物心ついたときから特に何かを感じることはなくて。何をしても怒られない何をしても咎められない。それは浄華家─神社に生まれた珍しく“力”を持って生まれたため。父にも母にも甘やかされ、育って。
しかし今になって、それはいけないのかもしれないと少しだけ思うようになった。小さな頃から少し力を発すれば生きていたモノは血を流して肉塊に変わる。力の制御なんて知らない、むしろそれが悪いことだと理解出来てきたのは最近だ。理解したからと言ってもこの力を制御出来るわけじゃないし、暴走してしまうのも仕方ないと思っていた。
─…怒る方が悪い。
それだけ。怒られたりしない限り暴走なんてしない。なら怒る方が悪い。
なのに遠い親戚の寺の娘はそれを理解しながらも怒る。馬鹿だな、と思った。なのに、何度も何度も同じことを繰り返して、入退院を繰り返す。そんな彼女を見ていると、少しの罪悪感が胸に宿った。だけどやっぱり怒られるの嫌いだから。ただ彼女と仲良くなりたいだけだったのに。それを多分承知なんだ、だけどこのままじゃいけないと思うから何度も怒る。私はそれに応えない。

「瑠璃、怒る人嫌ぁい…。瑠璃を怒る人なんて、みぃんな死んじゃえばいいんだよ」
「またですか浄華さん。あなたは一体いつまでそんな子供のままでいるんですか」
「子供とか大人とか、そんなのに縛られて生きてくのは嫌だもん」

彼女はまた注意を促す。腕からの出血をまるで気にせずに。

「美紗ちゃんはどうして普通でいようとするの?どうして力を制御するの?瑠璃、わかぁんなぁい」
「…さぁ。気休めですよ」
「あれぇ?自分が異常なのは認めるんだぁ?変な美紗ちゃん」

自分達は“普通”と言う理には縛られない、つまり普通とはかけ離れている。なのにそれに近づこうとする。無駄なのに、無意味なのに。

「いつまでも甘ったれないで下さいよ。ワガママ娘が」

そうやって普通ぶって、怒って…気に食わない。私と変わらないくせに。私と同じくせに。なんで怒るの、なんで。

「瑠璃の邪魔を…しないでっ!」
「、っあ…。こ、の」

あぁ足折れたかな?馬鹿みたい、地面に這いつくばって。みっともない。

「バイバイ、」
「誰がバイバイなんかするか!」
「えっ」

ズシリ、と鳩尾に圧迫感。額に何かが触れた感覚。
意識が遠ざかる中、力が額の何か─札に吸い取られるのを感じた。そして、彼女の名前を叫ぶ聞き覚えのある声。


─…瑠璃が、悪いみたいに、言わないで…
(美紗ちゃんだって、ただの異常者のくせに)
















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意味不←


逆月.