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愛しさを語り合いたいだけなの

※陳腐な内容だけど色々ご注意(・Д・アラマァ






「ねえ、何処にいるの!何も見えない、真っ暗よ!」
「大丈夫、目の前にいるよ。それに此処は明るいから僕が見えるはずだ」
「そんなの嘘よ、揶揄わないで!辺り一面真っ暗で貴方の姿が見えないわ!」
「嘘じゃないよ、揶揄ってなんかない。僕は君の目の前にいる。辺りは光で満ちていて、視界を狭めるものは無い」
「…それならどうして貴方の姿が見えないの?さっきまで私の瞳に姿を映していたはずなのに、気付いたら、何も、誰も…」
「見えないなら、手を伸ばしてごらん」
「どうして?」
「僕は君の目の前にいるんだよ。手を伸ばせば、僕に触れられるだろう?」
「ああ、そうね!見えなくたって貴方は其処にいるんですもの!何も心配することなかったわ!」
「さあ、早く」
「ええ、分かったわ!」



「ああ、ようやく貴方を感じました。これは腕?」
「そう、君は今僕の腕に触れている」
「とっても硬い腕、随分鍛えてらっしゃるのね。あら、なんだか所々パサパサしてますけど、どうしたんですか?瘡蓋かしら」
「いや、違うよ。僕は常日頃鍛えてなんかなかったし、怪我だってしてなかったから瘡蓋でもない。…ねえ、君の周りはまだ真っ暗なのかい?」
「ええ、まだ真っ暗なの!光なんか一筋だって見えやしないわ!」
「…そうか、まだ真っ暗なんだね。それなら僕が君を、白日の下へ連れ戻してあげよう」
「まあ本当!?貴方ってそんなことができるのね!」
「嬉しいかい?」
「ええ、とっても嬉し…嬉しい、わ?」
「どうしたの、嬉しくないのかい?」
「そんなはずないわ!嬉しいに決まって…決まっ、て、るんだから」
「…そうか。それじゃあ目を開いてごらん」
「目を?どうして?私きちんと見てるわ。でも周りが真っ暗だから誰も何も見えなくて…」
「いいや、君は見ていない。瞼を伏せているのが僕にはよく見えるんだ、間違いなんかじゃない」
「でも…」
「僕に会いたくないかい?」
「会いたい!会いたくて会いたくて堪らないの!」
「ほら、じゃあ目を開けて」
「ええ!」




『きちんと僕を見ておくれ』










「………ああ、とっても明るい!今までの真っ暗がまるで嘘みたい!貴方の言った通り、視界を遮るものは何も無いわ。素敵、これで貴方を見つめることができ、る、わ…」

『ようやくちゃんと見てくれたんだね』

「ひっ…!!!な、何これ!!!」

『何って、さっきまで君とお話してた僕だよ』

「ちが…、違うっ!!!だって彼は、そんなに、ぐちゃぐちゃなんかじゃ…!」

『彼は、何だい?』




「彼は、生きていた、はずよ」




『そう、"彼"は生きていた。君が一晩の眠りに就く前は…』

「眠り…違う、私は彼とお話を…」

『そうだね、楽しくお話していた。今思えば、夜通しするのも悪くはなかった…』

「…そうよ。夜通し二人でお話をするの。それが良かった、そうしたかったわ。他愛のない話を、二人で、いつまでも…」

『それはさぞかし楽しいだろうね。…でもね、いつまでもという訳にはいかないんだよ…』

「そんなのちゃんと分かってた!!!だから私は…」



『だから私は、彼が眠らなくてもいいようにしたの!』

「だってそうしないと語り明かしは叶わないじゃない!」

『私はいつまでもいつまでも、いつまでも彼とお話していたかったの!』

「彼だってきっと沢山話したいことがあって、私のお話をずっとずっと、ずっと聴いていたかったに決まってるわ!」

『なのに彼は3日目の晩に言った!』




「お願いだから、少し休もう…って」




「そんなの駄目よ。これから先、ずっと、永遠に、私と語り合っていこうって約束したんだから…」




「ねえ、何か話してよ」




「ねえ、どうして何も言ってくれないの」




「ねえ、お願いだから、私の目を見てよ」




「黒、黒、黒」




「ほら、やっぱり周りは真っ暗じゃない」




*********

一人芝居を続けるのには限界があります。

裏テーマは『死後硬直』(笑)
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