2008年10月3日 08:18
六は23題《7.勢いまかせ》<伊→留←鉢> (キサキ)
こちらのサイト様から素敵なお題をお借りしました。
登場人物:六は+鉢屋+不破
ただ鉢屋に「たまには勢いまかせも必要ですよ」って留さんに言ってもらいたかっただけです。
だけなんですが、脱線、脱線、脱線に次ぐ脱線で、全くお題に添えていないお話に…。あれ?
全てフリーダム☆鉢屋の所為です(いやお前の所為だろ)
鉢屋→留←伊作+不破な感じ。
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7.勢いまかせ
「食満先輩、本日はよろしくお願い致します」
「ちょっと待て。何故お前がここにいるんだ」
ぺこりと礼儀正しく頭を下げて、『不破雷蔵』は人畜無害そうな笑みを浮かべた。
確かに、今自分の目の前にいる人物が正真正銘『不破雷蔵』本人であれば、人畜無害に相違ないだろう。
本人であれば、だ。
「俺の記憶が確かなら、ここに来るのは不破のはずなんだが?」
何でお前がいるんだ鉢屋。溜め息混じりにそう言うと、鉢屋三郎は何故か嬉しそうに笑った。
「さすがは食満先輩。よくぞ見破りましたね」
「世辞はいいから、とりあえず質問に答えてくれないか」
「世辞じゃありませんって。先輩くらいですよ?私たちを一目で見分けられる人物なんて」
他の先輩相手ならこうも簡単に見破られはしない。不敵に笑ってそう続ける鉢屋に、お前最上級生を甘く見すぎ、とその頭を軽く小突く。
「お前の術は確かに凄い。だが、俺たちだってそう簡単には騙されてやらないぞ?」
「それでも。一目で見分けられる人物なんて、きっと先輩以外にはいませんよ」
だからこそ、貴方に興味があるんです。どこか挑発的な笑みを浮かべて、鉢屋が正面から自分を見据えてくる。
ほら、そこが駄目なんだ。言ってやると、鉢屋ははい?と首を傾げた。
「お前は自分の術に対して絶対の自信があるだろう?それが内面から滲み出ちまってる。そういうのを抑えられない内は駄目」
「駄目、ですか。これでも抑えてるつもりなんですが」
「どこが。不破を演じるならもっと謙虚にしてなきゃ駄目だろ」
「あんまり駄目駄目言わないで下さいよ」
俺、こう見えても結構繊細なんですから。そう言いながら胸に手を当てる鉢屋の言葉を、一体何人の生徒が信用するというのか。俺に駄目と言われたくらいでへこたれるような性格じゃないくせに。
「……で、話を戻すぞ。お前が本当に組む相手は誰だ?」
今現在、五年生と六年生は合同授業中である。五年生は六年生と、六年生は五年生と二人一組で組むことになっている。組になって、別の組が所持する札を奪い合うのだ。札を奪われた組はそこで失格、授業終了時間まで札を奪われなければ及第点、というわけである。
本来自分と組むはずであった不破の代わりに鉢屋がここにいる、ということは、大方二人は入れ替わったのだろう。
「私と組む相手は善法寺伊作先輩ですよ」
鉢屋は悪怯れもせずにさらりと言ってのけた。
なら、伊作のところには鉢屋の代わりに不破が行っているわけか。全く、騙し切れるわけがなかろうに。
「いいか?仮にお前が俺を騙し切ったとして、不破の方はどうだと思う?無理だろうが」
不破は鉢屋とは違う。別段変装術に長けているわけではないのだ。最上級生の目を誤魔化し切れるはずがない。
しかし、鉢屋は心配はいりません、と相変わらず余裕の笑みを浮かべる。
「それは承知の上ですから。雷蔵にはバレたら素直に理由を話していいと言ってあります」
「理由?」
俺が首を傾げるのと、背後から煙玉が投げ入れられたのとは、ほぼ同時だった。
どこかの組に見つかったらしい。まぁ、こんな場所で呑気に話などしていれば見つかりもするだろうが。
ボウン!と煙が吹き出して、俺と鉢屋の視界を覆う。
舌打ちをしながら煙りの及ばない木の上へと飛び移る。と、待ってましたと言わんが如く手裏剣が投げ込まれた。完全に狙われてるなと考えつつ、別の木へ飛び移ることでそれを避ける。
「鉢屋、無事か」
「勿論。面白くなってきましたね」
「俺としては誰にも当たらずに終了時間まで逃げ切るのが理想だったんだがな」
「えー。先輩、それつまらないですよ」
「一番安全で確実だろう?」
「たまには勢いまかせにぶつかるのも必要だと思います」
「じゃぁお前には冷静さと慎重さが必要だ、な!」
最後の言葉を口にするのと同時に、飛んできた手裏剣を得意の鉄双節棍で弾き飛ばす。それから、漸く煙の薄れてきた地面へと着地した。
「反撃は?」
まさかここまでされて逃げる、なんて言いませんよね?そう問われて、思わず溜め息が零れる。横に待機している鉢屋は既に臨戦態勢に入ろうとしていた。
あぁ、予定が滅茶苦茶だ。
「……まぁ、お前と組んだ時点で予定も何もないか」
「予定なんて狂う為にあるんですよ、先輩。世の中その場の勢いです」
「そんな世の中は嫌だな」
再び手裏剣が放たれた。その軌道は鉢屋の方を狙っている。
六年と五年で五年の方を狙いに来るのは当然の選択、といったところか。姿を現わさないところを見ると、相手は文次郎や小平太ではなさそうだ。やつらならば、遠距離からちまちま攻撃するよりは手っ取り早く接近戦に持ち込もうとするはずである。
さて、誰だ?
鉢屋と分断されないよう、手裏剣を避けながら走る。
と、違和感を覚えた。
「これは…」
まるで、どこかに誘導しようとしているような。
どこだ。どこに……?
――――風下!
「伊作か…!」
風下に誘導して風上から何か薬を撒く気だ。風下に追いやられると不味い!
伊作がこんなに積極的に誰かを潰しに来るなど珍しいことだ。何か恨まれるようなことでもしただろうか、と記憶の糸を手繰っていると、俺の呟きを聞いた鉢屋が善法寺先輩ですか?と尋ねてくる。
「あちゃー、やはり随分お怒りのようですね」
「ちょっと待て。やはりって何だ」
「あぁ、それは」
鉢屋が俺へ耳打ちしようと顔を近付けた瞬間、無数の手裏剣が物凄いスピードで投げ込まれた。またもや、鉢屋だけを狙って。
手裏剣の飛んできた方を見やると、木の上には善法寺伊作と、少し後ろに不破雷蔵の姿。伊作の両手には怪しげな薬物たちが握られている。
「鉢屋三郎っ!留さんからはーなーれーろーっ!!」
「ぜ、善法寺先輩落ち着いて下さい!」
「やぁ雷蔵!元気か?」
「……おい鉢屋、お前伊作に何言った?」
「言ったのは雷蔵ですが」
「挙げ足は取らなくていい!」
「いえ、ただ雷蔵に『もしバレたら、食満先輩と二人きりになりたいと三郎が言うので入れ替わりました』と言えと」
いやー先輩愛されてますね。そう言ってこの状況でもまだ笑う鉢屋を、正座させて小一時間ほど説教してやりたくなる。
はっきり言って、伊作の薬物攻撃はえげつなくて怖い。
「お前な…冗談言うにしてももっとマシな冗談にしろよ」
「冗談なんかじゃありませんよ。言ったでしょう?貴方に興味がある、と」
「鉢屋三郎くん…とりあえずその口から縫い合わせてあげようか」
じゃぁまずは麻酔から。にこやかな笑みを湛えながら、伊作は手に持っていたものの中から粉状の薬を選ぶ。更に逆の手には糸と針。
え、まさか本気ですか?
「やだなぁ善法寺先輩、邪魔しないで頂けますか?」
「邪魔なのは君の方だよ。それ以上僕の留に近づかないでもらえるかな?」
いつからお前の留になったんだ。そんな俺のツッコミは華麗に無視して、二人はそのまま本気バトルへと突入してしまった。
「………不破」
「………はい」
「あいつら放っておいて授業終了時間まで身を潜めるか」
「そうですね。それが安全で確実ですしね」
元々俺と不破、伊作と鉢屋の組だったんだし。札は六年の俺と伊作が持っているから、これで正しい組み合わせ、問題はない。
争う二人を無視して、俺と不破は森の奥へと消えていったのだった。
鉢屋のあれは、勢いまかせではなくただ後先を考えていないだけだと思う。
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留さんは鉢屋と雷蔵を一目で見分けられるといいよね。
伊作は風下に誘導して薬攻撃が常套句だと格好良いよね。
留さんは後輩と一緒だと慎重策に出るといいよね。
でも多分挑発されたら闘志に火が点きそう。
そんなmy設定。
そしてやっぱりお題には添えていないのでしたorz
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