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君に送る言葉を僕は知らない。
君に贈る言葉を僕は持たない。
君は、もう。


夏盛り、僕らは出会った。
鏡に映った僕。
鏡に映った君。
それが君で、それが僕。
君が僕で、僕が君。

それは、あっけなく終わりを告げた。

『人間なんて呆気ないものだよ』

君は遠くの空を見上げて、小さく呟いた。
そうか、君も、呆気ないものだったんだ。
所詮僕らは、人間なんだ。

青い空を見る度に
飛行機雲を見る度に
君が、隣に居た夏を思い出す。

最期に君が残した言葉は、どんな意味だったのだろうか。
僕には、まだ分からない。
分からないまま。
答えは、一生でないまま。
だって、答えは、君が持っていってしまったから。

僕の鏡はもう映らないけど
君の鏡はもうないけれど
悲しくないことは、ないけれど
ただ、今度は僕から言わせて欲しい。

出会ってくれて、ありがとう。
おやすみなさい。

いつかまた、出会うその時まで。
僕が、呆気なく終わる、その時まで。
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