2008年11月13日 17:22
六は23題《8.背中合わせ》<伊留> (キサキ)
こちらのサイト様から素敵なお題をお借りしました。
登場キャラ:留三郎+伊作。
伊作→←留三郎な感じです。
忍務中に留さんが一人で先に敵へ突っ込んじゃったので、置いてきぼりにされた伊作がちょっとお怒りのご様子。
そんな感じの前提で、どーぞ↓
━*━*━*━*━*━*━*
8.背中合わせ
「君は、僕には背中を預けてはくれないんだね」
微かに刺の含んだ物言いに、留三郎は怪訝そうに相手の顔を見た。
場所は忍術学園の医務室。独特の薬品の匂いに混じって、血の臭いが僅かに漂う。
深夜というこの時間、そこにいるのは留三郎と伊作の二人だけだった。
「でも、文次郎には背中を預けられるんだ」
留三郎の視線を意図的に無視して、伊作は彼の腕の傷へ包帯を巻いていく。
くるくると。
くるくると。
留三郎は何も言わない。いや、言えないのか。
伊作の言った言葉は、確かに事実であるのだから。
ふう、と伊作が溜め息を吐く。
「そりゃぁ、実力的に見れば僕が君に劣るのは認めるよ。そして、君の実力と釣り合うのが文次郎ぐらいだっていうのも」
学年が上がるに連れて、何時の間にか開いてしまっていた二人の実力差。あぁこれが生まれもっての才なのか、と感じると同時に、伊作はこれ以上差が開かないようにと必死にその背中に食らい付いてきたはずだったのに。
差は縮まらない。一向に。
伊作があんなにも必死に求めていた場所に、違う誰かがいる。
「でも、僕にだって君の背中を守るくらいの力はある」
「…伊作」
「例え君より劣っていようとも。君の背中なら何があったって僕は守るよ」
「伊作、俺は」
「絶対、守るから」
強い意志の宿る双眸が留三郎へと向けられる。暫し見つめ合った後、先に視線を外したのは留三郎の方だった。
外された視線は床に落ちる。
「俺は。それでお前が傷を負うのは嫌なんだよ」
視線とともに床へ落ちた留三郎の顔が自嘲気味な笑みを形作る。
あぁ、違う―――伊作は、己の考えが間違っていたことに気が付いた。
彼が伊作に背中を預けてくれないのは、自分が弱いからじゃない。背中を任せられないほどに、弱いからではないのだ。
―――同じ、だ。
だからこそ、留三郎のその言い分に伊作は怒りを覚えた。彼は、その想いが自分だけのものだとでも思っているのだろうか。
「僕だって君が傷を負うのは嫌だ…っ!」
感情露に叫ぶ伊作の声は、二人きりの医務室によく響いた。そして、一度それを吐き出してしまえば、後から後から押し寄せる感情の波を抑えることは出来ない。
「それなのに君はいつだって敵に向かって飛び出す!こっちの気持ちを考えもしないで!君が傷を負うたびに僕がどんな気持ちになるか考えたことある!?ないだろう!?」
―――同じだった。伊作も、留三郎も。
伊作を置いて真っ先に敵に飛び込む留三郎も。その留三郎の背中を守りたい伊作も。
その気持ちの起源は同じはずだった。
そして、その強さも。
「…伊作、俺は自分の行動を改める気はないから」
「っ留三郎!」
「俺が戦ってお前が手当てする。適材適所、だろ?」
「僕が君の背中を守れば君への負担が減る。僕が手当てをしなきゃいけない必要性はなくなる」
「それで万一お前が大きな怪我でもしたら、一体誰がそれを手当てするんだ?」
「君の背中を守るのに万が一なんてないよ」
「それは絶対じゃないな」
「絶対がないから君を守りたいんだ」
同じ想いで。
同じ強さで。
それらが真っ向から対立した場合、どこまで行ってもそれらは交わることはないのだろう。
譲歩はしない。
結局は、彼らの想いは平行線でしかあり得ないのだ。
「俺だってそうだよ、伊作」
『同じ』であるはずなのに。
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同じなのに擦れ違い気味な二人、みたいな。
どうも自分が伊作と留でシリアスを書こうとすると、高確率で擦れ違いが発生しちゃう模様です。
んで、結局お互い擦れ違ったまま。
どうも書きたいことが上手く書けんとです(´Α`)
コメント(
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