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器用貧乏




 平手で打っては拳で殴り、左右に揺れる身体にまた容赦無く打撃を打ち据える。寄せては返す波に似たリズム。そんな悠長なことを考えている内に腫れ上がった頬は熱くなる。私は抵抗せず、静止の声も出さず、ただひたすら床に転がって殴打の嵐を受けている。

 エメットがヒステリーを起こすのは今に始まったことではない。真面目が過ぎる彼の性根に対し、心根は些か繊細過ぎた。誰よりも深く物事を考え、発言し、行動し、そして真っ先にストレスを溜めていく。
 職場では常に笑顔を振り撒き、皆に心配をかけないようにする。部下がピンチならば不足した力量を埋めるだけに留めた絶妙のフォローをし、世話になった上司の頼みならば大抵の面倒事は嫌な顔せず引き受ける。且つ、己の仕事はミス無くこなし、バトルでは挑戦者を鮮やかな采配で以って圧倒する。そんな姿を見て、彼の社交を慕わない者も、力量を疑う者も、事の頼りにしない者もおらず、彼の背には何人もの信頼と期待と安心とが途轍もない大岩となってのしかかっている。これを好きで背負っていればいいのだが、現状は単に生真面目な世渡りを地道に、隙無く実行してしまった結果でしかなかった。彼にとってこれは好きで背負っていられる類のものではない。元来彼は自分の領域を侵されることをとても厭う人間なのだ。その域まで達する程人間関係や仕事量は膨れ上がった。気づけばそうなってしまったのを今更自分でどうにもできず、窒息しそうになりながら同じことを続けている。皆が愛する笑顔の裏で、彼はごぼごぼと沸くどす黒い不満を胸の奥へ押し込めていた。
 幸か不幸か、それを知っているのは、彼の双子の兄たる私だけだった。
 私を殴るのはエメットの意思ではない。彼は自ら己を岩石封じにしたことの苛立ちを次第に抑えきれなくなっていた。始め、その苛立ちは誰にも見えないところで自分に向かって発散されていた。リストカットという方法をとって。その現場を偶然私が見つけたのでやめさせ、代わりにその衝動は私に向けるように言い聞かせたのだ。勿論、彼はそれを容易に受け入れはしなかった。なので、こちらから相手を刺激する言葉をいくつもぶつけた。限界にまで膨らんでいた負の感情はいともたやすく爆発し、彼はめちゃくちゃに殴る蹴るをして私に暴力を奮った。最中、唐突に正気になった彼は、痣だらけで口を切らせて血を滲ませる私を見て泣いて謝ったが、私は何度もこう言い聞かせた。
 エメット、お前は何も悪くない。少しはすっきりしただろう。それでいい。

 お終いに一発とばかり、渾身のパンチを私の顔面にえぐりこんで今夜のヒステリーはおさまった。手袋無しで殴り続けたエメットの両手は、節々が痛々しく赤くなっていた。彼は仁王立ちの肩で息をして苦々しい表情を浮かべ、細息でフローリングに横たわる私を見つめている。目に涙の膜が張っていき、膝が震えたかと思えばがくりと折れてその場にへたり込む。ぱた、た、涙が床を打つ。職場の時とは比べ物にならないひどい顔をさらし、子供のように嗚咽する。
 私は痛みに軋む身体を起こして可哀相な弟を抱いてやった。腕の中に大人しく納まる彼は、弱々しく私の腰に腕を回して縋ってくる。服越しの肩が熱い涙で湿っていく。頭や背中を撫でたりさすったり、慰めのスキンシップの中にさりげなく、こめかみへのキスを混ぜる。惜しみない献身と、おぞましい愛情をいっぺんに込めて。
 実のところ、私は唇で彼に触れる口実に身を提供しているにすぎない。彼が自由のない日々にやり場のないストレスを抱えていたように、私もまた、血の繋がった兄弟へ向かう行き過ぎた恋情を持て余していた。利用していると言われれば反論はできない。だが私はお互い様だろうと思っている。エメットは私以外に本音をぶつけられる相手はいない、そして私の欲求はエメットでなければ満たされない。
 なんとまぁ貧しい関係だろうか。
 嗚咽は愛しく鼓膜に響くばかり。笑えない唇でまた抑えきれずにキスをした。


こんばんは。
中学時のあだ名が「ショッカー」でした、鮒目です。

今宵、渋谷にある非公式のワンピースバーに行ってきました。
あ、一人じゃないですよ。ワンピ好きで犬仲間のご近所さん三名とご一緒させてもらいました。



公式にも劣らぬ展示物。規模はささやかながらとても楽しい内装になっている。
私はルフィとローのフィギュアや、三船長が並んだミニ胸像フィギュア、水槽にて泳ぐ金魚の側で笑うしらほし姫、かっこいいイナズマネキンなどを迅速に写真におさめ、置いてあったキャラ帽子からすかさずローのを取ってかぶり連れの方に撮影してもらいました。来て早々慌ただしい。

店員さんはワンピキャラのコスプレで接客応対してくれます。
今回いたのはサンジ・ハンコック・クザンでした。ハンコックさん腰と脚の露出が素敵でしたぶへぇ。

始めにカクテルを一杯注文するのですが、なんと好きなキャラクターを言えばそれに合わせたカクテルを作ってくれるという。王道の麦わら組からドマイナーな脇キャラまで全てOK。
ボニー、チョッパー、ボンちゃんと三名が注文され、気づけば私はトラファルガー・ローで!と言っていました。

(あれ、私こんなにローさん好きだったっけ?)(勘違いするな、ロールと答えたいのをこらえてローさんと言っただけである。)

そしてやってきたのは、
ボニーちゃんのはピンクと白のグラデーションが可愛らしいとても甘い桃のカクテル、
チョッパーのは桜色の甘いカクテル、
ボンちゃんのは砂糖を入れたミルクのような甘くておいしい白カクテル、
そしてローさんのは黒い炭酸のカクテルでした。ラムコーラ…らしい。
どれもみんなで一口ずつ回し飲み。

で、ボンちゃんカクテルを頼んだ方が甘ったるいお酒が苦手だったようなのでローカクテルと交換し、私はすいすいっとボンちゃんカクテルを飲み干しました。

カクテルを干した後はソーダ割り梅酒を飲みつつ、運ばれてくる料理(なかなか悪くないお味でした)を食べつ、楽しく談笑していました。……が、その中でじわじわと酷く酔いが回った私は人生初の飲酒による嘔吐を経験することになりました。空きっ腹にカクテル、回し飲みのちゃんぽんなど、悪条件が重なったことが原因とみられました。聞けばカクテル、アルコール度数がなかなか高かったらしく(おそらく8%と聞いた)、氷結ストロング(6%)を飲んで倒れたことがある身には少々荷が重かったようです。8%をジュース感覚で飲んだ上に腹一杯ご飯いったらそりゃ吐くわ。蓋をした便座の上で寝てしまうのも無理ないわ。お蔭で二回女子トイレを占拠、籠城ですよ。連れの方々には見苦しいところをお見せしてしまいました。あぁ失敗。

冷水を飲み飲みなんとか体勢を立て直したら、メインイベント・メリー号のバースデーケーキのご登場です。

実は三名の内一名のマミーさん(仮名)が翌日誕生日でして。私含む残り三名で数ヶ月も前からここでのサプライズ誕生日会の計画を立てていたのでした。

デザートをこよなく愛する私としてはぜひぜひがっつり賞味したいところですが、まだ酔いの尾が引いているところがあったので、慎重に慎重に、また吐くことがないように少しずつ時間をかけて頂きました。とてもおいしかったです。もっと気兼ねなくぺろっと食べたかった。

今度は誰か友達と行きたいですね。或いはオフ会とかでしょうか。……いや、それはやめた方がいいな。
純粋なパンピーファンのすぐ隣で、
「救えない凶愛者ローと被害者ルフィの自縄自縛目隠しプレイ&人体切断トルソープレイ豪華二本立てAVはいつ発売されるの?」
「そんなことより彼らの愛の巣を作ってあげようぜ誰もいない滅びた国城の地下室とかさー廃墟の手術室とかさー」
……なんて話ができるわけがない。



誰か私のとめどない欲望に杭を打ってください。

(無題)




一も二もなく駆けずり回る日々に血混じりの汗滴らせかき分ける道の足下虫の死骸で築いた土を粛々歩んで続けや続け葬列の火。片や人体の解体屋、片やゴムの化身、踏みしめても固くならない泥濘に足を取られて恋に落ち、一も二もなく転がり落ちて砂利を噛む。化身の切れた唇に玉の血が浮かぶや解体屋はそれを飲む。解体屋がスクラップにした血肉と骨を化身は齧る。血染めの大地と草いきれ、荊をかき分けてつくる獣道、ヒトの死骸で築いた山を黙々漁って生きて謳えよ殺人鬼。
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