話題:泣ける話

幼い頃からずっと
君と一緒に居た
離れるなんて考えられなかった
ふとしたきっかけで離ればなれ
もう昔には戻れない

家が隣同士で幼馴染みの女の子が居た
周りからは彼女だとか囃し立てられたけど当人同士は別にそんな気はなくお互い意識はしなかった
ただ単純にいつも一緒に居る
ただそれだけ

幼さ故のパワーからか色んな事もした
山の中に秘密基地作ったり
家で人形使って遊んだり
男の遊びもしたし女の遊びもした
一日交代でどっちかの家に行ったり
勿論親もその事を知ってるから何も言わない

俺は彼女の喘息を若干気にしながらも
互いに喘息の事はあまり触れなかった

ずっと変わらない日々が続いていた
ずっと笑いあっていた

中学生になるとお互い多少は意識し始めた
でも別に女の子だから……男の子だから……といった事は無く
今までと変わらなかった
変わった事があったとすれば行動範囲が広がった事くらい
近くのショッピングモールに行って買い物したりその中のちっちゃいゲーセン行ったり
たまに大人の真似事もしたけど
体触りあったりエロ本拾って見た位で互いの体を直接見たことは無かった

そんな変わらない日常に変化が訪れたのは中学三年の時だった

彼女が肺癌になったのだ
その時彼女の肺は真っ黒だった

彼女が煙草を吸っていたわけではなく
父親がヘビースモーカーだっただけ
ただし単純に言えば生まれた家が悪かったのだ

彼女の父親は酒癖が悪く
酒を飲むと煙草を吸いながら暴れていたらしい

酒を飲みながら吸い
寝る前に吸い
朝起きて吸う

彼女は父親が煙草を吸い始めると部屋に行ったが
それを勘違いした父親に暴力を振るわれ
その後は半ば監禁するように煙の充満する部屋に居させられた
勿論そんな環境では体を悪くするのは当然だ
俺は彼女の父親を憎んだ
殴りに行こうかとも思った
けど出来なかった
勇気が無かったのだ
あの時何かしていれば変わったかも知れない
だけど
俺は何も出来なかった……

その後は彼女と疎遠になった
彼女が拒んだのだ
俺は嫌われたと思ったが後にそれが勘違いだと知る頃には全てが遅かった……彼女と疎遠になり男友達と遊ぶ様になった

外でサッカーしたり家でばか騒ぎしながらゲームしたり
楽しかったが物足りなかった
彼女が居ない事が俺は嫌だった
いつも一緒に居たから
もはや体の一部と同義だった

心が空の傀儡の様に生きる毎日
次第に笑わなくなった
毎日退屈で
その日から逃げるように
朝起きて
事務的に学校に行き
家に帰り
友達から誘われれば遊びに行き
それ以外は眠っていた
まるで死人
紛れもなく心が死んでいた

そんなある日
彼女の母親から連絡が来た
彼女に会って欲しいと
俺は嫌だった
嫌われたと思っていたから
心当たりが無いわけでは無かった
日常的に軽い言い争いはしていた
どっちのお菓子が美味しいかとか他愛ないこと
それがきっかけだとしか思えなかった

俺は渋々病院に行ったが来なければ良かったと後悔した
彼女の名前が書いてあるベッドには彼女は居なかった
そこに居たのは薬の副作用で変わりすぎた彼女だった
俺は逃げ出した
現実を見たくは無かった
彼女を見たとき直感的に分かった気がした

もう長くない

嫌だった
ただただ嫌だった

彼女と別れる事
その現実を受け入れる事
その現実から逃げ出した事

俺は次の日学校を休んだ
彼女の母親が居ないときに彼女に会いたかった

昼頃
彼女の家を見たら彼女の母親が居た
機会はこの時しかない
俺は病院に行った
そこに彼女は居なかった
前の晩死んだらしい

彼女がいた筈のベッドの前で泣いた
彼女が居なくなった事
自分が無力だった事
二つが噛み合い
俺の心はずたぼろだった

しばらくして家に帰ると
母親から手紙を渡された
彼女の母親が持ってきたらしい
俺はその手紙を開き
赤く腫れた目で見た
「もう……私は居ないけど、ずっと一緒だよ」
嘘だと思った
現実を受け入れたくなかった
破り
そしてゴミ箱へ捨てた

彼女はもう居ない
だから俺はもう泣かない
だって彼女が見ているから
最後に天国に居る彼女に言いたい
「ありがとう」

ここまで読んでくださり本当にありがとうございます
最後に一つ言いたい事があります
「この物語はフィクションであり現実の事とは一切関係ありません」