話題:旅行




@からの続きです。





2日目、3日目も、
1日目と似たような感じでした。




「本持ってるんだから調べてよ!」
「何のために、その本持って来たのよ!?」
「ちゃんと調べてくれれば、私がいちいち全部調べなくても済むでしょ!?」



道に迷うたびに、
そう言って彼女はキレました。


何度も、キレました。



私が何度か、
旅行前に調べておいたルートを言っても、
彼女は自分がスマホで調べたルートを使ったので、
私はだんだん何も言わなくなりました。


私が言っても、結局彼女はスマホで調べるのに、
迷った時だけ、私を責めるのでした。




2日目の後半から、
彼女はずっと、
私の数十メートル先を、
一人で歩いていました。



私の足には、
マメが出来ていて、
水ぶくれも出来ていて、
もう、立っているのも辛い状態で、
早く歩くことは出来ませんでした。



彼女は常に早足で、
周りを見向きもせずに、
ほとんど後ろを歩く私を振り返ることもなく、
目的地に向かって歩いて行きました。

並んで歩くこともなく、
勿論、会話もなく。

私は彼女の後姿を追い続けました。



これは、何の苦行だろう?


何の、修行だったろう??


そう思いながら、
ただ、ただ、機械的に、
彼女の後ろを黙って歩きました。














「北海道の友達と従妹にお土産買いたいんだ」
「明日は、お土産買いたいな」
「明日こそは、お土産買わないと・・・」



私はホテルに戻るたび、
食事で彼女と向かいあった時、
何度か、そう言いました。



2日目も、3日目も、
お土産屋さんの前を通りました。

何度も、通りました。


しかし彼女は、
一度も足を止めることもなく、
楽しそうに談笑しながら、
ゆっくりと歩く他の観光客を、
早足でぐんぐん追い抜きながら、
歩き続けたのでした。



「お土産とか、見ないの?」



3日目の午後になり、
たまらず私が言うと、


「京都なんて近いからいつでも来れるし」
「もう何度も来てるし」


彼女は、そう言ったのでした。











私の中で、何かが、音をたてました。








足は一歩踏み出すたびに激痛で、
暑さで眩暈が起こるのも我慢しながら、
昼食も取らずに歩き続けました。
平気な顔でどんどん先に進む、
そんな彼女に黙って従っていたのは、
いつか、ゆっくり、
土産屋さんに入る時間を取ってくれると、

あんなに言い続けたんだから、
私のために、どこかに寄ってくれると、
そう思っていたからだったのに。







「もう、帰りたい」







彼女と目も合わせずに、
私は呟きました。


ずっと無理して浮かべていた笑顔が、
剥がれた瞬間でした。









京都駅に着くまで、
ほとんど会話はしませんでした。
でも、この3日間ずっと、
会話らしい会話なんてなかったので、
全然平気でした。



むしろ。


話したくありませんでした。




足はむくんで、
靴の中で悲鳴を上げていました。


京都で、寺や神社を周るのだから、
沢山歩くだろうな、疲れるだろうな、とは、
予想出来ることでした。
勿論、覚悟していました。

たとえ、足が痛くなっても、
何でもない談笑をしながら、
疲れたらお店で美味しい物でも食べて、
ゆっくり景色を見ながら歩いて、
また、休憩したりして、
色んな土産屋さんを覗いたりして、


そんな風に、楽しく過ごせたら、


他の観光客のように、
楽しく過ごせたなら、


きっと、
足の痛みなんて忘れてしまうだろうと、


そう、思っていました。











新幹線の切符を買い、
ホームに向かう途中に、
彼女が、信じられない言葉を、言いました。






「私、コンコースでお土産買ってくるわ」
「先にホーム行ってて」






あれほど、
私はお土産が買いたいと、
そう伝えていたのに。

自分は、何度も京都に来ているから、
お土産なんて必要ないみたいな、
そんな言い方していたのに。






ホームのベンチで、
私は彼女を30分待ちました。



呆れたのと、怒りとで、
何度も涙が出そうになりました。


何故、私は、こんなにも、
彼女に蔑ろにされなければならなかったのか?



私が、何をしたというのか?





私は、ただ、
この旅行を、楽しみたかっただけなのに。









名古屋駅で彼女と別れ、
私は、友達と従妹へのお土産を、
名古屋で買いました。














帰りのバスに揺られていると、
彼女からメールが来ました。


「今回は色々ありがとー。
2日間ちゃんと眠れてた?
何かと短気で申し訳なかったよ。
帰り道、気を付けてね」



私は、何の感情も湧かないまま、
返信しました。


「こちらこそ、色々ありがとね(*^^*)
睡眠不足より、足が痛いよ。
色々任せっぱなしで、申し訳なかったよ。
ゆっくり、休んでね」



「足痛いんだ?
次はもっと歩きやすい靴にしないとだねー」



「そうだね(*^^*)」







次?








次???????









次なんて、ねーよ←








この期に及んで、
また私と旅行に行く気か?




私が、行くとでも、思っているのか????





二度と、誘わないよ。









そんな感じで、
私の、最悪な旅は、終わったのでした。








本当に、旅行は、

「行先よりも行く相手」

これが、一番大事だと、
思い知らされた、3日間でした。