方を見たがすぐにまた視線を戻した。わぁ…シカト。



「実は俺も何だよねぇ。待ってんのは男だけど。あっ、別にホモじゃないから。」



少しシカトされたのが頭に来たが、此処でシカトされたままも負けたみたいで嫌なので話し掛け続ける。相変わらず、男はシカトを続けた、嫌、こんな事で諦める俺じゃないけどね。